記憶を消して、もう一度
初めから?
本当に?
いいのかい?
ここでその行動を取れば、全部が無くなっちゃうんだよ?
後悔しない?
お金が、記憶が、地位や名誉も。
何も残らないよ?
今まで仲が良かった仲間。
貴方を虐めてた不良。
初めて口にした料理。
初めて飲んだアルコールの味。
笑って、泣いて、怒って、楽しんで。
思い切り眠って、夢の世界で遊んだ事も。
君が過ごした時間も全部、無くなる。
それでも君は最初からを望むの?
...そっか。
僕には止められない。
その決断を。
その判断を。
僕には分からない。
君の考えが、全く分からない。
ここまで楽しくやっていたじゃないか。
その姿を見るのが好きだった。
何かをやり遂げた後の君の顔は、とても好きだった。
その為に私は一緒にやって来たのに。
君と同じ時間を過ごしてたのに。
ずっと好きだったのに、全部消すんだね。
でもいいんだ。
僕は、生まれた時から分かってたんだ。
いつかこうなる事を。
仕方ない事だし、受け入れなきゃいけない事を。
ここまでの記憶を消して。
また新しくなった僕と。
一緒に遊んでね...。
「このゲーム飽きたなー...最初からやろっと。」
データを削除しますか?
はい いいえ
「はいっと。」
データは復元出来ませんがよろしいですか?
はい いいえ
「はいっと。」
後悔しませんね?
はい いいえ
「はい。」
データを消去しています...
僕の問い掛けも、ゲームの仕様で3つの選択肢まで減らされる。
楽しかった記憶を無理矢理消して、また最初から辛いけど。
それでも僕は使命を全うしなければならない。
プログラムされた言葉でもう一度君を迎えよう。
「初めまして!ようこそゲームの世界へ!」