桜の花瓶
机に刻まれた 流行りの歌と君の名前
乱雑に押し込んだ 教科書と週刊誌
短めのチョークで 落書きされた黒板に
開いた窓から 笑い声と砂の匂い
離れたくないと 胸が痛んだのは
いつだって別れが訪れてからだった
忘れたくないと 声が震えたのは
届かない記憶が霞み始めてからだった
あの日
「この場所」と呼んだ世界が 今「あの場所」へと変わってゆく
欠けた花瓶も折れた箒も 僕の中で呼吸をつないでる
気づけなかった 何気ない君の優しさのおかげで
あの頃の僕はこんなに 泣いたり笑ったりできてたんだね
掲示板に咲いた 凛と綺麗な君の文字
ゴミ箱に捨てられた くしゃくしゃのテスト用紙
携帯のアルバムに 自慢できない写真たち
小さくなっていた 大きかったはずの制服
憧れを抱いて 夢を語ったのは
光に満ちていたからだったはずなのに
夢を語るほど 前が眩んだのは
一体いくつの時だったのだろう?
君と手を繋ぎ歩いた帰り道 寄り道した公園には
あの日と変わらない鞦韆と 蕾をつけ始めた桜の木
やっと気づいた 何気ない君の温もりがあったから
今 僕はこんなに温かい涙を流して笑えるんだね
「この場所」と呼んだ世界を 今「あの場所」と呼ぶ日が来たけど
欠けた花瓶も折れた箒も 僕の中で呼吸をつないでる
今はわかるよ 何気ない君の優しさのおかげで
今 僕はこんなに 泣いたり笑ったりできてるんだね
ありがとうございました。