第二章 第五十五話 カラクリ少女、ここに眠る
レベッカは廊下を渡り、左の部屋を見ると一瞬目を開き、そのまま元の表情に戻る。
ノコのあの姿を見たんだな。
俺はレベッカの隣に立ち「大丈夫か?」と問いかける。
「大丈夫って気軽に言えるわね。正直言って複雑な気持ちよ。やるせない怒りが込み上げてくるわ」
俺は「ごめん」と言おうとした瞬間、レベッカは引き続きこう言う。
「ごめんって言わないでよね。今回は仕方ないことなのよ」
そう言われ俺は「あぁ」と返すが、申し訳ない気持ちで下を向いてしまった。
誰かが俺の肩をポンと叩く。
「宏、下向いても何も変わらねぇぞ」
振り向くと亮夜がいる。
彼は優しい目で俺を見ていた。
「そうだな」
俺たちは部屋に入った。
「それ以上あたしの家族をナンパしないでくれる?」
レベッカは手を腰に当て、岩城に言った。
「お嬢……様?」とノコの声が聞こえる。
「えー、もっとお話したかったのにー残念って……おおー! みんな勢揃いじゃないかぁ。大神くん、治し方わかったんだ」
「あぁ」と答え、上半身だけのノコに近づく。
岩城が「やってあげて」と優しく言う。
俺は頷き「ごめん」と言い、彼女を斬った。
あれ? なんで何も言わないんだ?
そう思いノコの顔を見る。
彼女の瞳から光が失なっていくのがわかった。
えっ? なんで?
もしかして俺は彼女を殺してしまった?
頭が真っ白になる。
動かないノコを見て、岩城が衝撃的なことを言った。
「あぁ、これがノコさんが言ってたスリープモードかー」
「えっ?」
「大神様、ノコは時々スリープモードになって休憩するのです。ですから大丈夫でございますよ。至って正常でございます」
「よかったぁぁぁ」
「確かにこの上半身の状態でスリープモードになったら死んだって思うわよね」
「ノコの休憩は急だから」
「宏、あと二人——いや、一人と一匹がいるんだから早く行こうぜ」
「うん、行こう」
「ちょっと待って。よいっしょっと」
岩城はそう言いノコを持ち上げる。
「よし、みんな行こう!!」
「行きましょう行きましょう! あんまり喋ってないので空気みたいになってますけど。私いますよぉ〜」
「ねぇ、ブギーマン……誰に話してるの?」
「私たちの会話を文字として見てる人たちですよぉ」
ブギーマンは何言ってるんだ?
アンが首を傾げているじゃないか。
「妹様、このような者の話を真に受けてはなりません。妹様もおかしくなりますよ」
「そうなの?」
「そうでございます。ですのであまり関わらないほうが——」
「狼さんはよく吠えますねぇ」
カルロスはブギーマンを睨む。
ガルルルルルル
「おぉ、こわいこわい。手綱に繋がれているとはいえ、吠えられるとびっくりするんですよねぇ」
「あたしの家族にちょっかいかけないでくれる? あたし、あなたを招き入れたつもりはないわよ」
レベッカは腰を当て、ブギーマンを見上げながらそう言った。
「何を言ってるのでしょうか。招いて頂いたのはあなたではありませんよぉ」
ブギーマンは不気味な笑みを浮かべながらそう言い、部屋を出る。
「……わかってるわよ。あなた達行くわよ」
そう言いレベッカは部屋を出る。
「大神くん、僕は嬉しいよ」
「なんでだ?」
「幼女が増えたからだよ!」
「岩城くんはいつも通りの岩城くんだな」
岩城は笑顔で返し、俺たちは部屋を出て中央階段を下りていくのだった。
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