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角が有る者達 番外編または短編集  作者: C・トベルト
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無くしたと思ったアレが出てきた日~築き~

~なくしたのは腕だと思っていた。

 なのに本当になくしたのは、仲間だった~


アイ「・・・ああ、どうすればいいんだ一体・・・」


 俺は何をすればいいか分からず、中庭の枯れた木の近くから離れる事が出来なくなっていた。

 今までこの場に来て、ユーキに話しかけてみれば、必ずユーキは返事をしてくれた。

 だけど今は何度も何度も声をかけてもダメだった。

 枯れ木はやはり、枯れ木のままだった。


アイ「ユーキ・・・!

 ち、ここに死ぬまでしがみつくわけにもいかない!

 何か行動を起こさなきゃ・・・何処かへいって!何かやって!何でもいいから変えるんだ!

 よし、先ずはアジトから出よう!

 買い出ししているスス達に逢えるかもしれない!ふんがーっ!」


 ふんがー!ふんがーっ。ふんが。


 叫んだ声が、中庭に反響しこだまになって返ってくる。

 そして静寂がまた世界を支配する前に、俺は中庭を抜け出していた。


▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


アイ「おらあ、開けやがれ扉ァ!」

 

 アイが思い切り扉を蹴破ろうとするが、扉はびくともしない。

 力に力を加えても、扉はびくともしなかった。


アイ「ちくしょう、なんだこの扉!?

 壁に扉の絵がかかれてるみたいじゃねえか!次いくぞ次!」


△  ▼  △  ▼  △  ▼  △


~自室~


アイ「おらあ、窓ならどうだあ!」

 

 俺は窓を蹴飛ばすが、やはりなんの意味もなかった。窓は全くびくともしないし、窓に何があるかも分からない。


アイ「ち、ここもダメか。

 なら床を掘るか。昔から脱走といえば土の下と相場が決まってるんだ!」


 スコップは確か中庭の物置にあった筈だ。急いで取りにいかないと!

 俺は大急ぎで走り出した。

 次はうまくいく筈だ、次は大丈夫だと自分に言い聞かせながら・・・。

 

▼  △  ▼  △  ▼  △



 ~食堂~

 

アイ「ダメだ・・」

 

 あの後、このアジトを出るために様々な方法を試した。

 地下から脱出、中庭から外までジャンプ、部屋を荒らしまくる・・・思い付く限りの方法を試した。

 だけど、何も変わらない。

 俺は相変わらず、このアジトに閉じ込められたままだった。

 

アイ「くそ、もうダメなのか・・?

 このまま一生アジトもどきの中で生活するしかないのか!?」


 俺は悔しさのまま足をバタつかせるが、何も変わらないのは知っていた。

 そして同時に、ふと思ってしまった。


アイ「もし俺がこのまま戻れなかったら、皆はどうするんだろう。俺を助けにくるか?いや、あいつらなら・・!」



△  ▼  △  ▼  △  ▼  △


スス「これから私がリーダーになるわ!

 よろしくね皆!」

シティ「よろしく新リーダー!

 あんなアフォとは違う、いかした犯罪を期待しているわ!」

ダンク「そうだな!あんなアホォとは違う、賢い犯罪を期待しているぜ!」

ルトー「なんなりと命令してくださいスス様!あのAHOと違い僕はどんな命令でも忠実にこなすよ!」

スス「ふふん、任せなさい。

 この私がリーダーになった以上、あんなドドドアホな前リーダーとは全然違う知的で素晴らしい犯罪を見せてやるわ!」

部下達『イェーイ!!』




△  ▼  △  ▼  △  ▼  △




アイ「ダメだ助けてくれるわけねー!!」


 俺はなんてアホなんだ、仲間が助けに来るわけが無い。さっさと見捨てて新しい犯罪グループ造るに決まってる。

 俺はずっとここで一人ボッチで生きてく事になるのか・・・なんて考えた所で、素朴な疑問に気付く。


アイ「待てよ?

 そうなったらユーはどうなるんだ?

 ユーを育ててくれる奴がいなくなるじゃないか!

 いや、いくらあいつらでもユーを見捨てる事まではしない筈だ。

 となると、だれがユーを育てるかが問題だが・・・」


 俺はいつの間にかユーを誰が育てるのか、気になって仕方なくなっていた。

 俺が居なくなった世界で、ユーを育ててくれる奴と言えば・・・。


アイ「・・・ススか?

