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角が有る者達 番外編または短編集  作者: C・トベルト
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ほんわか短編小説 『Enemy of KOTATU』

ほんわかお楽しみください。

角が有る者達ほんわか短編小説

『Enemy of KOTATU』


アイ「コタツでみかん~~?」


 ゴブリンズアジトの中庭。

 アイはいつものように血染め桜の樹の根元に腰掛けながら、話をしていた。

 血染め桜・・ユウキは呑気な気持ちで話を続ける。


ユウキ(そうそう、コタツよコタツ。

 冬用アイテムのて・い・ば・ん。

 雪降る夜、寒い空を眺めながらコタツに足を入れて暖まりながらみずみずしい蜜柑をぱくり。酒・・いや麦茶でも最高ッ!

 ン~~、冬の贅沢だわー)

アイ「神秘の存在が語る贅沢じゃない気がするんだが・・ってか、それ異国の文化だろ?

 いまいち想像出来ないな・・」

ユウキ(でね?

 ゴブリンズの中の誰かさんが『コタツが欲しい』って願ってたので、自分がその願い叶えちゃいました)

アイ「・・・・はい?」


 アイの表情が固まった。

 『血染め桜』ユウキには『他人の願いを叶える』という凄い能力があるのだが、その副作用として必ず何かとんでもないしっぺ返しが待っている。

 なのにそのユウキが願いを叶えたという事は、


アイ「これからアジトに槍の雨が降る・・!?」

ユウキ(そこまで大きな不幸は訪れないよ)

アイ「じゃ、じゃあアジトが火事になったり誰かがゾンビになったり敵が襲来したり地獄の門が開いたりするわけじゃあないんだな!?」

ユウキ(キミ、たまに自分の力を変に評価してない?まあ前例ありすぎるから文句言えないけどさ)

アイ「あるんだな・・!?

 てか、誰だよそんな願いを言った奴は!」

ユウキ(悪いだけど個人情報(プライバシー)は教えられないんだよね。

 まあ、アジトの何処かを探せばコタツがあるから、そこで誰が願ったか聞いてみたらどうだい?

 願いを解除するのは『今なら』可能だから、その人に頼んで聞けばいいんだ)

アイ「それもそうだな!

 よしいくぜ!」


 アイは素早く立ち上がり、中庭を全速力で駆け抜けていく。

 妖怪桜は黙ってそれを見送った後、誰にも聞こえない会話を一人呟く。


ユウキ(・・なんてね。

 本当は一度叶えた願いは止められないんだけど・・本当の願いが願いだから、別にいいか。

 だけど本当にコタツは最高だよね。

 ぬくぬくでホカホカで、正に文明が生んだオアシスだ。あーあ、また人の体に戻れたら、夏の真ん中でも味わいたいのになあ)



▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


ゴブリンズアジト・どっか。


アイ「オオオオオ!

 コタツは何処だあああ!!」


 アイは全力で走った。

 コタツを止め、願いの副作用を止める為に全力で寒いアジトの中を走り続けた。

 本当は広いアジト全体を暖める装置もあるにはあるのだがススから『電気代高すぎるから却下』と言われてるので寒い。

 そんな中アイはふと、あちこちの部屋に飾られているモノに気付く。


アイ「ん・・?

 どの部屋にも毛糸で編んだ靴下が壁にかけられてるな。

 こんなのあったか?まあいい、今はコタツだ!」


 そうしてしばらく全力疾走を続けた後に、談話室に訪れたアイの視界に飛び込んだのは、

 大きな木で出来た円卓板と、その下にある布団のように厚い布。そしてそれに入ってるスス、シティ、ダンク、ルトー、メル、白山羊、黒山羊、ライ、ユーの姿だた。


アイ「・・・・って、なんじゃこりゃ!」

スス「あれ、リーダーじゃん。

 リーダーもコタツに入りなよ」

アイ「コタツ?

 まさかこれがコタツなのか・・!?」

スス「コタツよ。

 あれ、リーダー知らなかったの?最近誰かがコタツを購入してくれたのよ。

 しかも全員入れるぐらい大きな奴!」

ライ「アイ、お前も入れよ!

