表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
角が有る者達 番外編または短編集  作者: C・トベルト
43/49

隠れ鬼のデートその参

~あらすじ~


映画『君の名が』より1シーン


「疲れたな・・」

 俺は世界をまたにかける同人作家。俺の作る妄想は世界中のオタクに夢と希望を与え続けてきた。昔はそば職人だったがそれだけでは大勢の人に夢と希望を分け与えることは出来ないと気づき、

 では世界中の人に夢と希望を与えられる人は何なんだろうと考えながら模索し続けてきた。

 漁師やらアイドルやら政治家やら何でもやってきたが、何一つ成果は得られなかった。

 世界中の人に夢と希望を与える事は不可能ではないかと疑い始め、それが正しいか間違いか確かめるために同人作家として自分の考えを基にした物語をかきはじめたが、

 これは沢山の人に認められ、理解してくれた。今ではこの物語の続きを読むのが楽しみにしているという人ばかりで、俺も少しそれに甘えたくなる。

 だけど、どれだけ人気になってもどれだけ沢山の人に夢と希望を分け与えることができても、君がいないと何の意味もない。

 君の名が何処かにないかと1枚1枚ハガキを見直すが、君の名が何処にもない。

 何処にいるんだろう何処にいるんだろうと女々しく思いながら自分の妄想を文章にしていると、君の声が聞こえてきた。

 それは僕の頭の中からではなく、テレビから聞こえてきた。剣を片手に銀行を破壊しながら、彼女は高笑いしている。

「ホーッホッホッホッ!

 世界に夢と希望だけが蔓延するなんてつまらないわ!

 恐怖しなさい!絶望しなさい!この私を恐れなさい!この剣に震えなさい!」

 それを聞いた時、俺は全てを理解した。

彼女が何故そんな事しているのか、彼女が何を求めているのかを。

 俺は小さい頃彼女に言った。

「世界中を夢と希望で満たしたいんだ」

幼い彼女はこう答えた。

「それだけじゃつまらないわよ。見てなさい、いつか貴方に夢と希望以外の凄いものを見せてあげる」

そして今、彼女は恐怖と絶望で世界を満たそうとしている。

 そうはさせない。俺の考えが正しい事を彼女に伝えなきゃ。たとえ彼女の力が強くても彼女の剣が強くても、この気持ちを届かせなくては。疲れてなんかいられない!

 そう思った俺は洋服棚を開ける。そこにはヒーロースーツが入っていた。俺はヒーローになる。ヒーローになって、彼女の考えに正面から応える。

 そして戦いが終わった時、俺はちゃんと彼女に打ち明けるんだ。

俺は今まで一瞬たりとも、君の名が頭の中から消えた事はないんだって。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


~フードコートエリア~


 平日の昼間という事で子連れの家族や休日を楽しむ人達が食べる憩いの場で、

 私達は死んでいた。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


 いや、正確には死にそうになるほど疲れたんだ。なんせ逃げまくるターゲットを追いかけてデパート内を何周もしたんだもの。

あんなマラソン、この先絶対やる事はないでしょうね。

 ルトー君はぐったりして机にふせっている。彼もあれ程走った事はそうないのだろう。


「・・・・・・」

「・・・・大丈夫?」


 ルトー君はそれに答える代わりに、レーダーを私に見せてくれた。ターゲットの位置を示す赤い点は、私のすぐ後ろの位置で輝いている。


「な、すぐ後ろにっ!?」

「静かにして。

 向こうに気取られたら危険だ」


 机に顔を伏せたまま注意され、私は思わず頭を下げる。


「あ、ごめん・・私、食事を取ってくるね、ルトー君は何にする?」

「んー・・軽いやつでいいかな。クレープがいいや」

「私も同じの食べるね、それじゃ!」


 私はそう言って立ち上がり、小さな物を適当な場所に隠しながらクレープ屋に向かっていく。

 その後二人で食べたクレープはとても美味しかった。良かった、まだデートを続けられる。

 私は少しだけターゲットに感謝しながら、クレープを口にする。甘い味が口の中に広がっていった。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


~ボーリング場~


 平日の昼間のボーリング場には人が少ない、というのはどうやら私の偏見だったらしい。沢山の人混みで、誰が誰だか分からない程だ。しかもあちこちでざわざわと騒いでいる為声も聞こえにくくなっている。

 自然と私達の会話も大きくなってしまう。


「ルトー君!ほんとーにこの中にいるのー!」

「ターゲットはこの中にいるんだー!

