表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SPIRIT~スピリット~  作者: SHOW
第一章 胡蝶の夢
6/88

第一章 第二話 転校三日目

「へぇ、そんな夢を見たんだ」


「そうなんだ。変な夢だろう?」


 俺は爽やかな笑顔を振る舞う人と一緒に廊下を歩いている。


 彼は俺のクラスで委員長をやっている神崎 勇助(かんざき ゆうすけ)


 転校三日目の俺に校内紹介がてら食堂で一緒に食べないかと誘ってきたので、断る理由はない俺はその誘いに乗ることにした。


 校内は昼休みのため、食堂に向かう生徒、教室で友達と弁当を食べる生徒、また今日は晴れているので外で食べる生徒もいる。まぁ、一人で食べるやつもいるだろう。


「だから左頬に傷があるのかい?」


 そう、朝起きて鏡を見ると左頬に軽い傷痕があった。しかも、最初に斬られた場所と一緒である。


「いや、これは寝ていて引っ掻いたんじゃないか」


 そう信じたい。しかし、その傷痕は左腕にもある。あの夢、また見ないよな。俺は傷痕部分を軽く触れながらそう思うのであった。


「そうかい? 僕はその夢でやられた傷が今も残っているって思ったんだけど。だって、そっちのほうが浪漫あるからさ」


 浪漫か。実際体験していないくせによく言えたものだ。結局、他人事なんだよな。


「話は変わるけどさ。最近芸能人の引退ラッシュがすごいよね。ウーハー剛力とか好きだったんだけどなー」


 ウーハー剛力、鍛え抜かれた筋肉でバラエティ番組やスポーツ系のニュース、特撮などで引っ張りだこのタレントだった。


 昨日、電撃引退記者会見を開き、そのニュースが今朝の情報番組のトップでやっていた。


「確かにそうだな。世代交代の時期じゃないのか?」


「どうなんだろうね。もしかしたら、君が見た大男はウーハー剛力だったのかもね?」


「無理矢理すぎねぇか?」


「そうかな?」


「そうだよ」と答え、俺たちは食堂に入る。


 食堂は生徒で賑わっている。


 俺たちは食券を買うために少し並び、食券機の前で今日の昼飯を何にするか、少し悩み。俺はカツとじ定食、神崎は石焼きビビンバのスイッチを押す。


 食券を取り出し、食堂のおばちゃんに渡し、スーパースターが登場するのを待つファンの如く、ワクワクしながら受取り口で調理場を眺める。


「はい、カツとじ定食!」


 卵にとじられたカツと白ご飯、そして味噌汁がトレイの上に置かれる。


「席、探そうか」


「そうだな」


 さすが昼休みだ。


 周りを見渡し、席を探すが、全然空いてない。というより疎らに座っている。


 隣に人がいると席を一つ開け座る人が多いこと多いこと。


 まぁ、俺もそうするんだが……。


「ここ空いたよ!」


 神崎が長テーブルの席に座る。


 俺は向かいにカツとじ定食を置き、腰を下ろす。


「ありがとう」


「ううん、君はまだこの学校に慣れてないんだから、これぐらいさせてよ」


 なんて優しい人なんだ。前の高校ではこんな人はいなかった。


「どうしたんだい?」と爽やかな笑顔で首を傾げる神崎、俺は「なんでもない。優しいんだな神崎は」と答えると。


「当たり前だよ。人には優しく、親切にしなくちゃね」


 そう神崎は答えているが、なぜだろう、彼が言っていることに違和感を覚えた。


「そこ空いてるかしら」


 唐突に女性の声がした。


 声の主を見るため真横を振り向く。


「えっ?」


 そこに立っていたのは長髪黒髪の美少女、大和撫子という言葉が合いそうな人だ。


 しかし、俺は驚いたのはそこではない。


 驚いたのは彼女が夢で殺された女の人と似ていたからだ。


 嫌な汗が出る。


「なに?」


 彼女は見られることに嫌悪しているのか、俺を睨む。


「あっ……いや……」


 神崎は俺が反応に困っているのを察したのか、笑顔のまま「神代(かみしろ)さん、席は空いてるよ」と言う。


「そう」


 彼女は素っ気ない態度で俺の隣に座る。


 これほど気まずい昼ご飯はないだろう。


 俺は二度とこんな昼ご飯はしたくない。そう思うのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