 ユー、ススには結構なついていたからな。料理上手には育ててくれる筈だが・・。

 いや、あのドしっかりがそれだけで満足するわけがない。

 ススがユーを育てたら・・」




△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △




スス「さあユーちゃん!

 塾にいくザマスよ!」

ユー「す、ススママ!今日もいかなきゃダメ?毎日毎日塾で疲れたよ!」

スス「だめザマス!

 ユーちゃんは将来有名大学を出て有名会社に就職して有名な人と結婚するザマス!

 その為にはもっと勉強しもっと苦労しなきゃだめザマーース!」

ユー「ひーーん、パパー!」



▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼



ドアホ「ゆ、ユーーーー!

 おのれススめえええ!俺の娘になんて事を・・・許さん!

 でも賢いユーはちょっとみたい!テストで百点とってどや顔するユーちゃんみてみたいなパパはー!」


 く、塾に通わせる事を考えるべきだったか・・・俺はあんまり学が無いから、そこら辺あまり考えてなかった。


アイ「まてよ。学があるといえば、うちで一番学があるのはダンクだ。

 あいつなら塾なんかいかせずとも上手くユーに勉強を教えられる。

 じゃあ、ユーを育てられるのはダンクか?

 もしダンクがユーを育てたら・・」



▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △



ダンク「ユー、今日も勉強を始めるぞ」

ユー「はいパパ」

ダンク「ユー、今日のテストも百点だったんだろ?」

ユー「はいパパ」

ダンク「よろしい、ならば。

 今日から教えるのは魔術だ。お前も魔術師になり更なる世界の真実に到達するのだ」

ユー「はいパパ」



△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △



アホォ「あ、あ、味気ねーー!

 なんだその世界観!?味気ないにも程があるぞ!?

 ユーが「はいパパ」以外に何も言ってねーじゃねーか!却下だ却下!

 あいつにユーは絶対わたさねー!」


 学がありすぎるのも考えものだ。

 やはり外で遊ぶ事も考えなければ。


アイ「それなら、シティか?

 シティならユーと一緒に遊べるから、コミュニケーションについては問題ない筈だ。

 だが・・・。

 もし、シティがユーを育てたら・・・」



△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ 




シティ「アハハハハハハハ!

 ユー!今日はこの町をぶっ壊すわよ!」

ユー「はいママ!

 人間があわてふためいて私達に平伏する姿を見るのは最高よね!」

シティ「ユーちゃん分かってきたじゃなーい!

 そうよ、世界は私のおもちゃ箱!

 私が毎日飽きずに遊べる為に存在するの!ユー、あなたもここで好きなだけ遊びなさい!私が許すわ!」

シティ「うん!

 さあ怯え震えろニンゲン共!

 私こそ最高最悪の怪物だよ!」



△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ 



アフォ「・・・・・・何故だろう。

 このユーに違和感を感じないんだよなあ。あいつなら喜んでそんな事やりそうな気がして・・・。

 いや、待て待て待て。それ以前に世界をおもちゃ箱にしちゃ駄目だろ。

 世界は俺の遊び場なんだから。

 しかしシティもダメだとなると、

 後に残ってるのはもうルトー位しかいないんじゃないか?

 学は有る。コミュニケーションはある。面倒見がいい。細かい所に気付く。

 意外に、一番頼れる存在なのかも・・・?

 もしルトーがユーを育てたら・・・」



△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △




ルトー「さあユーちゃん、今日はどこに買い物に行く?(ドレスを揺らしながら)」

ユー「今日からデパートがいいな、パマ!(ゴスロリファッションに身を包みながら)」

ルトー「良いね、最近新しい工具とかお化粧品がほしかったんだ!

 買い物の為の化粧したら、行こうか!」

ユー「うん、楽しみだね、パマ!」



▼  △  ▼  △  ▼  △



AHO「・・・・・・。

 言いたい事は一杯あるぞ。

 だがあえて選ぶなら・・。

 パマってなんだ!?パパ+ママ=パマって意味か!?

 いやそれ以前によく考えたらあいつ、歳が近いじゃねえか!

 パパと子どもの関係になるには早すぎるわ!ちくしょう、だれだあいつが一番まともだと言ったの!