 この暖房器具、めっちゃ足元が暖まって最高だぜ!」

ダンク「まさかこの体になってから『温もり』を感じる事があるなんてな・・さすが、コタツだぜ」

黒山羊「メェ、暖かい・・」


 中身の無いダンクやアンドロイドの黒山羊まで緩い表情になっている。他のメンバーも皆だらけきった表情を晒し、こたつから出ようとしなかった。


アイ「お前ら、何を入ってる!さっさとこのコタツから出るんだ!」

ユー「パパ・・?」

アイ「いいか、このコタツは・・え?」

ルトー「ふふふ」


 アイが事情を説明しようとした瞬間、足首を機械の手に掴まれた。見ると、ルトーが機械を操作しながらニッコリ笑い、ボタンをポチりと押すと腕に引っ張られ、アイは倒れながら引きずられてしまう。


アイ「うわあああ!」

ルトー「ふふふ、新発明『アシヒッパール君一号』!お前もコタツママに入るがいい・・!」

アイ「おわああ、ルトー!やめろ!

 というかコタツママってお前何を言って・・!?」


 スポッ。


アイの下半身がコタツに入った瞬間、アイは

 天国を感じた。

 暖かい。しかしストーブのように熱風を押し付けるのではなく、下半身全身を柔らかい暖かさが包んでいく。

 まるで布団の中にいるような、優しい暖かさは先ほどまで寒い空間を全力で走り続けたアイの体をじんわりと暖めていく。そして安心感が全身を包む。まるでこの中にいれば全ての災害が一斉に訪れても安心してしまえるような心地よさが、アイの足元から頭の先まで貫いていく。

 暖かい、心地よい、安心出来る。

 この三つを一度に味わえる空間など今までの人生であっただろうかいや無い。

 もし例えるならこれは家族の温もり。安心できる大人の側で目を閉じられる子ども時代のような緩やかな優しさが全身を支配する。

 この感情をなんと伝えればいいだろうかアイはわからない。アイは物事の感想を上手く語れるほど舌が回らない。

 だがこの感情を伝えるのはたった一言で充分だ。


アイ「・・暖かい」

ルトー「でしょー!

 このコタツに入るとなんか安心できて素晴らしくて、ボクにママがいたらきっとこんな感じの温もりを感じる事が出来たんじゃないかなって思うんだよー」

アイ「ははは、言い過ぎだぜルトー。

 しかし、これがコタツかー、確かにこれはいい・・凄く良い・・」

シティ「ゴブリンズリーダーのアイさんまでそんな感じになるとはねー、恐るべしコタツだわー」

アイ「そうゆーお前もユッルい顔してんじゃねーか」


 アイが目を向ける先にいるシティは完全にコタツの魅力に囚われたのか、いつもの危険性をまるで感じられなかった。

 顎を板に乗せて顔を見せてはいるが、眠りの世界に入るのは時間の問題だろう。

 それを見てるとアイもまた心が緩やかになってきた。

 

アイ「ああ、やベーなこれ。

 なんかもーどうでも良くなってきた」

ルトー「そう言えばリーダー、なんか話があるとか言って無かったかー?」

アイ「あー?

 そう言えばそんな話をしていた気がするー。

 でもなんかどうでもいいかー。

 あったけーもんなー」


 アイは暖かさのあまり、先ほどの記憶が吹き飛んでしまっていた。

 緩やかな時間がこれから始まる・・と思ったその時だ。

 談話室の壁に設置されたブザーが鳴ったのだ。


アイ「あー、あのブザーはたしかー」

スス「えーと、あーと、あ、そうだー。

 さっき私が注文したピザが届いたんだわー」

ユー「わ、私取りに行ってくる!」


 ユーがこたつから飛び出し、急いで正面玄関口に向かっていく。それを見たアイは少し気になり、のろのろと立ち上がりながらユーの後を追いかけた。


 数分後。

 ユーは三枚、アイは八枚分のピザ箱を抱えながら皆のいる談話室に向かっていた。


ユー「た、助かった・・ありがとうパパ!」

アイ「別にいいさ。だがあいつら、まさか11枚もピザを頼むとは思わなかったぞ。

 人数分頼んだのか・・」

ユー「・・ねぇ、パパ」

アイ「なんだ?」


 ユーはいつもと違う、少し冷えた口調で問いかけていく。


ユー「パパはさ、さっき何を皆に言おうとしたの?」

アイ「ん?さっき?

