セーブ1 ~セーブとロード~
光に取り込まれた俺は気がつくと床に寝転がっていた。
「どこだ…ここ…」
俺は呟きながら立ち上がり辺りを見回した。
俺がいたのは西洋風の大きな部屋で、寝転がっていた床には厨二心がくすぐられる魔法陣が描かれていた。
これはもしや……
「いや、まて。まだ異世界と決まった訳じゃない。
『何も知らない人間が西洋風の大部屋に閉じ込められたらどんな行動を取るか』
みたいな実験とかかもしれない」
もちろんそんなバカみたいな実験する奴がいる訳ないと思っているが。
どうやら俺はここを外国の何処かだと思い込みたいらしい。
だがそんな思いとは裏腹にコスプレとは思えないハイクオリティな衣装纏った3人の人が部屋に入ってきた。
「おお!成功した!!成功しましたぞ!」
嬉しそうに声をあげたのは如何にも魔法使いという格好をしたお爺さんだった。長いストレートな白髪と髭が目につく。
「流石はマルスじゃ。良くやってくれた。」
お爺さんの事をマルスと呼んだのは3人の中で一番風格のあるおじさんだった。
この人も分かりやすく王冠を付けている。
恐らく王様的な人だろう。
「良く来てくれた。私はこの国ハーブリアの王エルキア・ロイ・ハーブリアである。お主は異世界人で間違いないな?」
やはり王様だった様だ。
俺は現場に全くついていけず固まってしまっていた。
「ん?言葉が違うのか?それは困ったな…」
「…!あ、いや、わかります。はい」
なんとか声をひねり出したが俺の混乱は続いている。なんで小説の主人公はあんなに順応が早いんだよ!
「おお!安心したぞ。どうやらまだ現状に理解が追いついてない様じゃな。フィリアよ。この異世界人に説明をしてあげなさい」
「分かりました、お父様」
返事をしたのは3人の中で唯一女性の人だった。お父様ということはどうやらお姫様らしい。日本人と白人系のハーフっぽい顔立ちでかなり美人だ。同い年くらいだろうか。
「私はフィリア・ロイ・ハーブリア。国王エルキアの娘です。あなたは先程、私達の転移魔法によって異世界から転移しました。つまりここはあなたがいた世界とは違う世界なのです」
どうやら妄想は現実になったようだ。
俺の頭はパニック状態だがお姫様はそのまま続ける。
「勝手に転移してしまい誠に申し訳ありません。ですが私達にはあなたが必要なのです。どうか私達の国をお救いくださいませ」
国を救うか…。テンプレ過ぎて逆に落ち着いて来た。
「あの〜」
「はいなんでしょう」
「俺、いや僕、元の世界では普通の学生で。国を救うなんてとてもできるとは思えないんですが…」
「心配には及びませんよ。世界の壁越えた者には特別な能力が付くのです。きっとあなたにも付いているはずですよ」
「能力…ですか?」
「はい。能力窓よ開けと言ってみてください」
「…す、能力窓よ開け…!おお!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ケント・アマノ(人族) male
LV:1
HP:108/108
MP:38/54
攻 :11
守 :12
速 :12
知 :8
運 :56
【スキル】
身体能力上昇(小)1/10 MP自動回復(小)1/10
経験値取得率上昇(2)1/10 スキル取得率上昇(3)1/10
【称号】
異世界人
身体能力上昇(小)
攻・守・速10%上昇 スキルレベル1/10
MP自動回復(小)
MPが1時間に10%回復する スキルレベル1/10
経験値取得率上昇(2)
経験値取得時に取得経験値2%増加 スキルレベル1/10
スキル取得率上昇(3)
スキルの取得率が3%増加 スキルレベル1/10
異世界人
異世界の人間が転移・転生した場合に取得
HP2倍 MP2倍 特殊スキル取得率2倍
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あれ?なんだかあんまり強くない気がする。
というか経験値2%増加って微妙過ぎだろ!
「どうですか?素晴らしいステータスでしょう?」
ヤバい。お姫様の目が期待に満ち溢れている。
いや、まだわからない。この世界の平均ステータスが元々低いのかもしれない。
「あの、この世界のステータスってどれくらいが普通なんですか?」
「そうですね。一般的な兵士ならHPMPは50〜100ほどでそのほかは10前後ですね。スキルは3つほどあれば良いくらいでしょうか」
「えっと、その、僕のステータス大体そのくらいなんですが…」
「え?」
「なんじゃと?」
お姫様と国王がキョトンとする。どうやらこのステータスは異常のようだ。悪い意味で。
やがて国王の顔は落胆へと変わってしまった。
「はぁ、お主はどうやら異世界人としては落ちこぼれの様じゃな。使えん。マルス、後始末は任せた。行くぞフィリア」
そう言うと国王は娘を連れて部屋を出て行った。残ったのは俺とマルスさんだけだ。
勝手に連れて来ておいてそれは無いのでは無いかと思うだが。
「すまんのぉ。お主に恨みはないのじゃがこちらも必死なのじゃよ」
「…なんかすみません。期待に応えられず。でも何故異世界の人間が必要なんですか?」
「このハーブリアの北に魔族の国があるのじゃがその国が近々この国と戦争を起こすという情報が入ったのじゃよ」
「じゃあ僕はその戦争に勝つ為に転移させられたと?」
「そうじゃ。魔族は人族より戦闘能力に秀でておる。世界の壁を乗り越え無敵のステータスを手に入れた異世界人の助けがなければ国に多大な被害が出てしまう。だから転移させたのじゃ」
なるほど、やはり魔族とかファンタジーな目的で呼ばれたらしい。
そこで俺は他の生徒や敦史が転移していないことに気がついた。
「そういえば、僕が転移するときに周りの人たちも巻き込まれていた様なのですが…」
「ここには来ておらんよ。恐らくお主1人だけが転移されたのじゃろう。でなければワシのMPが持つはずがないからの。」
良かった。とりあえず転移したのは俺だけのようだ。
「さて、お主の処分についてじゃが」
「ああ、そうでしたね。僕はどうなるのですか?まさか追い出されたりしませんよね?」
「フォッフォッフォッ。そんな真似をするわけ無かろう」
「良かった」
「なに。死んでもらうだけじゃ」
「え?」
そう言ったマルスさんは手を軽く振った。
ズン!!
気がついたら俺の腹にドッヂボール大の穴が開いていた。
「!っ!!ーっ!ーーっ!」
認識した瞬間に腹部に痛みが走る。あまりの激痛に声が出ない。
「お主の処分方法で一番楽なのは処刑じゃよ。何故殺さないと思ったのか理解に苦しむわい」
クソッ!完全に頭から抜けていた!ここは小説じゃない!異世界転移しただけの現実だ!なんで俺は安心していたんだ!!向こうからすれば替え玉はいくらでも出せると分かっていたのに!!クソッ!チクショウ!ここで死ぬのかよ…俺は…こんな意味のわからない死に方で…
「じゃあの異世界人よ」
マルスは手から炎を出し、穴の空いた俺の体は完全に燃え尽きた。
ーーー俺は死んだーーー
【称号】『異世界人』の効果発動。特殊スキル取得率上昇。特殊スキル『セーブ&ロード』取得。死亡した為『セーブ&ロード』発動セーブデータを探しています。ーーーセーブデータが見つかりません。データが見つからない為 初期データをロードします。ーーーロード完了。ーーーーーロードの効果により全スキルレベル上昇。
「っ!」
!?なんだ今のは!?セーブ?というか俺は何故生きているんだ?今度は転生したのか?
「ここはさっきの部屋?」
床には見覚えのある魔法陣が
確か特殊スキルとか言っていたな…
「よしっ能力窓よ開け!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ケント・アマノ(人族) male
LV:1
HP:108/108
MP:53/54
攻 :14
守 :15
速 :15
知 :8
運 :56
【スキル】
身体能力上昇(小)4/10 MP自動回復(小)4/10
経験値取得率上昇(8)42/80 スキル取得率上昇(8)52/80
【特殊スキル】
セーブ&ロード
【魔法】
セーブ-/-
ロード-/-
【称号】
異世界人
セーブ&ロード
異世界人が死亡した際に超低確率で取得
特殊魔法セーブが使用できる様になる。
特殊魔法ロードが使用できる様になる
セーブ
使用した瞬間の全てがデータとして記録される。
記録できるデータは1つ。
データが存在する状態で新たに記録した場合前データは消える。
消費MP0
ロード
セーブによって記録したデータに戻る。
記憶・ステータスのみロード使用直前のものが引き継がれる。
他者による殺害によりデータをロードした場合、全スキルレベル上昇。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一体どういうことだ?
ありがとうございました。