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「参」戦地に来たる神

 センターが終わってから今日まで、妖怪には追われるし、そんな時に限って紫苑はいないし、美幸に見られるし、紫苑が怪我してるし、もういい加減にしてくれ。


 一昨日札幌入りした時には大丈夫だと思っていたんだ。思っていたのに、何故こうなってしまうんだ。


「朝日晃一だね」


 札幌駅の近くのホテルに滞在していた俺は、大学へ向かう為に道を歩いていた。同じような高校三年生や浪人生がたくさん歩いているのに混じって、俺も試験会場へ向かっていた。


「探したよ」


 番傘を差した男が立っていた。年の頃は二十代半ばくらいで、濃紺のダッフルコートを纏っている。神だ、とひと目で分かった。翡翠の覡の力で導いてくれというお悩み相談の依頼(いらい)(にん)だろうか。しかし、俺はこれから大事な入試がある。神様の相手をしている暇などない。


「後にしてくれ」


 男神の横を過ぎようとすると、閉じた番傘で行く手を遮られた。


「待ちたまえ」

「急いでるんだ」

「話がある」

「後で聞くから今は試験を受けさせてくれ」


 男神は不服そうに俺を睨みつける。先程まで金色だった瞳が、今は赤く揺れていた。


「仕方がないな。そうしてあげよう」


 今度は瞳が緑になる。いや、違うな。きっと玉虫色なんだ。


 男神は番傘を広げて差す。


「試験が終わる頃に駅前で待っているよ」


 空いている左手でキツネの形を作って、薄く笑う。


「それじゃあね」


 俺が瞬きをする間に姿は消えていた。









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