第六話
「男に戻りたい…」
叶わぬ願いを口にしつつ、両手で通学鞄を持って駅まで歩く。
この体になってから、とにかく体力が落ちたと思う。
小学生の頃はあまり気にならなかったけど…。
中学生になったあたりから男の友達と比べ、あまりに低スペックな身体能力に絶望した。
とにかく力は弱いし、すぐ疲れるし、走れば無駄に育った胸が揺れて痛い。おまけに…。
「おい、あの子かわいくね?」
「乳でっか!!ロリ巨乳ってやつ?揉みてえー!!」
知らない男達が僕の事をジロジロいやらしい目で見ながら、そんな事を口にする。
…はっきり言ってうちのお母さんは美人だ。
実年齢は普通におばさんなのにやたら若々しく、一緒に歩いていると姉に見られる事が多かった。
おじいちゃんが言うには子供の頃から、良くアイドルとかのスカウトをされたそうだ。
そして今の僕はそんなお母さんにとてもそっくりだったりする。
生まれた時から生粋の女の子だったら、喜べたんだろうけど。僕に取っては苦痛でしかない。
「ねえ、君ひとり?」
「俺らと一緒に遊ばない?」
「結構です。急いでますので」
嫌な気分でとぼとぼと歩いていると、いかにもな風貌の男達が絡んできたので即効で断る。
これだけ人目のある所でなにかするほど馬鹿じゃないよね?こんなのほっといて早く家に帰りたい。気分が悪い。
「そんなつれない事言わずにさあ」
さっさと通り過ぎようとする僕の腕を男が掴んだ。
「ちょっ!?放してよ!!」
「おっ。中々気が強いじゃん。いいねいいねー」
「嫌だ!!この汚い手を放して!!」
春の陽気で汗ばんでいた男の手の感触が気持ち悪くて、思わずそう口に出してしまう。
「ああっ!?俺の手が汚えってか!!」
「痛い!!」
男が顔を真っ赤にして、僕の腕を力いっぱい握り締め、顔を近付けて凄む。
「ーーッ!!」
腕の痛みと男の怒った顔に思わず悲鳴が出る。
うう…。これじゃ、ホントに女の子みたいだ…。
周囲に視線を向けてもみんな目を逸したり、見て見ぬ振りをするだけで誰も助けてくれない…。
(どうしよう…)
ブレイガードにもらったアイテムを使おうかと考えたけど、相手を気絶させる為のショックガン機能があるブレスを装着してる左腕は男に掴まれていて、他のアイテムは家に置いてきてしまっていた。
主人公は元々母親似でかわいい顔立ちの男の子でした。