導入 5
空気が変わった。
文字通り、空気がだ。
この場にいる人間全員が自分のステータスに夢中になっていた。
にも関わらず、その些細な変化は全員の目を女神のいるステージへ向かわせた。
グオン
地鳴り?
空気が揺れた。
あの震災を体験した人間なら誰もが背筋が凍らせる事だろう。
さらに異様な空気が俺の恐怖心を煽った。
ゴゴゴ
・・・・来た。
俺は目を瞑り身体を低くする。
バランスをとるように、両腕を野球の審判のセーフのポーズをとるようにすると、揺れに身を任せるようにブラブラとする。
たらりと額から滑った汗が流れ落ちる。
地面から膨大な何かが溢れ上がってくる様な揺れ。
初めは弱く、そして油断を誘った次の瞬間、強烈な揺れが28人を襲う。
叫ぶ間も、泣く暇もない、グワンという一回の揺れに内臓が持っていかれる様な感覚を覚えた。
俺以外の27人も皆、姿勢を低くして揺れに耐えようとしている。
中には四つん這いになる者もいた。
当然だ、こんな揺れ、あの時にすら感じなかった。
唯一の救いはこの空間に物が無い事だろうか?
しかし、この揺れの中、掴まる物が欲しいと思うのは俺だけなのだろうか?
気付けば、俺の鼻、口からは耐え切れない恐怖が、鼻水や涎となってダダ漏れていた。
バン!!
破裂音。
ピタリと揺れが収まる。
次から次へと何なんだ!!
感情が追いつきゃしないじゃないか!!!
土下座の様な体勢になっていた俺は亀の様に首を持ち上げステージを見る。
女神が寝そべっていたソファが破裂し、綿が飛び散り舞台上を舞っていた。
・・・・女神がいない?
?
ステージが無い。
涅槃図のステージが消えて、、、。
感情が追いつかない・・・・。
「マジじゃん!!!!!
マジじゃん!
マジじゃん!!
!!!マジじゃん
君!!
何なん!!!
本当、勇者じゃん!!!!!!!!!!!」
彼だ、爽やかイケメンの彼の後から肩越しに女神がのしかかって、彼のステータスを覗き込んでいた。
いつの間に?
・・・女神なんだから何でもありか、っていうか、まさかさっきの地震、、、。
俺の予想通りなんであろうが、喜びに打ち震えるって
女神の場合、字面通りになるのか?
傍迷惑過ぎだろ!!
女神と彼の周りに目の眩む様なエフェクトが飛び交っている、少し位自重して欲しいと思う反面、四千回近くクソガチャを引けば、ああもなるだろうなと妙な親近感がわいた。