 俺だよアホおおお!!」


 俺は食堂でゴロゴロと転がり回っていしまいながら悲鳴をあげる。

 だがいくら妄想しようが、何を考えようが、状況が変わる訳じゃない。


 俺の腕は戻らないし、誰も姿を現さない。俺は壁に寄りかかり、小さくため息をついた。


アイ「ああくそ、頭使いすぎて疲れてきた・・・ススは今日なんの飯を作るんだ?シティは何を破壊したんだ?ルトーはまた工作してるんだろうな。

 ダンクは一体どんな新しい魔術を完成して・・・完成?」


 無意識に口に出た言葉に、小さな疑問がわく。新しい魔術を完成。

 この言葉が妙に気になり、もう一度記憶を思い返す。そう言えば会議室で、ダンクが新型魔術を完成したとか何とか言わなかったか?

 それに気付いた瞬間、俺の頭の中に花火のように鮮明に記憶が浮かび出てくる。

 それは今まで見た事ない、新しい記憶だった。


アイ「あ、ああああ、そうだ!

 おっっもいだしたあああああ!」


 それは、トレーニングを終えて、ダンクの部屋に行った時の記憶だった。



▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


~ダンクの部屋~


アイ「記憶箱?」

ダンク「ああ」


 俺の目の前にあるのは、小さな木箱だった。一見すると蓋が見つからない。

 俺はそれをまじまじと見ながら訊ねる。


アイ「この箱が、お前の新しい魔術なのか?」

ダンク「そうさ。

 この記憶箱には対象の記憶を複写する事が出来る。そして好きな時にその記憶を見る事が出来るんだ。

 新しい日記代わりになるし、機密情報を隠す事が出来る。

 どうだい大将?こいつを持ち歩く気はないか?」

アイ「確かにいい魔術だとは思うが、思い出すにはどうすればいいんだ?」

ダンク「呪文を唱えればいい。

 『クァントゥス』さ。アタゴリアン語で『思い出せ』って意味だ」

アイ「ふうん。記憶を複写するにはどうすればいい?」

ダンク「記憶箱を額に当てて、思い出したい記憶を思い浮かべばいい。

 それで後は記憶箱が勝手に記憶を複写してくれる」

アイ「この前、俺の頭に箱を乗せてたのは記憶を複写する為か」

ダンク「リーダー、早速試してみるかい?」

アイ「そうだな。えーと呪文は・・。

 『クーントス』!」

ダンク「ち、違う!

 『クァントゥス』だ!そんな風に間違えたら・・・!」


 焦るダンクに俺は目を潜めるが、もう遅かった。箱から突然現れた青白い手が俺の頭を掴む。


アイ「お?おおおわああああ!?」

ダンク「ああ、しまった!

 術式が失敗してしまった!」

アイ「わああああ!だ、ダンク!

 助けてくれええ!」


 ずるり、と腕に体ごと引っ張られる。

 そして腕の無い自分が自分の体から出てきた。


アイ『わああああ!?』

ダンク「魂を引っ張られてるのか!?

 く、リーダー!よく聞け!

 助かりたければもう一度俺の部屋に来るんだ!必ず来いよ!」


 ダンクの言葉を最後に、俺の意識はぷつりと切れた。そこで記憶が途切れたからだ。だがそれは、俺の忘れていた全ての記憶の糸を築き上げるには充分な記憶だった。


アイ「そうだ・・・!

 俺、あの後一度ダンクの部屋に行ったんだ!だけどそこで脱出方法に失敗し、記憶をバラバラにされた上でまた中庭に逆戻りされたんだ!」


 俺は立ち上がり、急いで食堂を飛び出す。目指す先は当然、ダンクの部屋だ。


アイ「ダンクの部屋には試練があった!

 2つの鍵を選び、どちらかを選べば出る事が出来る。だけど失敗したら記憶を失いやり直される!

 そして前の俺は、失敗してしまったんだ!そりゃそうさ、だってあそこには・・・!」


 走る、走る、走り続ける。

 ダンクの部屋に向かい、真っ直ぐ走り抜ける。

 そしてダンクの部屋の前に立った時、俺は一息ついてから扉を開けた。


 そこには、俺がずっとずっと探し続けていたモノがあった。


 銀色の機械の右腕と、綺麗な右腕。


アイ「あった、俺の腕!」

『ようこそ、記憶回廊の出口へ』


 ふと、何処かから声が聞こえてくる。

 それが誰の声かは知っていた。

 だから俺はおとなしく聞かず、鼻を鳴らして挑発する。


アイ「ふん、偉そうな口調で語りやがって!もうお前の企みは知ってるんだよ!

