3/60
02 ーこの世界には魔法がある。〜とある教科書からの引用〜ー
ーこの世界には魔法がある。
それは特権などではなく、貴族や平民、奴隷であっても、いや、野に生きる獣や魔獣、小さき虫に至るまで、命あるものなら誰だって使うことができるのだ。
本能であろうと理論であろうと、「それ」を使う意思さえあれば、誰にだって魔法が使える。
火を起こし、水を操り、風を読み土を耕し雷を招ぶ。
火に当たる老人も、花に水をやる女性も、狩りをする男性も、道を駆ける子供でさえ。
そう、花に止まる虫すらも、自らの意思で起こした風に乗り飛び立つのだ。
この世界には魔法がある。
しかし、万物には領分がある。
いくら魔法を使おうとも、野を行く獣は天を駆けない。
ー魔導力。
生まれ持った、かの器を、超える奇跡は起こせない。
地を這う者が、空に浮けぬと悟ったならば、それが器の限界である。
天を舞う者が、大海を征けぬというのなら、それが器の限界である。
ー紋章。
生まれ落ちたのであれば、その身のどこかに刻まれる。
その者の才を、神がその身に刻み込む。
火を、水を、土を、風を、雷を
刻み込まれたその紋が、奇跡を呼び込む君の背を
そっと後押しするだろう。