特別企画短編小説 隠れ鬼のデートその3
~あらすじ~
映画「メタルパン」。
アンパン大学に通うごく普通の青年ビーン・ペースト(和訳・あんこ)はこの大学の教授であるジャムバタ・チーズ博士の陰謀によりメタルパンのヘルメットをかぶる。なんとそのヘルメットをかぶると『メタルパン』に変身し、一生脱ぐことができなくなってしまった。望んでもいないのにヒーローになってしまい途方にくれる主人公にスーツのアドバイザーであるAIジャムバタ・チーズ博士がアドバイスを送る。
『ビーン、その箱の中に緑色の液体が入った瓶があるだろう』
「あります。なんですかこれ?」
『これからの君の食糧だ。
君はこれから一生、それしか食べる事ができん』
「そんな!酷すぎる!」
博士『早くこの環境に慣れる事だ。それだけ早く楽になれる。さあ後頭部にあるハッチから液体を流し込むんだ!』
メタルパンの戦いはまだまだ続く。
~あらすじ・終わり~
~フードコートエリア~
平日の昼間という事で子連れの家族や休日を楽しむ人達が食べる憩いの場で、
僕達は死んでいた。
メル「・・・・・・・・」
ルトー「・・・・・・・・」
正確には死んでない。
心臓もちゃんと動いている。ただ、全ての感情が顔に出ていないからそう見えるだけだ。
ルトー君の目は完全に生気を失い、どこを見ているのか全く分からない。
もう一度確認するがここは平日のフードコート。まわりは休日を楽しむ人達や子連れの家族が和気あいあいと楽しみながら食事を食べる、憩いの場だ。
メル「・・・・・・」
ルトー「・・・・・・」
何故こうなったんだろう?
僕は僕に問いかける。それしかやることが思い付かない。
僕は答えは知っていると言って、僕に説明してくれた。
さっき、ルトー君が悪ノリで始めたおいかけっこのせいだ。あのおいかけっこでだだっぴろいデパートの中を何周もした上に警備員に追いかけられ、それからも逃げるまでかなり時間をかけてしまった上にターゲットの姿を完全に見失ってしまったからだ。
それに気付いた僕達は、必死にターゲットを捜索したが当然見つからず失意と絶望の中とりあえずこの座席に座ったわけだ。
ははははは、笑えない。
メル「・・・・・・」
ルトー「・・・・・・」
気まずい沈黙が僕達を包み込む。
すぐ後ろの座席では子連れのお母さん達がホホホと笑いながら雑談し、子ども達が座席であばれている。
とてもとても平和な日常だった。
ルトー「あの、さ・・・・」
不意にルトー君が僕に声をかけてくる。
なんだろう、謝ってくるのかな?
ルトー「お前はゴスロリよりセーラー服の方が良かったのか?」
メル「はぁっ!?」
ルトー「冗談だ。
お前があんまり死んだ目をしたんでな。
少し元気付けてやっただけだよ」
メル「誰のせいでこんな事になったと・・」
いい加減殺意が湧きはじめてきた僕の目の前に、小さな機械が突きつけられる。
緑色の画面の中には赤い点がついている。
ルトー「レーダーだよ。
お前とおいかけっこする前に発信器をターゲットにこっそりつけたんだ。
これで、ターゲットが何処にいても安心だな」
メル「それで僕の怒りが収まると思わな」ルトー「すぐ近くにいる」
僕は一瞬で平常心を取り戻し、何気ない顔をしながら目だけをギョロギョロと動かす。
だが、ターゲットの姿は何処にも見えない。
メル「い、いないじゃん」
ルトー「お前のすぐ後ろの席だからな、見えなくて当然だ」
メル「えぇっ!?」
ルトー君はいつのまにか手元にあるメロンサイダーをストローくわえて飲み始める。
余裕綽々なその態度に僕は僅かな憤怒を覚え、それだとターゲットにこちらの存在がバレてしまう危険性の方が遥かに高いため、
結局として僕達は静かに食事をとるしかなかった。
メル(でも、お腹の中に入っているのはご飯だけじゃないぞ、ルトー君!)
ルトー「このハンバーガー美味しいなぁ」
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~ボーリング場『GORO-GORO』~
平日の午後近くにボーリングで遊ぶ人はあまりいない、というのは僕の偏見だったらしい。そこには沢山の人が賑わい、皆楽しそうに笑いながらボーリングを楽しんでいる。
ルトー「レーダーによるとターゲットはここにいる筈なんだけどな」
メル「人が多すぎて誰が誰だか分からないね・・どうする?いっそここを出て終わるのを待つ?」
ルトー「そうだな、ここで何かをするとは思えないし。
・・・・でも、ボーリング場か」
メル「どうしたの?」
ルトー「・・・・」
ルトー君は答えてくれなかった。
ふと、僕はルトー君の顔を見返す。
いつものように嫌みを込めた顔ではなく、その時だけ僅かに懐かしそうな顔を見せていた。僕は不思議に思い、もう一度聞こうと思った。
だが、それを言う前にルトー君はいつものルトー君に戻り、「なんでもない」と呟くと素早く人混みの中に紛れその姿が見えなくなった。おそらくもうボーリング場の外に出たのだろうと予測し、僕も人混みを押し退けて外に出てみると・・・・。
そこに、ルトー君の姿は何処にもなかった。ただのデパートの日常だけが、そこにあった。
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探した。
沢山沢山、デパート内を探し回った。
だけど、見つからなかった。
『隠れ鬼』の名前を持つ彼らしく、姿は何処にも見えなくなっていたのだ。
彼だけではなく、ターゲットの姿も見えなくなっていた。ターゲットは何処にいるんだろうか、分からない。
メールも携帯も何回もかけたが、反応はない。こうなると僕はもうルトー君達を探す事に夢中になって、デパート中の隅から隅までくまなく、慎重に慎重を重ねてその上で何度も探し回るのだが、やはり見つからなかった。
気づけば僕は、デパートの外に出ていた。
西の空に太陽が沈み、夕陽がオレンジ色に街を染める。
ふと、僕は時間が気になって時計を確認する。
時計は、8時55分で止まっていた。
メル「あれ?」
おかしい、この時間は朝の待ち合わせの時刻じゃないか。朝に見た時刻が何故今もまだ動いていないんだろう。
そういえば僕は朝から今まで一度も時計を確認していない。ターゲットを追いかけることと、ルトー君と一緒にいる事で自然と時計を確認していなかったんだ。
「よぉ、メル。
ここにいたんだな」
僕が振り返ると、そこにはルトー君がいた。朝と同じ女装した彼のような誰かは、小悪魔のように微笑みこう言った。
「実はさ、偽者は僕の方なんだよね」
メル「る、ルトー・・君?」
「さよなら」
さよなら、そう言った瞬間に世界はがらがらと崩れ始め全て暗闇に覆われていく。
彼の名を叫びながら僕が手を伸ばした時ーーー。
ーーー僕は、ここが自分の部屋である事を気がついた。僕はベッドに寝ていてパジャマを着ている事に気付いた。
メル「・・・・え?
あれ?どういう、事・・?」
僕は腕に巻かれたプラスチックの腕時計を確認する。
時刻は7時25分を指していた。
ああ、そうか。僕は夢を見ていたんだ。
なんだ、今までのはただの夢なんだ。
そう思った僕はいや違うと思い直して何回か考えた後、
ようやく真実に気づいた。
メル「そ、そうだ・・そういう事だったんだ!」
僕はーーーーーー私だったんだ!
~男の子バージョンへ、続く~