 俺をこの中に閉じ込め、記憶を取り出し続ける事で永遠にこの空間を維持し続けるのが目的なんだろ!」

『そうだ。

 我はこの記憶回廊そのもの。或いはお前の一部と言っても過言ではない。確かにそういった理由もなくはないが・・・。

 この空間の主はあくまでお前だ。

だから出たければ自由に出ればいい。

 お前に課せられた試練、それはここの偽物の鍵を壊す事。

 どちらかを壊せばお前は出られる。

 それをしなければお前はまた記憶を失い、空間の中心地に逆戻りされるだけだ』


 『声』は口調を崩し、少し砕けた口調で話を続ける。だがその説明はもう聞いている。答えが何かも知っている。

 後はそれをすればいいだけだ。


 俺は銀の右腕を口で噛み、綺麗な右腕に近付いた。


アイ「・・・」

『そうだ、それが正解だ。

 この試練の答えはその右腕を破壊すればいい。

 だがいいのか?

 それはお前がこの世で最も欲しいモノなんだろう?』

アイ「・・・!」


 そうだ、そうなんだ。

 こんな血肉の詰まった、なんの呪いも因縁もない、ただの右腕が、俺が一番欲しいモノ・・・なんて、認めたくなかった。

 認められないから、違うと思い込み、俺は前回失敗してしまったんだ。

 俺はこの右腕なんかいらない。

 ただそれだけが、なぜ認められない?

 迷う俺の頭に、あの声が響き渡る。


『なあ、一度は記憶を失い、昔を思い出しながら探索するのは楽しかっただろう?

