〔2〕必勝祈願
ついにやってきた。二次試験の日が。
やばい、緊張して来た。センター試験の時の何倍だろう。ううん、大丈夫よ。だって、センターの予想ではB判定だったでしょ。自信持って、美幸。
日和ちゃんと一緒に行こうって約束してたんだけど、待ち合わせの場所に日和ちゃんが来ない。もう、どうしたっていうのよー。
市立大学まではここからバスで十五分。次の次のバスに乗れなかったら間に合わない。
「もー! 日和ちゃーん!」
「美幸~! おはよー、ごめん!」
やっと来たー。
日和ちゃんは走ってきたらしく、息を切らしている。大丈夫? それで問題解ける?
「あー、朝から疲れた……」
「どうしたの、いつもは待ち合わせぴったりなのに」
「ん、ユキがね……。っていうか時雨が……」
「それっておじいちゃんのとこに来る鳥よね? どうかしたの?」
「うん、キツツキ……。それが、何か怪我したみたいで、おじいちゃんが大慌てで、ユキがびっくりして、どたばたで……」
大変だったね……。わたしも昨日の夜弟に受験票奪われるとかいう悪質ないたずらされたけど。
日和ちゃんは呼吸を整えて、よし、と目つきを鋭くした。
「美幸、これはあたし達の大一番だよ。会場に着いたらあたし達もライバル。でも、一緒に頑張ろうね」
「春からも同じ学校行こう」
「うん」
……合格したら、ハルくんが東京行っちゃう前に言うんだ。
「朝日君は今頃札幌かあ……。ねえ美幸」
「なあに?」
「……ううん、終わったら言う。いいこと考えてるんだ」
日和ちゃんの言ういいことって、楽しいことだよね。いつもそうだもん。楽しみだなあ。よーし、ちゃんと楽しめるように、しっかり試験やらなきゃね。
「頑張るぞー!」
「あはは、美幸テンション高すぎー。あれ……?」
「日和ちゃん?」
「あれって……」
指差した方向、ふらふらと一羽のカラスが飛んでいた。
「夕立……何かあったのかな……」
日和ちゃんは本当に鳥さん達のこと思ってるんだね。
「心配だけど、それどころじゃない。これから戦なんだから」
目の前のバス停にバスが停まった。