 そうだなー、確かさっきはユウキからコタツの話を・・そうだ。

 あのコタツの願いを取り消さないといけないんだ!なんで俺忘れてたんだろ。

 早く皆に」


ボッ!


アイ「言わない、と・・?」


 アイはふと辺りを見渡す。

 いつの間にか自分達は談話室にいた。

 いつの間にか両手のピザ箱はなくなった。

 いつの間にか、アイはコタツの中に両足を突っ込ませていた。


アイ「!?」

ユー「え・・何これ・・!?

 なんでいつの間にコタツに・・!?」


 右隣にはユーが座っているが、同じように驚いた表情を見せていた。どうやら彼女も同じ考えのようらしい。

 そして、目の前に置かれたモノに気付く。


ユー「へ・・!?ピ、ピザ・・!?」

アイ「!?」


 アイが目線を前に向けると、いつの間にか目の前にはピザ箱が一つ、空いた状態で置かれていて、中の美味しそうなピザが姿を見せていた。

 アイは左隣に座る人物、ススに急いで声をかける。


アイ「スス!」

スス「んー?」

アイ「な、なんかおかしいぞ!

 俺、いつの間にかここに座ってる!」

スス「はあ、何言ってるのさー。

 リーダーが運んできたピザをー、皆で食べるんでしょー?何もおかしくなくなーい?」

アイ「い、いやそうじゃねえ!

 俺が言いたいのはそう言う事じゃ・・ぐっ!」


 不意に、様々な感情がアイに襲いかかる。それは気持ち良さ、心地よさ、暖かさ、安心感という、今までアイが対峙してきたものとは真逆の存在だった。

 恐怖と真逆の感情が、アイの記憶を蝕んでいく。


アイ「が、があああッ!

 な、なんだ・・何か色々、思い出せなく・・!」

ユー「うう、何・・急に、眠く・・!」

スス「リーダーもさー。

 せっかくコタツの中にいるんだからゆっくりしようよー。

 怖い事なんて、大変な事なんて、何も無いんだからさ・・」

アイ「な、に、も・・ない・・確かに・・そう、かも・・いいや!

 そんな、訳が、あ、ああああアアアアルカアアアア!!」


 アイは咆哮しながら自らの拳で顔を殴る。金属の拳をまともに喰らい、口の中に鉄の味が広がる。

 それと同時に、安心感や安らぎは消えていき、様々な事が思い出されていく。


アイ「がは、ぐ・・そうだ・・思い出した!

 ユウキの、血染め桜の力はとにかくややこしいんだ!

 あいつは願いを、知らず知らずの内庭叶える!そしてその副作用も同様に・・!」


 アイの目が、コタツの下を睨み付ける。アイはまた様々な安心感が訪れるのを感じつつも、それに呑まれないよう必死に傷で痛む口を動かしていく。


アイ「あいつの副作用は既に、始まっていたんだあああ!!」


 アイがコタツの下を覗く。

 大きなコタツの中心地点には、赤く発光する丸い球体が浮かんでいた。

 いや、球体の形をしたクモのような怪物がコタツの真ん中に陣取っていたのだ。

 良く見ると、細く赤い管が球体から伸びており、それは全員の足に絡まっている。


アイ「な、なんだこいつは!?

 コタツの中に、なぜこんな怪物がいるんだ!

 良くわからねえけど、くたばれ!『アイスボム』!」


 アイが左手の穴から出したアイスボムは真っ直ぐ丸いクモに向かっていく。

 だがクモは大口を開けて、アイスボムを飲み込んでしまった。


アイ「なに!?」

クモ「ツタタタタタ!

 このオレサマ『ツタコ』に気づくとは、やるなお前!