 もし、ここでもう一度間違えてしまえばまたお前はそれを味わう事が出来る。

 今度は楽しかった記憶だけをかき集めるようにすればいい。

 恐ろしい現実なんて忘れてしまえ。

 下らない未来なんて捨ててしまえ。

 ここはお前の楽園、お前の揺りかごだ。

 誰もお前の罪を咎める奴はいない』


 声が楽しそうに俺の頭の中に響き渡る。

 そうだ、そうさ。

 今はつまらない事だらけだ。

 ユーの父親になっても、どう接すればいいか分からない。

 ゴブリンズのリーダーらしい事なんて、一つも出来ていない。

 俺があそこにいなくても、誰も何も変わらないだろう。


『さあ、その腕を置け・・・。

 それで全て終わりだ。

 そうすれば、お前には仕事が与えられる。永遠にこの箱庭を築き上げ続けるのだ。そして箱庭の楽しさを全身で感じるのだ。ただそれだけの仕事だよ』


 声は俺の頭の中を揺らし、心を溶かしていく。

 そうだ。前の俺はここで折れたんだ。

 ここで折れたがゆえに、記憶を失い空間を作り上げてしまった。

 今の俺も、その誘いに抗える自信がない。もしただの右腕があったら、ただそれだけあったなら。


 俺はコンピューターを弄る事が出来たかもしれない。

 俺は思う存分芸術に人生を費やしたかもしれない。

 俺は最強の座を手にし、誰からも恐れられ敬われる存在になれたかもしれない。

 俺は助けたい人を救うことが出来たかもしれない。

 俺は愛する人の温もりを指先から知る事が出来たかもしれない。

 その気持ちに、前の俺は潰れてしまった。


アイ「・・・」


 だけど、様々な記憶を見てきた俺は、俺のいない世界を見た俺は、そんな事もう考えない。

 俺は機械の右腕を振り上げる。

 その動作で俺が何をするか察したのか、声は小さく呟く。


『そうか、お前はこの箱庭から出るのか。

 残念だ、お前程の輝く記憶があればこの箱庭をもっと大きく出来たのにな』


 その言葉。

 その言葉を否定するために、俺は一度口から腕を捨てる。そして、叫んだ。


アイ「勘違いするな。

 俺は欲張りなんだ。欲しいものは欲しい。右腕も、世界も、何もかも欲しくて欲しくて仕方ない。

 だから前の俺はこれを壊せなかった。

 お前の存在を何も知らずに壊すのは、あまりに勿体無いからな」

『なに?』

アイ「記憶回廊。

 お前の仕掛けのお陰で俺は新しい事に気付けた。

 俺はお前もまた、必要だと考えている。

 また今度、今度は肴を用意して会おうじゃないか」


 その言葉。

 その言葉を聞いて、声は小さく笑った。

 その笑い声を聞きながら俺は腕を拾い、過去の遺物を、破壊した。



△  ▼  △  ▼  △  ▼  △



~ダンクの部屋~


ユー「パパー!パパー!」

シティ「頑張りなさいよ中身空っぽミイラ!早くしないとユーちゃん泣くわよ!」


 ベッドで寝ているアイに、ユーは必死に声を上げて叫んでいる。

 そのそばではいつものメンバーが固唾を飲んでアイを見守っていた。


スス「アイ!

 お願い・・・目を覚まして!あなたまでいなくなったら、私・・、私!」

ルトー「スス、ユーちゃん、落ち着いて!

 バカリーダーは必ず戻ってくるから!

 ダンクだって頑張ってるよ!

 だから落ち着いて!」

メル「リーダーさん・・」


 それを見て、シティはイライラをダンクにぶつける。

 ダンクは小さな薬に魔術を幾つもかけていた。


シティ「ダンク!あんた天才なんでしょ何とかしなさいよ!」

ダンク「待て待て!

 もう少しで万能薬が完成する!

 だがこの工程を失敗したら爆発するから少し黙って・・・」

アイ「うおおおおおお!!

 目覚めたぞおおおおおお!!」

ユー「ぱ、パパー!!」


 皆が騒ぐなか、アイが大きく声を上げる。それを見てユーはアイに抱きつき、ススはルトーに抱きつき、メルはほっと一息ついた。

 そしてシティはおもいっきり騒ぐ。


シティ「やったあああああああ!!」

ダンク「え、何、リーダー目が覚めたのか!?」


 ダンクも思わず魔術を中断してしまい、魔術が途中で止まった為に薬が発光する。


全員「あ」


 と言った次の瞬間には、薬が大爆発した。



ボオオオオオオオオオオン!!



△  ▼  △  ▼  △  ▼  △



~食堂~


シティ「爆発オチなんてサイテー!」

ダンク「はい、今回は反省してます。全部俺が悪かったです」

シティ「みんなにもごめんなさいしなさい!」

ダンク「・・・ごめんなさい」


 騒ぐ二人の前に、白山羊が運んだ夕食が並べられた。

 どうやら今日はユーが作った料理らしく、いつもと違いたどたどしい作りのカレーライスが運ばれている。

 香辛料たっぷり激辛カレーで、食べた人みんな辛い~と叫んでいたが、俺は別に気にしなかった。

 だがユーは少し気にしたらしく、小さく訊ねてくる。


ユー「その、パパ、ごめんね?

 私、あまり料理うまくなくて・・・」

 

 俺は何も言わず、隣で座るユーの頭を小さく撫でる。

その銀の腕に何の感触も伝わってこないが、恥ずかしいのと嬉しいのだという気持ちは、顔を見なくても分かった。

 

アイ「別にいいさ。

 これはお前が初めて作ってくれた料理の味だ。一生覚えておくぜ」

ユー「う、うー・・・。

 そ、そんなの恥ずかしい、よ。

 私、もっと美味しく料理作るからね、今よりもっと美味しい料理作るから!

 その時まで待っててよ・・・」


 ユーの言葉は力が無い。

 頭を擦られてるのが恥ずかしくて、嬉しくて、あまり強く言えないようだ。

 それを見て、俺は小さく小さく思う。


アイ(ああ、楽しみにしてるぜ、ユー。

 新しい現在が築き上げられる日が来るのを、そして)


 俺は手を離し、右腕のスイッチを押す。

 機械の右腕は小物入れになっていて、そこには俺の宝物が入っていた。

 ユーキが作ってくれた、鬼のぬいぐるみである。


アイ(いつか、この中にお前が作ってくれたものを入れられる日が来るのを・・・な)


 俺はそれを言わず、ぬいぐるみを取り出しユーの前に置く。

 ユーは年相応の少女の笑顔を見せながら、ぬいぐるみをぎゅっと抱き締めた。





  終わり

 



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