1-2
試合はライオンズが開幕7連勝を決めて終わった。
「さてと、帰るかな」
「あの、沢田さん。それで答えは……」
「答えか……ゴメンね。正直に話すと好きな人がいるんだ。あ、選手とかじゃないよ? 2つ上の幼なじみの男の子……。だから、付き合うことは出来ない」
「……名前は?」
「野球部三年、秋山佑司。例え新入生でも知らないわけないよな。知らないなら、これを読め」
手渡されたのは野球雑誌。
「埼玉県所沢市西川学園野球部、秋山投手。ストレート148㎞、スライダー、チェンジアップ、ナックル、フォーク、縦スライダー、スプリットを持ち合わせてる超高校級。難点は縦変化球に偏重していること。総合評価は特A。地元ライオンズを始めとした関東5球団が常にチェックをしている」
「……幼なじみ?」
「ああ。野球を始めさせたのはボクだ」
「は?」
「ボクが小学三年生のときに引っ越してきて、初めて出来た友達が佑司だ。まだ野球はやっていなかった。いや、まわりがさせなかったんだ。僻みの対象だったんだ。ボクはずっと野球が大好きだ。佑司には才能があったんだ。初めてキャッチボールしたときから、こいつはモノが違うと思った。だから、ボクはボクらだけの野球チームを作った」
「……沢田さん……スポーツ特待生だったね……まさか野球?」
「そのとおりだ。ボクは、このナリだけど、ちゃんと野球特待生だ。しかも男子野球部の改正案で女子も参加できるようになったからな」
「……そっか……どうやらライバルに一目惚れしたみたいだ」
「まさか牧くん」
「そうだよ。野球部に入るんだよ。ま、こっちは一般だからスタート位置は違うけどね」