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角が有る者達 番外編または短編集  作者: C・トベルト
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【短編小説】悲劇を楽しめ!第三話

「いや、来てるよ君。

 だから起きたまえ」


不意に、座り込むシティの後ろから、男性の声が聞こえた。

全員が振り返ると、そこには胸まで届く無精髭を生やした男性が立っていた。

赤いタキシードを着飾り、ニヤリと見ている。

ススはハッとした。


スス「無精髭に赤いタキシード・・まさか、あなたが『バッドエンド・サンタクロース』?」

「いかにもそうだよ、君。

 私がバッドエンド・サンタクロースのリーダー、ばんバングだ。」


男は、いやバングはニヤリと笑って答えた。

そして、ススとシティを舐め回すような目で見つめた後、


「そういう君達も、名高いゴブリンズのメンバー、ススにシティだろう?

おおかたここにいる不正企業を狙っているのだろうが、残念だったな。」

「どういう意味?」


間髪いれずにススは訪ねる。

こいつのペースで話を進ませたくない。


「こういう意味だよ、君。」


バングは楽しそうに笑い、指をパチンと鳴らした。


すると突然、ススの周りに無数のトラバサミが現れた。

トラバサミとは獣を捕まえるための罠である。

円形の鉄の輪の上部がギザギザの刃になっており、輪の中心にあるスイッチを踏むと輪が勢い良く締まり、獣の脚を夾むのだ。

それが床一面に設置されている。

これではススは一歩も動けない。

いやススだけではない、三人の周りにも無数のトラバサミが設置されている。


「!?」

「何だこれは?」

「・・」


狼狽する二人を嘲笑しながら

バングは答えた。

シティは座ったままだが、目がすっと細くなっていた。


「なにって君。

 悲劇の引き金にきまってるじゃないか?」


ススが再度辺りを見回すと、無数のトラバサミ。

いや違う。

パーティー会場一面の床に、トラバサミが設置されているのだ。

・・会場客が脚を踏み入れればトラバサミに食いちぎられる・・


ケシゴはさっと腰に手を回し、銃を取り出すと天井向けてすぐに発砲した。


パァン!!


「うわ!」「きゃ!」「銃声!?」


パーティー会場の客は全員しゃがみ込む。

そしてしゃがんだ彼等は気付いた。


「な、何だコレ?」「罠だ、トラバサミだ!」

「いやあああ、何なのこれは!!」

「ま、待て慌てたら危険だ!じっとするんだ!」


ざわざわとざわめきが起こり、小さな悲鳴とそれを諫める声がパーティー会場を飛び交う。

バングは顔をしかめながらケシゴを睨み付けた。


「ああ、何て事だ!

 悲鳴とパニックと血飛沫が飛び交う悲劇が、見れなくなったではないか!!

 君、一体何者だ!?」

「俺は警察のケシゴだ。

そのまま手を上げて動くな。能力も使うな。」


ケシゴは手に持った銃をすぐにバングに突き付ける。

バングはさっと手を上げ、降参のポーズを取る。

諦めたか、何かを狙っているのか?

ケシゴは慎重に足でトラバサミを払いながら一歩ずつ近付く。

そして耳に付けた通信機のスイッチを押す。


「ペンシ、聞こえるか?」

『はい。』

「今テロリストを一人捕まえる。お前は他のメンバーを探すんだ。

 トラバサミには気を付けろよ。」

『りょうか・・あ』

「どうした?」


ケシゴはバングを睨み付けたまま尋ねる。



「子どもだ、私の目の前に子どもがいる・・」


ペンシの目の前には白いワンピースを着た少女がうずくまって泣いていた。

しくしく泣きながら、時折「ママー」と呟いている。


『子ども?訪ねるが、一人なのか?』

「そうみたいだ。どうやら親とはぐれたらしい。

 一度彼女を保護する。」

『・・オーケー。』


その時、バングは何故かニヤリと笑い、

シティは何故か顔を強ばらせた。

そしてケシゴの服を引っ張る。


「何だ?」

「今すぐペンシを止めさせて。取り返しがつかなくなるわよ。」

「何?」


思わずケシゴはバングから目を逸らす。

と同時に、通信機から不思議な会話が聞こえた。

『もう大丈夫だ。安心していいぞ。

 ・・だからそんな大声で泣くなよ。

会場中に聞こえるではないか』


ケシゴはハッとして辺りを見渡す。

泣いている少女の声など、何も聞こえない。

そしてペンシの姿が見えた。

彼女が話しかけているのは・・





「うわーわ〜わーわ〜わーわ〜わーわ〜!!」

「落ち着け、そんなに暴れると危険だぞ。

 ・・ほら、抱っこしてやるから。」


ペンシは少女を落ち着かせるため、抱っこしようと手を伸ばす。


『・・!・・!』


ケシゴからの通信も、ペンシの耳には入らない。

入るのは少女の悲鳴のみ。


「よしよし、大丈夫だぞ。」


ペンシが少女を抱きしめると、安心したのかピタッと泣き止む。

その瞬間、ケシゴの声が耳に入る。


『ペンシ、今すぐその『爆弾』を投げ捨てろ!』

「え?」


しかし、ケシゴの声が聞こえた瞬間、

彼女の体は光に包まれていた。



ドガアアアン!!


次の瞬間、酷い爆発音と衝撃がパーティー会場中に響いた。

爆発自体は小さなモノだったが、それでも開けた会場に衝撃を与えるのは十分な威力だ。

もうもうと埃が舞い上がる中、

ケシゴはこの酷い衝撃の中でもしっかり立っていた。

必至に通信機に向かって叫んでいる。


「ペンシ!大丈夫か、応答しろ!ペンシ!」

『ざ、ザザー・・』


ケシゴが幾ら叫んでも、通信機から聞こえるのは雑音のみ。


「ペンシイイイィィィ!!!」

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