導入 6
眩い光がチカチカと、只々、派手なエフェクトが女神とハンサムマンの周りで飛び交っている。
中には
「めでたい」
「ワタシエライ」
などと日本語がネオンサインの様に光り輝いて出現し、地面に落ちる頃にはパッとその姿を消していた。
原理なんて物はもうこの際どうでもいい事なんだが、置いてけぼりにされている他の人間に対しては何のフォローも無いままなんていうのは、、女神としての質を疑う。
どこかの小説に出て来た駄目神の方がよっぽどましだ。
というか、現実と小説では、まあ、事実はナンタラよりもという事なんだろう。
しかし、5分近く、この醜態を見させられているのは、流石に我慢ならなくなってくる。
だが、あんな現象を見せつけられて意見を申し出ようなんて人間は俺を含めて誰もいなかった。
・・・・。
女神がチラリとコチラを見る。
「(≧∀≦)ノノ」
そんなネオンサインが現れると、キンキンキンという踏切待ちの時の音が耳鳴りのように聞こえる、咄嗟の事に片耳を押さえながら狼狽えていると、目の前の地面がボコボコっと泡立ち、硬そうな金属で出来た何かが迫り上がってきた。
「うおおっ
は・・・・・・?
門?」
見た目、門だ、中心に線が入り、観音開きになりそうな。
その門が27つ、ここにいるハンサムマン以外の人間全員の前に出現した。
「うふん、ワタシはこの子のサポートで忙しいから、君達は、ワタシの眷属から説明を受けてねーん。
じゃあ、よろ、皆!」
そう言うと、気持ちバックハグを強めにされたのか、ハンサムマンがパンパンとタップする様な仕草をしていた。
こちらはこちらでゴゴっと重そうな門がそれぞれの目の前で開く。
中から現れたのは、これまたキレイな金髪の女性だった。
衣装はあの駄女神よりは質素に見えるが、白一色で統一されたスラッとしたシルエットは美しく、女性の美しさをより際立たせていた。
それが27人?
全く同じ存在がそれぞれの人間の前に出現した。
その光景は圧巻の一言だった。
そして女性の口が同時に開き語り始めた。
「女神様のご命令により参上いたしました。
私、エルシルと申します。
女神様があれの為、私が代わりにご説明申し上げます。
皆様には、多大なご迷惑をおかけして申し訳ありません」
言葉の中に時折見せるお辞儀等の仕草が美しく目が奪われる。
「さて地球、日本でお亡くなりにになった皆様の魂は、今女神様の召喚の儀によりここに出現なさいました。」
地球・・・・?
日本・・・?
まぁ、死んだのはいいとして、規模がデカい話だ、他の星って事は宇宙人?
それは無いだろうが、、日本以外の国からも召喚は行われていたって事になるよな今の言葉。
「皆様にはこれから、災厄の魔王が復活した世界、ルーナリアに転生、もしくは転移して頂きます。
地球で過ごされた記憶は消去される方、そのまま記憶を保持したままルーナリアに往く方様々ではありますが、ランダム性があった方が面白いじゃんと1286回目に思い立ってしまった女神様の案になりますので、ご了承下さい。」
俺の場合はいっそのことただの娘で暮らしていた方がよっぽど幸せなんだろうから、記憶なんて無い方がいいだろう。
オワコンの人生の記憶を保持したまま、娘なんて普通な人生歩みたく無いというのが本音だ。
俺の異世界ライフ、娘なんて言う職業なら平凡で終わりたい。
同じ様な考えがグルグルと頭を回転する。
ああ、そうだ。
・・・・・嫉妬だ。
唯の嫉妬、俺は唯の娘で、あのハンサムマンは女神がつきっきりの勇者様。
同じ異世界召喚の場で、こうも差がつくだなんて・・・。
今回クソガチャにあったったのは俺。
地球でのカードゲームの引も悪い、高額のレアカードなんて今まで一度も当たった事ない。
欲が深すぎて手が届かないんじゃないと何度嫁に言われた事か。
携帯ゲームだって、確定ガチャを課金しなきゃ、最高レア何て殆どでやしなかった。
貴重な休みも何もしないで一日中リセマラしてたっけ?
そして、ここ一番、2度目の人生の引きも。
娘か、、、しかも性別まで変わるだなんて、てか、この召喚に俺の欲望は関係無いよな。
ここで先天的な運の無さを証明されてもさ。
「では、これから皆様に個別にご説明差し上げます。
それが終了しましたら、皆様にはルーナリアに旅立っていただきますので、心の準備もして頂けると幸いです。」
「ユキムラサトル様」
一瞬の沈黙の後、金髪の女性が俺を見つめながら口を開いた。