 だが、『不正解』だ!」

アイ「不正解・・だと!?

 お前はなんだ!一体なぜこんな事を!?」

ツタコ「オレサマは血染め桜の命によりこの妖怪コタツを貴様達に送った妖怪グモさ!

 コタツに擬態した蜘蛛の巣を張り、貴様らの命を奪う為になああ!」

アイ「く、くそ!妖怪だと!?

 まさかこんな事があるなんて・・!

 だったらてめえをここでぶっ飛ばしてやらあ!」

ツタコ「おっと待ちな!

 今のオレサマは十人の命を人質にとっている!貴様らの仲間十人の命を即座に奪えるんだ!

 それでも攻撃するか、ああん!」

アイ「ぐ・・!

 くそ、クモって奴はどいつもこいつも卑怯な奴ばっかりだ・・!」

ツタコ「ツタタタタタ!

 オレサマの蜘蛛糸に絡まれば皆ほんわかした気持ちに包まれ、記憶を少しずつ失っていくのさ!

 だが安心しな!皆の命を助ける方法が無いわけじゃない。

 上を見ろ。コタツの上を見るんだ。

 そこにはお前達が伸ばすべき蜘蛛の糸が垂れ下がっているぜ・・!」

アイ「何?」


 アイが頭を上げると、そこにはピザ以外にも、コタツの板から今にもこぼれ落ちそうな大量の果物やワイン、ジュース、鍋、ラーメンなどの料理や飲み物が並んでいた。


アイ「な、なんだ・・これは・・!?」

ツタコ「今からお前にたった一つの謎かけをする。

 それを答えられなければ、オレサマはお前達の命を屠るが、

 答えられればオレサマはお前達を助けよう」

アイ「問いかけ、だと・・!?」

ツタコ「そうだ、とっても単純な問いかけさ。

 『オレサマが今欲しい飲食物はなーんだ?』

 この問いかけに間違えていいのは十回だけだが、今お前が『アイスボム』を食べさせたからあと九回に減った!

 更に一回間違える毎に・・!」

スス「あれー?

 リーダー、食べないのー?なら私が食べちゃいまーす!

 バクバク!」

アイ「え、スス・・!?」


 急に、ススがアイの目の前のピザを食べ始める。熱々のピザを素手で貪り始める。食べ残しがあちこちにこぼれても一切構わず、無心で食事を取り続けていた。


アイ「や、やめろスス!

 お前最近ダイエットしたいって言ってたじゃないか!食べるのをやめろおお!」

スス「バクバク!モグモグ!バクバク!モグモグ!」


ツタコ「お前達の仲間がこのコタツ板の食べモノを食べたくなっちまう!

 もしそこでオレサマが食べたいモノを食べたらその時点でゲーム・オーバー!

 オレサマはお前達の命をいただいちゃいまーす!」

アイ「く、くそ!やめろスス、やめ・・があ!」


 コタツから立ち上がろうとしたアイだか、足に赤い糸が絡まるせいで身動きが取れない。そんな事をしている間にもススはピザ一枚を丸々食べてしまう。


ツタコ「ツタタタタタ!

 無駄だ!そいつはもうお前の話を聞かないし、幾ら殴っても止まらない!

 助けたければ、早く答えるんだ・・。

 オレサマが欲しいモノをよお!」

アイ「ぐ、そ、そんなの分かるわけ・・」


「待って!」


 突然聞こえた声にアイが振り返ると、ユーがアイを見ていた。力強く自分の手を握ったのか、掌から血が出ている。


アイ「ユー、お前手に怪我を!」

ユー「私は大丈夫よ!

 それより、一緒に考えよう!話しは聞こえてたわ!一緒に問題を解いて、あのクモ野郎のお腹を力一杯ぶん殴りましょうよ!」

アイ「・・ああ、そうだな!

 おいクモ野郎、今からてめえの挑戦を受けてやる!

 お前は今から殴られる覚悟をするんだな!」

ツタコ「ああ、期待しているよ。

 君達の命の味が、どれほど美味なのかをな・・」


後編に、続く!


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