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40 ー変わりすぎー

走り出した時と同じく、馬車が音もなく停止する。

どうやら学園に到着したようだ。

フェーゴとはクラスが異なるため、講堂に向かう途中で別れることになった。

講堂に向かう途中、幾人かの学生とすれ違ったが、皆一様にギョッとした顔になっていた。

まあ、2年でも上位の実力を持つフェーゴ、天才と名高いユキ、そして学園一の無能が揃って歩いているのだ。注目も集めるってものだろう。

しかもそいつらは俺のことをユキの腰巾着だと思っているから、フェーゴと対等に話をする俺を見て2度驚いている。

「…なあ、俺とこんなふうに話をしてたら、お前の評判が下がるんじゃないか?」

なんて忠告もしてみたが…


「言いたい奴には言わせておけ。評判などいくら下がろうが実力は変わらん。…最も、私も昨日までは彼らの側だったわけだがな」

「そんなの!シズクの良さに気付いてくれたんだから帳消しだよね!」

少しバツが悪そうに話すが、そんなフェーゴをユキがフォローする。

「それなら有り難いな。まあ、君の強さを目の当たりにすれば、君を無能呼ばわりする人間など誰一人として居なくなるだろうが」

「どうだかなぁ… 昨日結構な人数が見てたはずだけど、あんま変わってるようには思えないが」

事実、俺に向けられるのはいつもと同じ路傍の石でも見るような視線だけだ。…いや、困惑も混じってるな。ついでにいつもユキと一緒にいるせいで敵意のようなものも向けられている。


「ふむ… マグレだとでも思っているのか、あるいは私が平民に敗れるほど弱いと思われているだけか」

「マグレな訳ないのにねぇ?10回やったら10回ともシズクが勝つのに」

おいユキ、それはフェーゴに失礼だろう。実際マグレみたいなもんだったぞ。

「はっはっは!ウィンタエア君、事実とはいえ若干傷つくぞ」

認めるのか… 本当に全然キャラが違うぞフェーゴ。

…いや、実はこっちが素なのか?

「私が弱いと思われるのは問題ない。実力で返り咲けば良いだけだからな。問題はシズク、君が私を下して尚侮られる対象だと思われていることだ」

まあ、魔法が使えないのは事実だからな。さもありなんといったところだ。


「うーん… もっとシズクの強さを知ってもらえれば…」

「ふむ、いっその事、この学園に通う強者を端から倒していくというのはどうだ?」

「あ、いいねそれ!手始めに僕のお姉ちゃんでもぶっ飛ばせば、嫌でもシズクの強さが皆んなに…」

そんな恐ろしい提案をする2人。なんにも良くねえよ。というか姉をぶっ飛ばすとか言うな。

「おい、本人を抜きに話を進めるなよ。俺はそんなことする気は無いからな」

バッサリと断っておく。大体、そんな何度も戦ってたらいつか魔力の事を知られてしまうだろう。無用な混乱を避けるためにも、ついでに俺の身の安全の為にも、魔力のことはバラすつもりは無い。

「えー… なんでさ? 大丈夫だよ。シズクならすぐに学園1番に…」


食い下がるユキだが、何を言われても俺の気は変わらない。

もう一度断ろうとして…

「ふむ… 君の強さは体験した私も十分に理解しているが、学園1というのは難しいだろうな」

意外な所から反論が来た。さっきまでのフェーゴなら焚き付けると思ったが…

「む、どういうこと?シズクが誰に負けるっていうのさ」

反論しなくていい。

「いや何、この学園には正真正銘の強者達がいるという事さ。私では足元にも及ばないような化け物がね」

…そんな奴らが居るのか。

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