表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SPIRIT~スピリット~  作者: SHOW
第二章 ヴァンパイアシスターズ
25/88

第二章 第五話 ぼっかけ焼きそば

 参ノ宮センター街は賑わっていた。小さな子供からお年寄りまで、老若男女問わず色んな人が商店街を歩いていた。


 俺たちは人混みを避けながら前に進む。ドラックストア、電機ショップ、バーガー店。それらを尻目に亮夜は白文字でSANPLAZA(サンプラザ)興町筋きょうまちすじCENTER(センター)PLAZA(プラザ)と書かれた建物の前で止まった。


「ここに入るぜ」


 亮夜はそのまま昔のビルのような内装をした建物に入り、地下へと続くエスカレーターに乗った。俺も追って乗る。


 地下に下りるといろんな食事処がある。


 和食に洋食、中華にカレー、へートマトラーメンなんてあるのか。


 亮夜は西に向かいながら俺にこう話す。


「ここは平日、サラリーマンとかが食べにくるんだけどよ。いろんな店舗があるから好きなんだよ。和洋中はもちろん。ラーメン、カツ、喫茶店もあるんだぜ。今日はどこにしようかねぇ」


 俺は亮夜を追うように歩いていたが、ある店の看板を見て止まった。


「ぼっかけ焼きそば?」


「おっ、ぼっかけ焼きそばが食いてぇのか? じゃ、ここにするか。すいません、二人でお願いします!」


 亮夜はぼっかけ焼きそば屋の暖簾のれんを上げ、俺を先に入るように手を突き出す。俺は一言「ありがとう」と言い店に入る。


 店員に勧められるがまま席に座る。俺の隣にぽっちゃりで髪の毛を耳あたりまで伸ばした黒いリュックを背負う男が大きい独り言でぼっかけ焼きそばを食べていた。


「んー、やっぱりぼっかけはいいねぇ。幸戸市民の愛する味だー。この甘く煮たすじ肉がいいんだよねー」


 男はぼっかけ焼きそばからこんにゃくを箸で摘みこう言う。


「そして、このこんにゃくがまたいい味を出しているんだぁ。こんにゃくの歯ごたえが料理を飽きさせない。んーいい。美味しい」


 すごい独り言だな。いろんな人がいるものだと思いながら、椅子を少し亮夜よりに移動すると、亮夜が前を屈み俺の隣の人を見ると「岩城じゃねぇか」と言った。


「ん? み、水島?」


「亮夜、知り合いか?」


「知り合いって……二組の岩城だ」


「一緒の学校なの?」


「君が噂の転校生くんかー。一週間未満で水島を名前呼びとはすごいねぇ」


 一瞬ビクッとなる。そうだ、転校して間もないのに、俺はいつも間にか亮夜と呼んでいた。どう説明しようか。


「そうだぜ。宏とは名前で呼ぶ関係になったんだぜ!」


 ナイスだ亮夜。これで説明する必要がなくなった。


「それよりも岩城。なんでここにいるんだ?」


 岩城の目が左右動き「散歩だよ」と答えたが、亮夜は椅子の背凭せもたれに凭れ掛かり、軽く笑いながらこう言う。


「ふっ、その割には大きなリュックだな。登山でもしたのか?」


「あーもー、二、三階に居たんだよ」


「二、三階? その階がどうしたんだ?」


「なんだい? 転校生くん。こっちの世界の住人かい?」


「こっちの住人どういうことだ?」


「この後、行ってみるか? 俺はあれの何が面白いのかわからねぇけどな」


「それは聞き捨てならないねぇ。あれは僕たちのオアシスだよ。ねぇ、転校生くん?」


「俺は転校生って名前じゃない。大神 宏だ」


「あぁ、失礼。確かに名前以外で呼ばれるのは気分悪いよね。おいとか、なぁとか。そう言われたらひと以外の何かだよね」


 そう言い岩城は微笑みながら手を出す。


「よろしく。大神くん」


 俺は「よろしく」と握手する。


「なぁ、宏。それよりも注文しようぜ」


 振り向くと、亮夜が前を人差し指で指していた。その方向を見ると、おねぇさんが笑顔でメモを片手に注文を待っている。


 慌てて「ぼっかけ焼きそばで!!」と言うのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