47 ー2対1ー
「…お前もつくづく災難な奴だな」
斧を担ぎ直した男が俺になんとも言えない視線を向けてくる。
「同情してくれんのか?んじゃ、適当に手を抜いてくれると…」
「それは断る」
予想通りといえば予想通りの返答。もう少しくらい悩んでくれてもいいだろ。
「にしても腹は立たないのか?俺がお前の立場だったらブチ切れてるだろうな」
「あいにく無能なもんでね。いい加減慣れてるさ」
なんともないように返すが、その返答が気に入らなかったのかフンと鼻を鳴らす。
「そうかよ。情けねえ奴だ。俺だったら模擬戦なんかしてねーでアイツらに襲いかかるぜ?」
「あー、それに関しては大丈夫。どの道ー」
ドガアアアアン!!!
「「ぎゃああああああ!!!」」
背後から爆発音と、チームメイトの悲痛な声が聞こえた。
魔法構築中の無防備な所に、すでに構築の済んでいた相手の攻撃魔法をまともに受けたのだろう。アレじゃ確実に戦闘不能だろうな。
「…とまあ、こういうことだ。味方を巻き込む心配のない距離に居るなら、俺1人に攻撃魔法を使うより無防備に固まってる2人を狙うだろ?」
肩をすくめながら話すと、男はニヤリと口角を上げた。
「なるほどな。妙に突っ込んでくると思ったら、俺達の攻撃魔法でアイツらを始末するつもりだったってことか?」
「え?アレ?俺なんかやっちゃったか?チャンスだと思ってつい…」
今しがた『爆破』魔法を放った相手の後衛が困惑している。
「いや、別に狙ってやったわけじゃないぞ。俺は単に時間稼いでいただけだからな」
腹黒いと思われても困るので、手を振って否定しておく。
「そうかよ。なんでもいいが、あの2人はもう立てねえだろ?つーことは、お前を倒せば終わりって事だ」
斧をブンと振り、切先を俺に向けてくる。背後では後衛の男が杖を握り直しているのが見えた。
ここからは2人がかりで俺を仕留めにくるだろう。
「俺は別に勝ちたいわけじゃないし、降参ってのは…」
「冗談だろ?ここまできてそんなの認めるわけねえじゃん」
俺の提案はあっさり却下されてしまう。誰も困らないんだからいいじゃねえか。
…ま、適当に逃げ回って、自然な感じで負ければいいか。
俺は動かない左腕を庇うように、右手に持ったナイフを構え直した。