 早くこっちへこーい!」

「わかったー!きゃ!?」


 不意に、大きな人達の壁に阻まれ先に進めなくなってしまう。更に人混みに押されどんどんボーリング場から離れてしまいそうになる。私も抵抗するけど、数が多すぎて動けない。

 思わず彼の名を叫んでしまった。


「ルトー君!助けて!」


 その瞬間、誰かの大きな手が私の肩を掴み、ぐいと引き寄せる。私はそれに抵抗できずに引っ張られ、気付けば人混みの中から抜け出していた。

 呆気にとられる私の側に、ルトー君が立っている。ルトー君は息を切らしながら私に小さく怒鳴った。


「馬鹿、何をしている!

 ここで見失ったら全部パーになる所だったじゃないか!」

「ご、ごめんなさい・・」

「まあ見つかって良かったよ。

 もう僕の傍から離れるんじゃないよ?」

「う、うん・・」


 私は視線をずらし、ルトー君の顔から手を見つめる。背の低いルトー君の手は小さい。

 

(さっき私を掴んでくれた手は、ルトー君の手だったのかな・・?

 あまりに大きくて、力強くて、とてもそうは思えなかったけど・・)

「どうした?」

「う、ううん。何でもないよ?

 あ、ターゲットがあそこにいるわ!」

「え!?」


 私が指を指すと、向こうには私がずっとマークし続けていたターゲットの少女、

 『霧ヶ峰廻亜子(きりがみねえあこ)』がボーリングをしていた。私は素早くカメラを取りだし、写真を撮る。

 他の人混みの人達も同じように写真を撮っている。

 当然だ。彼女は有名なプロのボーリング選手なのだから。

 ルトー君が小さく呟く。


「大丈夫かな、ここで上手く取材出来なかったら・・」

「だから今まで彼女の行動を調べて来たんじゃない!大丈夫よ、今回の取材も上手く行くわ!」

「そ、そうだな。わるい、少し弱気になった。さて、行くぞ!取材の始まりだ!」

「おー!」


ー私達の表向きの仕事、それは記者だ。

 ターゲットに張り込み、好きなものや興味のある物を調べて話を盛り上げる材料を探しつつ、彼等が一番輝く瞬間を狙い突撃取材を行う。

 その為に映画を見たり色々デパート内を探索し、彼女が好みそうな物品を漁ってきた。

 これで掴みは上手く行く筈。

 意気揚々とターゲットに近付いた私は突撃取材に成功。

 先ほど見た『君の名が』が話を盛り上げる材料となり取材は無事に成功した。

 私達は、任務を半分達成する事が出来たんだー


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


 ~夕方頃~


 私とルトー君は嬉しそうに取材の事を話ながらデパートの外に出て、バスが来るのを待っていた。

 後は私達がデパートを離れれば、最後の任務は達成される。

 良かった、やっとこの苦しみから解放されるんだ。私の傍でルトー君が嬉しそうに話してくる。


「取材が上手く行って良かったね!」

「ええ、これで全て上手く行くわ!

 ルトー君のお陰よ、有難う!」

「そ、そうかな?

 へへ・・」


 ルトー君は年相応の少年らしく、幼さと無邪気さを混ぜ合わせたような笑顔を私に見せてくれた。良かった、気付いてない。

 彼には私の任務の残り半分を教えてないもの、当然よね。

 後はバスが来れば、全て終わる。

 そう思っていると、目当てのバスが向こうから近づいてきた。

 やった、任務がやっと終わるんだ!

 そう思った瞬間、私に誰かが話しかけてくる。


「お嬢さん、お嬢さん」

「あ・・は、はい?」


 振り返ると、そこには赤いシャツにジーンズを着た男性が立っていた。ただ、両腕が銀色の義腕で、夕陽のせいで輝いて見える。


「さっき、映画館でこれを落としていましたよ?」

「へ・・?」


 男性の銀色の手には小さな箱が置かれている。私はそれを思わず確認してしまい、

 ハッとする。

  なんで、なんで貴方がそれを持っているんだ!私は思わずそう叫んでしまった。

 ルトー君や、他の人達が一斉にこちらを向く。安堵しきっていた私の中に一気に不安と恐怖が渦巻き始める。

 男性は不敵な笑みを浮かべながら、こう言った。


「まだまだ終わらせやしないぜ、お嬢さん?

 このゴブリンズリーダー、『氷鬼』のアイがあんたの前に立ったからにはな・・」



隠された真実編へ、続く




 

 

 


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