第八話
車内のバックミラーに写る僕の顔は泣き顔だった。
僕をはいつの間にか、涙をボロボロ流して泣いていた。
「…すまない。光希」
ブレイガードの謝罪に耳を貸さず、僕は感情の赴くまま、泣きながら彼を問い詰める。
こんなの、ただの八つ当たりだ…。なのに止まらない…。
「どうして…?どうしてだよお…」
「……」
ブレイガードが無言のまま、車体が変形していく。
僕の体は変形に巻き込まれないよう、ブレイガードの車内から優しく宙に放り出され、ロボットモードになったブレイガードの両手で優しく受け止められた。
ブレイガードの両手の上で、両手を着いて座り込んだまま、僕はブレイガードの顔を見つめる。
ブレイガードもまた、僕の目をじっと見つめながら、口を開いた。
「光希を失いたくなかった。例えどんな形でも君を死なせたくなかったんだ」
「…ブレイガード」
…ブレイガードのその言葉は、嘘偽りのない本音だと感じられた。
だって、僕達は。
ずっと一緒にいたから。
ずっと一緒に戦ってきたから。
ーーだから、信じられる。
…あれは6年前の夏の出来事だった。
宇宙ギャングジャーマーサーの幹部、外道薬師クードとの戦い。
クードは様々な毒や病原菌を作り出し、これまでにいくつもの星に壊滅的な被害を出してきた。
奴は地球人類を滅ぼして地球をジャーマーサーの物にしようと、とんでもない病原菌を作り出したんだ。
それは、一度散布されるとたちまち人間に感染する。
感染した人間は全身の細胞がどんどん崩壊していき、最後には髪の毛一本残らないと言う恐ろしい病原菌。
地球人を全員生かしたまま奴隷にしたい、ジャーマーサーの他の幹部がブレイガード達に情報を流したのが、その病原菌の事を知るきっかけだった。奴らも一枚岩ではないという事だった。
その情報を得た時には、すでに病原菌の培養が始まっていた。放っておけば半日足らずで、地球人が全滅する量に培養されて地球上に散布されてしまう。
そこで人間サイズの宇宙人であるクードの宇宙船に、ブレイガード達がクードを護衛する巨大怪ロボット達の相手をしているすきに僕が侵入して、銀河警察特製の時限爆弾をセットして脱出。奴の病原菌を時限爆弾の超光熱ですべて焼き尽くすという作戦に望んだんだ。
この時、戦闘訓練を積んだ大人達に助けを求める時間はもうなかった。
敵は勇者側の戦力が整わないうちに複数の幹部が出張って、全力で攻めてきたり搦め手を使ってくるなどかなりいやらしい相手でした。