30 ー過大評価ー
「…そういえば、お姉ちゃんこんなところで何してたの?」
それもそうだ。今の時間であれば、居残りしていたのでなければクラブ活動を行うか、とっくに帰宅しているかのどちらかだ。
「…ん、フラムがまた決闘だーってしつこくて…」
フラムとは確か、フブキの同級生で、上級貴族の人だったかな?確か名前は…
「あー、フラムリアさんねぇ。お姉ちゃんにテストで負けて以来、ずっとライバル扱いされてるんだよね?」
そうそう。フラムリア・キース・マ・サマルアグニ様だ。俺たちといる時も何度か勝負を仕掛けてきたから覚えてしまった。
「うん… それで今日も勝負を挑まれてね?じゃあ学園内でのかくれんぼにしよーって…」
子供か。いや、それよりも学園内?ってことは…
「え?じゃあフラムリアさんは…」
ユキがそう尋ねると、フブキはついっと目線を逸らし…
「今頃、4階辺りを探してるんじゃない…?」
「置いてきてんじゃねーよ…」
「お姉ちゃん… あまりイジメちゃダメだよ?」
どうやらさっさと逃げてきたらしい。なんて奴だ。
「大丈夫… 帰る時に昇降口で帰るよーって言ってきた」
「それ絶対聴こえてないやつだろ」
かわいそうに… まあ、俺が気にするほどのものではないか。
「じゃ… 私は帰るね。ユキちゃんはゆっくり帰っておいで? …シズク、ユキちゃんが危険な目にあったりしたら殺すから」
「はーい」「怖いっつーの」
くるりと振り返り歩み始める…と思ったら、ぴたりと足を止めて再びこちらを見る。
「そういえばシズク… 今日は大活躍だったみたいね?『炎剣』のカリダムに勝ったとか」
耳が早いな。
「そう!もうかーっこよかったんだから!」
なぜかユキが代わりに答える。
「ふふ、まあ… 貴方ならそれくらい余裕だって知ってるけどね… それじゃ」
そう呟くと、今度こそ振り返ることなくゆるゆると歩み始める。
しばらく進むと突如水柱が立ち上がり、それが収まるとフブキの姿はどこにもなかった。
…姉妹揃って俺への過大評価が激しいな。




