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41 ー強者たちー

「…化け物?そんな強い人がいるんだねぇ」

どうやら、ユキの興味は俺を戦わせることから学園にいる化け物の方に移ってくれたらしい。

俺も少し興味があるので、何も言わずフェーゴの話に耳を傾ける。

「うむ、先ずは上級生達だ。知っての通りこの高等学園に通うことは義務では無い。学年が上がるにつれ、魔法の才が無いものや学問に興味が無いものは去っていく。必然的に残るのは強者達だ。例えば『天雷の勇者』グリン、『業火の貴人』サマルアグニ様、『金剛』のアダマント様、『千刃の王子』マルクヴァニア殿下…」

フェーゴは強者として知られる上級生の名前を挙げていく。


「ああ、それと忘れてはいけないな。君の姉である『幻想の女王』ウィンタエア… この学園を代表する強者達は、序列が与えられ、『十一騎士』と呼ばれるのだ」

初耳だが、どうやら11人も強い奴がいるらしい。

「へー、お姉ちゃんは何番目なの?」

「…ウィンタエア君が知らないのはどうかと思うが、『幻想の女王』は序列3位だな。

「ぅえ!?めっちゃ強い!」

…どうやらフブキは相当な実力者らしい。強い事は知っていたが、改めて明確な数値で示されると驚きだ。

「うむ、私も序列入りを目指して精進しよう。ちなみに、『十一騎士』は3年以上の学年から選抜されるが、2年の最有力候補はウィンタエア君、キミだぞ」

「へー」

アレ?結構すごい事だと思うが、ユキ的にはあまり興味が無いようだ。


「つまり、シズクより強いかもって人が11人いるって事?じゃあ全員倒せばシズクが最強だね」

倒さないっつーの。

「ああ、いや、うむ…」

…ん?フェーゴの奴、妙に歯切れが悪いな。

「どうした?そんな微妙な顔して」

なんとなく気になり、フェーゴに尋ねる。

「ん?ああ… いや、これはあくまで噂なんだが、この学園を卒業した生徒が、不自然に消える事があるらしい」

…唐突に話が飛んだな。なんの話だ?

「えっと、それがどうしたの?怖い話はやめてね?」

ユキの顔が若干青ざめている。相変わらずその手の話は苦手らしい。

「ああ、すまない。…その卒業生達は皆、それぞれが凄まじい魔導力の持ち主だったり、異常な魔法を使うらしい。それこそ各々が最強と呼ばれる程の強者揃いだった。…それがある日、卒業を目前に消えるのだ」

そこまで強い奴らなら、戦って死んだにしても痕跡すら残らないのはおかしな話だ。でも、それがさっきの話にどう繋がるんだ?

「だが、彼らはまだこの学園に存在し、それぞれが魔法の深淵に挑んでいるという話だ」

なんだそれは?ただの怪談じゃないか。

呆れている俺を置いて、フェーゴの話は続く。

「この学園には、『異界』につながる門があるのは知っているな?」

ああ、王国が管理している『迷宮』の事か?


ー異界。

俗に迷宮と呼ばれるそこは、世界に点在する『門』から訪れる事ができ、どこの門を潜ったとしても同じ異界にたどり着く。

その門は全て王国が管理しており許可なく立ち入る事はできないが、こちらの世界では見たこともない動植物や、利用方法すら不明な品々が存在するため定期的に調査隊が派遣されているらしい。

広さは膨大で未だ全貌は不明。果たしてどれほどの大きさなのか窺い知ることもできず、門から奥に進むにつれ、その危険度は増していくようだ。


「で、その迷宮がなんだって?」

失踪の話と関係あるのか?

「あくまで噂だがな… その消えた卒業生達は、『異界』にて魔導の深淵に至る為の探究を続けているらしい。…そんな人を超越した存在を、畏怖を込めて『深淵の探究者』と呼ぶのだ」

「なるほどー、確かにそんな所で研究してる人たちなら強いかもしれないねぇ。シズク、勝てそう?」

「だから戦わないっつーの。…で、フェーゴはそんな与太話信じるのか?噂だろ?」

まだ付き合いは短いが、なんとなくそんな噂に振り回される奴じゃ無いと思っていたんだが。

「ああ、信じている」

からかい半分に尋ねたが、フェーゴは思いの外真面目に頷いた。

「へぇー、なんか意外」

ユキも俺と同じ考えだったらしく、意外そうな声を上げる。

2人して驚いていると、フェーゴは腕を組み理由を口にした。


「ああ、消えた卒業生の1人は私の姉だからな。…あの人なら、異界で生き続けてもおかしくないと思っている。それだけだ」

「…そうか、いや、すまない」

深掘りしない方が良さそうな話題だったか?悪い事をしたな。

「なに、構わんさ。過ぎた話だし、私も両親も半ば諦めている。…どこかで生きていると嬉しいというだけの願望だよ」


「…あー、そろそろ講堂に行かないと… ね?」

ユキは気まずそうだ。なんとなくそわそわしている。

「うむ、私は錬金術実習室に向かう。それではまた」

「うん、なんかごめんね?」

フェーゴは気にした素振りもないが、なんとなく空気を察したのか話を切り上げると手をあげて去っていった。


吹っ切れてはいるようだが、家族を失うのは辛い事…なのだろうか?

きっと孤児院長が死んだ時のような感じだと思うが、人が死んだ時に辛さを感じた事がない俺には、フェーゴの抱く感情をついぞ理解する事ができなかった。

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