導入 4
「ステータス、、、おーぷん」
・・・。
「つゥ!」
急に頭にキィーンという鈍い痛みが走る。
俺は咄嗟に出た右手をこめかみの辺りに当てる。
何処かの製薬会社の頭痛薬のコマーシャルに使われそうな絵面だ。
周りを見てみれば、まあまあの人間が俺と同じ様な格好をしている。
?
その光景と俺の視野の間に14型のテレビの大きさのウィンドウが出現していた。
「・・・・うお」
我ながら情けない声が漏れる。
ウィンドウにはそれこそRPGのステータス画面よろしく、文字が羅列していた。
幸村 悟
人間 男
44
調理師
メタボ
HP 0
MP 0
腕力 12
頑強 6
速度 5
賢さ 3
器用 8
運 2
スキル
料理 3
収集 2
忍耐 2
精神攻撃耐性 1
暴走 1
格闘 1
学習 1
→
これって低くないか?
上限が幾つなのか知らんけど、腕力12、、、頑強6、速度5、賢さ3、、運2って。
44だぞ、44年の月日、俺はこんな低い値で生活してきたのか?
まぁ・・・・俺が思う普通に生活できていたんだから、これが日本の中年男性の平均なんだろうけど。
贅沢こそ出来なかったが、結婚もできたんだし、それなりだったはずだ俺の生活は、、、そう思いたい。
スキルか、これは職業とか生活してきた中で、獲得してきた特技みたいな物なんだろうか?
料理3って、低いな、仕事なのに、、はは。
マジで上限を知りたくなってきた。
収集?
ああ、カード収集の事を言ってるのか?
やはり趣味も反映されるんだな、しかし、俺にとっては収集と言うより、投資が正しいのだが、実際、売れるカードを手に入れた事が無いのがスキルの決め手になったんだろうか?
忍耐2、精神攻撃耐性って、、、毎日何かしらのストレスに耐えてるからか?
ここに中間管理職のオッサンとかいたらとんでも無い数値になってるんじゃないか?
俺なんか溜め込まない性格だったからな、低いのは当然と言っちゃ当然か。
暴走、格闘、学習それぞれ1と。
人生の縮図か?
ん?
矢印が点滅してるけど・・ああ、ページを捲れって事か?
んー・・・・念じればいいのか?
俺が念じるとテンプレートはそのまま内容が変化した。
ユーキ・サムラート
ヒューマン 女
12
娘
良好
HP 126
MP 70
腕力 27
頑強 36
速度 25
賢さ 22
器用 43
運 55
スキル
料理 1
接客 1
収集 1
身体強化 1
魔法
生活魔法 1
?
・・・何だ?
見た事の無い女・・・の子のステータス。
28人が黙々と其々のステータスに目を通していると、オッサンもとい女神の声が空間に響いた。
「はぁーい、もう皆んな次のページには進んだカナ〜?
次のページにはあなたがあっちの世界で生まれ変わるか憑依する人間のステータスが書いてあるよ〜
はいここで注目!!
年齢の下に書いてある職業欄!!
そこに『ゆ・う・しゃ』って書いてあるヒト〜?
いたら手を上げて〜」
体勢は涅槃図のままだったが不思議とその声は空間全体に響いた。
・・・・・・おい
おいおいおいおいおいおいおいおいいいお
そんな展開だとはある程度予測は出来ていたけど・・。
俺・・・女の子になるのか!!!
職業欄、娘の俺には勇者だの何だのはもう二の次、俺の頭はその事でもう一杯一杯だった。
その時、一様にざわついた空間の中、高級そうな腕時計が巻かれた手がスッと上がった。