12、学園編(入学試験)
待ちに待った学園編スタートです!
長いようで短かった2ヶ月も過ぎ去り、明日は学園の入学試験だ。
試験内容はシンプル、魔力の測定と魔法実技だ。地球のノリで筆記試験もあると思っていた。まぁ、農民は筆記試験を受けても受かる確率は低いだろう。
次の日の朝、布団の中に違和感を感じて目が覚めた。
なんだ?またヘルが布団に潜り込んでるのか?
「布団に潜り込むのはやめろってあれほど言ったろ?」
そう言って布団をめくった。そこに居たのはヘルではなく玉姫だった。
「おはようなのじゃ!」
「玉姫...お前もか...。」
「なんの事じゃ?」
「いいから服を着ろ!」
「ヘル殿からこの方が喜ぶと聞いたのでな。い、嫌じゃったのか...?」
「い、嫌ではないが...。って、そうじゃなくて!」
なんか、デジャヴ...。
玉姫を振り払い、服を着させて自分も着替え始める。
「玉姫...なんでここにいる...。」
「何か問題でもあったのか?主様。」
「着替えるから一旦出ていけ!」
そう言って部屋から玉姫をつまみ出すのであった。
着替えも終わり宿をチェックアウトして試験会場まで向かうことにした。
ちなみに、玉姫は普段は異空間に居るようだ。刻印を通して召喚することが出来るのだが、勝手に出てくることが多々ある。
試験は学園のアリーナで行われる。学園の入口付近に立っている人から受験番号の書かれている用紙を受け取り、指示に従ってアリーナへ向かった。
僕は54番だった。
アリーナには50名ほど人が集まっていた。毎年100名ほど受けるそうだ。その中で合格する人数は50名程度である。つまり、半分は落とされるのだ。
門が閉まる音がした。時間になり、受付が終了したようだ。
アリーナの入口から若い女性が腰まで伸ばした亜麻色の髪をたなびかせて入ってきた。
「これより、魔力測定及び魔法実技の試験を開始する!私は試験管のイリーナ・サイレージだ。よろしく頼む。それでは魔力測定から開始する!1番、前に出てこい。」
「は、はい!」
試験が開始された。魔力の測定は水晶玉に手を置くことで測定することが出来るらしい。
すぐに自分の番が回ってきた。
「次、54番。前に出てこい。」
「はい。」
イマリが水晶玉に手を置いた時だった。
ビキッ!
嫌な音とともに水晶玉に亀裂が入った。
「な、なんだこの魔力量は!?」
「え?僕、何かおかしなことしました!?」
「あ、いや。大丈夫だ。換えの水晶玉を持ってくる。」
イマリが割った水晶玉を取り替え、魔力測定を再開した。
「よし、これで最後だな。次は魔法実技の試験だ。10分後に始めるので、トイレに行きたいやつは今の内に行っておけ。」
そう言いサイレージ先生はトイレに向かった。我慢してたのかな?
「イマリだよね?」
いきなり背後から声をかけられた。振り返るとそこにはアンリエッタがいた。
「アンリエッタじゃないか!久しぶりだね!」
「うん!久しぶり!」
「魔力測定はどうだった?」
「うーん...まぁまぁかなー。」
「そうなんだ。僕なんか水晶玉割っちゃってさ。」
「見てたよ。すごい魔力量だね!」
「そんなにすごい事なの?」
「凄いよ!だって、水晶玉を割った事例なんて今の学園長がここに入学した時以来なんだから!」
「そ、そうなんだ...。」
その学園長って何者なんだ?
「時間だ。これより、魔法実技の試験を行う!1番、前に出てこい。」
いつの間にか戻ってきたサイレージ先生が試験を開始していた。
「じゃあまたね!今度は学園で!」
「うん!試験頑張ろうね!」
そう言ってアンリエッタは去っていった。
魔法実技の試験はゴブリンを模した的に魔法を打ち込むというものだった。
この試験では魔法の威力、正確にコントロールできるかどうかを試しているようだ。
「次、54番。前に出てこい。」
「はい。」
「よし、始めろ。」
何を使おう...。ゴブリンの的まで約15mか。うーん...。
よし、これにしよう!
イマリは魔法を発動させた。
「蒼炎魔法参ノ型【朧車】」
イマリの手から放たれた輪の形をした蒼い炎は弧を描き的を粉砕した。
「な、なんだ今の魔法は...。見たことも聞いたこともないぞ...。」
あ、やりすぎた...。
「つ、次...。」
とりあえず、大丈夫だよね?
こうして試験が終わったのだった。
「一時間後に結果が発表となる。間違っても帰るんじゃないぞ?」
そう言い残してサイレージ先生は去っていった。
そして一時間後、アリーナに持ち込まれたボードに結果が張り出された。
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イマリ・グリンフィールド
魔力︰測定不能
実技︰SS級
この者を特待生とする。
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...。
やりすぎたぁぁぁぁぁっ!