第5話 スカートに挑戦しようと思います。
理緒は、スカートに挑戦するつもりで、香苗が買ってきた服を物色してるのだけど、香苗の趣味で、フリル満載の服ばかりだ。
ちなみに理緒が、スカートに挑戦するつもりなのは、先日髪を伸ばす事にした事が影響……してるのではなく、拓人から「学校の制服は、スカートだから慣れといた方が、いいかもな」と言われたからであるが。
「お母さん、もう少し、普通の服は、ないの? こうね、フリルがついた服じゃなくて」
「ないわね」
―――きっぱり言うなよ!
理緒は、そうツッコミを心の中で入れ、己がひっくり返した服の山を引っかき回すが、事実は変わらない。
フリルがついた物ばかりだ。ついこないだまで男の子だった理緒には、フリル満載の服は、少々ハードルが、高い。
「はあー」
―――お母さんの趣味だから仕方ないけどさ。でも、おれの趣味は、シンプル・イズ・ベストなんだよ。普通の服欲しいな。
あっそだ。
「 これじゃ、スカートに挑戦するどころじゃないよ。ねぇ、商店街にあるファッションビルに行こうよ。お兄ちゃん、あそこなら、普通の服が、買えるって言ってたよ」
「 ごめん。今は、無理」
「なんで? 春休み前だからそんなに、混んでないよ」
―――これ、前と同じパターンかな?
「えーとね。それがね、理緒ちゃんの服ネットで、まとめ買いしたのが、今日の午前中くるんだ」
「まーたーなんで、おれに、一言も言わないんだよ~」
―――やっぱり
理緒は、ガックリと項垂れる。
香苗に、何を言っても無駄な事、分かってる。宇宙一のマイペース女王なのだから。
しかし、自分に関わる事だし、事前に一言くらい予告しといてくれるものが常識じゃなかろうか?と理緒は、思ってしまう。
「大丈夫よ。普通の服だから」
「本当?」
理緒は、ジトッと香苗を見る、香苗は、慌て
て、弁明する。
「本当だってば。なんなら、ネットの画像見る?」
「 いいよ、どうせ実物くるんだし」
二人の会話が、一段落ついたところで、ピンポンと音が、玄関から聞こえてきた。
「 来たかしら?はーい」
香苗は、玄関に向かう。しばらくして、段ボールを抱えて戻ってきた。
「噂をすれば、なんとやらね。注文した服が、着いたわよ」
イソイソと香苗は、段ボールを開けた。
「ほら、普通でしょ?」
「うん。普通だね」
―――Tシャツ、ブラウス、ワンピース。淡いピンクとかレモンイエローとか色は、お母さんの好みっぽいけど、デザインは、シンプルな物だ。
と一つ一つ出していく。その中の一つに、気になる一セットがあった。
「お母さん、これさ、学校の制服みたいだけど、そうじゃないよね?」
理緒は、段ボールの底から白のシャツと紺と白のチェック柄のプリーツスカートに紺のリボンに白いベストの一式。テレビで見たり、拓人から話に聞いた制服に見た目は、そっくりだが、なんか違う気がする。
「そうよ。制服に似せて作った服よ。制服のスカートは、そこまで短くないわよ」
「そうなんだ。でも、テレビで見た女子高生のお姉さんは、スカート短かったよ」
「あれは、スカートのウエストの部分を折ってるのよ。大体は、そうやって短くするんだけど、中には裾を加工する娘もいるけど。私も、女子高生の頃スカートのウエスト折ってたわね」
「ふーん。ねぇ、これ着てみていい?」
「いいけど、大丈夫?」
「多分」
理緒は、そう言って服を持って、自室へ行く。
自室のドアを閉めると、今着ている服を脱いでいく。
「えと、シャツを着て、ボタンが、逆なんだよね。男物と違って、それで、スカートかあ。抵抗あるけど、いきます」
理緒は、そう言って、スカートを穿く。
ウェストが、ゴムになってるのでそのまま、穿ける。
「スカート。穿いたら、次は、リボンを着けないと。ホックで止めるようになってるんだ」
理緒は、シャツの襟を、上げるとリボンを着けて、アジャスターで調節した。
「出来た。ベストも着て。スカート穿いてると、嫌でも内股になるよ。て言うか、がに股で歩くとスカートの中見えそうだし」
―――本当に気になるな。裾がパタパタして、何か落ち着かないし。そのくせ、まとわりついてくるような気がしてさ、足さばき難しいな。
部屋の中を、理緒は、歩き回ってみた。
しばらくそうやってると、香苗が出てこない理緒の事を心配して、自室の外から声をかけてきたので、理緒は、自室から出たのだった。
「 まー可愛い。よく似合ってる」
「あっありがとう」
理緒は、誉められて、恥ずかしいような、嬉しいような、複雑な気持ちだった。
「それじゃ 今から、出かけましょ」
「えーいきなり!」
「だって、ただ着るだけじゃ、面白くないでしょ」
「分かったよ。なら、ファッションビルに行こうよ。それならいい?」
「いいわよ。どうせなら、バスに乗って、郊外のショッピングモールを歩きたいけど」
香苗は、心底残念そうに言った。
「ファッションビルで、十分だよ」
「そう、じゃ早速行くわよ」
「はいはい」
こうして理緒は香苗の言うがままに、外出する事になった。