表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/60

51 ー致命ー


ーシズクはトントンと爪先で軽く地面を蹴り、前方の相手を観察する。

余裕を感じさせつつも、油断なく構えられた斧。

相手がどのような動きを見せても、正面から叩き潰すと言う意思が感じられる。

対するこちらは素手。リーチの差は絶望的だ。おそらくこちらの拳が届く遥か前に、あの斧は振り抜かれるであろう。

この差をどう覆すのか?…実に簡単な話だ。斧が振り抜かれるよりも速く懐に飛び込み、致命打を与えればいいだけ。

おそらく誰かが聴いていれば一笑に付したであろう。言うは易しというヤツだ。


…だが、シズクにとってそれは、単に自分がやらねばならない事を言語化しただけの話。

斧よりも速く飛び込み、致命打を与える。それを実行する必要があるなら、そうするだけの話だ。


再びトントンと地面を蹴りー直後、地面が砕ける程に強く踏み込む。

普通に歩いて10歩程度掛かるであろう距離をただ一度の踏み込みで殺す。

相手は未だ、先程と同じ体勢で斧を構え、同じ表情で佇んでいる。一瞬のうちに移動したシズクを全く追いきれていないようだ。

一瞬の後、ようやくシズクが消えたことに気付く。

だが、気付いた時には既に、シズクは2度目の踏み込みを済ませている。視界に映ったのは踏み込みの際に舞った砂埃だけであろう。


…彼の懐には既に、シズクが潜り込んでいる。

振り抜かねばならぬはずの斧は、構えた瞬間から全く変わらぬ位置にある。


右脚を杭の如く、地面が砕ける程に打ち込み、大地から伝わる力を余す事なく右腕に送り込む。

振りかぶられた右手のひらは、刹那の溜めの後、霞むほどに速く、強く撃ち出される。


ドボッ…!!


狙った箇所… 即ち腹部。寸分違わぬ位置に、掬い上げるように叩き込まれた掌底。手のひらから感じる重い衝撃は、その一撃が狙い通りの効果を生んだことを知らせる。


分厚い毛皮や皮膚に守られた獣にすらダメージを与えるその一撃は、人間が生身で受けられるものでは到底無い。

内臓を破裂させ、背面にあるはずの背骨すら折り砕く。

まさに確実な致命傷。それを示すかのように、一瞬だけ浮いた彼の身体が地面に叩きつけられる寸前、結界が発動し、エリアの外に転移する。

彼はエリアに残るシズクを呆然と見遣り、次いで傷一つ無い自らの身体を見下ろした後、完全な敗北を悟ったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