第二章 第五十四話 景観
やはり人を斬るのは嫌なものだ。
しかも拘束しているから尚更、悪いことしているみたいだ。
白目のまま動かなくなるカルロス。
「宏……本当に大丈夫なんだよな?」
「大丈夫だと思う。レベッカにもしたし」
「えっ、あたしこんなにバッサリ斬られたの?」
アンが「うん」と返事する。
レベッカは自分の胸を触り、両眉を上げ、「へっ」と苦笑いする。
「あらぁ? 姿が変わっていってますねぇ」
ブギーマンがそう言ったので、カルロスを見ると、姿が徐々に人間のようになっていく。
「うぅ?」
「目覚めたようだな」と亮夜は言い、帯を操り解く。
解いた瞬間、カルロスはアンに近づき、片膝をつく。
「申し訳ございません、妹様。私はあなた様になんと酷いことを——」
すごく反省しているようだ。
彼女の顔を見ず、下を向いている。
「大丈夫、大丈夫だから」
「いえ、妹様を偽物などと発言し、剰えあなた様を襲おうと——いや、消そうとしました」
「カルロス?」
「は、はい……」とカルロスはアンの顔を見る。
そして、彼女は彼を優しく抱きしめた。
「カルロスが戻ってよかった」
「妹様……本当に——本当に申し訳ございませんでした」
心からの謝罪だった。
カルロスはアンを抱きしめ返す。
「うん」と返すアン。
よかった。
徐々にパズルのピースが元の絵に戻っているようだ。
しばらくして、カルロスはアンを抱きかかえ立ち上がる。
「皆さま取り乱してしまい、大変申し訳ございませんでした。えーっと……」
「大神 宏だ」
「大神様ですか。引き続き皆(みな)を元に戻して頂けないでしょうか」
「あぁ、もちろん」
「ありがとうございます」
そう言い彼は俺に会釈する。
これは仕方ないんだ。
そう思いながらも俺たちは廊下を渡り、両開き扉のところまで戻った。
レベッカは壊れている両開き扉に口をポカンと開け「誰がこんなことしたの?」とこちらを見るので、カルロス以外の全員が彼を指差す。
「カルロス? 扉は開けるものって知らなかったの?」
「申し訳ございません! お嬢様!!」
彼女はため息を吐き「まぁ、今回は仕方ないか」と呟き、道を塞いでいる壁を見る。
「エルフィーったら、ほんと真面目ね。……カルロス」と言い、指をパチンと鳴らす。
「はっ。妹様、申し訳ございません」と言い、カルロスはアンを下ろす。
「階段ホールの景観が悪いから、合わせてちょうだい」
「畏まりました。皆さま少し離れていてください」
「あたしはここで立っているから、あなたたちはその……道化師の後ろにいなさい」
「はいはい、いいですよぉ。皆さん私の後ろにいてくださいねぇ」
レベッカはブギーマンの前に立ち。
それ以外はブギーマンの後ろに立った。
カルロスは「忠義の獣!!」と叫ぶ。
全身発電し始めたと思っていたら、廊下と階段を塞いでいた壁が壊れていく。
その光景を見て亮夜は「味方になると心づぇな」と言ってきたので、「そうだな」と答える。
そして、壁を壊したカルロスはレベッカの前に横に立つ。
「お嬢様、いかがでしょうか?」
レベッカは壊れた壁を見てこう言った。
「うん、上出来よ。さぁ、ノコを向かいに行きましょ」
そう言い彼女は先導するように歩きだした。
カルロスは「お褒め頂き、ありがたき幸せ。さぁ妹様」と言い、アンを抱きかかえる。
「完全に仕切られちゃってますねぇ」
「そうだな」
俺はそう答えるしかなかった。
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