特別企画短編小説 隠れ鬼のデートその壱
男の子バージョン
(今日はルトー君とデートの日。
少し時間より早く来ちゃったけど、ルトー君はもう来てるかな?)
少し曇り始めた冬空の下、私は噴水広場のベンチに腰掛けながらクレーンゲームで手に入れたプラスチックの腕時計で何度も時計を確認する。
時計は待ち合わせ時間10分前を告げていた。
私が辺りを見渡すとーーー彼はそこにいた。頭には紫のニット帽をかぶり、水色のベストには鬼が描かれたバッジを付けている。
彼の姿を見た私は立ち上がり、挨拶をする。
「おはようございます」
「あれ、待たせちゃったかな?」
「いえ、私も今来た所ですよ。
今日は宜しくお願いします」
「あ、はい。宜しく・・って。
だ、ダメだ、こんな堅苦しくちゃ!アイツにバレちゃうよ」
ルトーは僅かにと後ろに目を向ける。
そこには金髪の少女がベンチに座り、誰かと楽しそうに話している。
私は慌てて小声で謝る。
「あ、ご、ごめんなさい・・」
「・・・・大丈夫、バレてないみたいだ。
全く、リーダーも変な任務を押し付けてきたもんだよ。
『ターゲットにバレないようカップルのフリをしながら尾行しろ』だなんて。
お陰で、この街の地図やら変な情報やら沢山調べなきゃいけなくなっちゃったじゃないか」
「あ、アハハ・・お疲れ様です」
ルトー君はさっきの初々しい感じから一転、その場にいない上司に悪態をつきながら私に頭を下げてくる。
「ごめんね、任務の為とはいえ尾行デートに誘ってしまうなんて
さっきあんな風に怒った後でいうのもなんだけど、僕もデートは経験ないからどうすればいいのか分からないんだよね」
「そ、そうなんだ」
「あーあ、これならシティとダンクが尾行デートすれば良いのに。
あの二人の方が絶体似合ってるよ」
「そ、そうかな・・(片方ミイラだから目立ってデート処じゃなくなる気がするんだけど)
あ、いや、ルトー君なら大丈夫ですよ」
「・・え?」
ルトー君は目を丸くしてこちらを見る。年相応の少年らしい、純粋な疑問でこちらを見ている。
「私、信じてますから。
ルトー君ならきっと上手くいきますよ。
ルトー君がいつも皆の為に頑張ってるの、私は知ってますから。
だからそんな頑張り屋なルトー君と一緒なら、大丈夫だと私は信じてます」
「・・・・こら、いけないじゃないか」
「え?」
今度は私が「え?」と言う番だった。
ルトー君は私を少し冷ややかな目でみている。でもその割には頬が少し赤い気がする。
「これはあくまであのバカリーダーが考えた任務の為に偽装した尾行デートなんだから、(ボソッ)あまり本気にさせるなよ・・」
「ルトー君、今なんて言ったんですか?
最後の方が聞き取れませんでした」
「あ、あーー!
ターゲットがバスに向かってるー!
ほら、早く行くぞー!」
「え、あ、はい!」
ルトー君は急いでターゲットに向かい、私はそれについていく。
私より早く走る彼の顔は見えないけど、嬉しそうな感情が見えたのはきっと、気のせいじゃない筈だ。
続く




