【短編小説】悲劇を楽しめ!第二話
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
パーティー会場にハサギの悲鳴が響き渡る。
それを聞いてシティは首を傾げた。
「パーティー会場で叫ぶなんて、なんてフリーダムな奴。
そうは思わない、スス」
「・・シティも充分フリーダムだと思うわ」
「そう?」
そう言ってシティは首を傾げた。
そしてアグラをかいて座りながら、ワイングラス一杯にドンペリ入れて飲んでいる。
ドンペリ・・最高級のワインだよ。
一杯七万くらいするよ!
真珠色のドレスは彼女の魅力を最大限に出しているが、あぐら座りはその魅力を見事ぶち壊している。
ススは強烈に思った。
(シティがパーティー会場の警護なんかで、大丈夫かしら・・?)
そして、数時間前の記憶を呼び起こす。
数時間前・・
スス「え、シティが警護するの?ダンクじゃないの?」
アイ「ああ、そう警察の奴らには説明するさ。」
スス「あの、リーダー?
何でシティが警護するの?
悪いけど、警護だったらダンクの方が適任じゃない。」
ススは記憶の中で更に思い出す。
シティ「コンクリートUFOー!」
テトラポットが宙を舞い、
シティ「天誅一本!」
空から電柱が落ちてきて、
シティ「破壊破壊破壊ーーー!!」
とにかく破壊好きな女性。
これがススの持つシティのイメージである。
もし誰かに惚れたなら、必ずヤンデレになるだろう。
ならずとも、世紀末のモヒカン野郎みたいにひでぶする事はまちがいない。
そんな危険人物に警護が務まる訳がない。
何故、アイはシティを警護に?
アイ「確かにな。
だがこれはシティ本人の希望なんだ。文句があるならシティに言っときな。」
スス「え?」
ルトー「ねえ、リーダー。
何で今回の作戦は僕がでちゃ駄目なのさ〜。」
不意に、後ろから声をかけられる。
見るとルトーが連れてって〜とねだっていた。
アイとススは同時に答える。
アイ&スス「「坊やだからさ」」
回想終了
ススはドンペリをオレンジジュースのようにゴクゴク飲むシティを見つめながら考える。
(考えてみれば、シティは昔大金持ちのお嬢さんだったのよね。
でも窮屈で悪徳な奴ばかりしかいない世界が嫌で、彼女は逃げ出した。
そんな過去を抱いているのよね。
なのに何故、大金持ちパーティーの警護なんかしているの?)
「ぷはーっ、ウェイターさん、ドンペリおかわりー!」
ゲラゲラ笑いながらシティはウェイターを困らせていた。
ススはそれを無視して考える。
(シティもああ見えて、この場にいるのは本当は辛い筈なのに・・本当に何故?)
「ねぇ、シティ」
「ん?」
シティは真っ赤な顔でススに顔を向ける。
その姿はススにはあんまりにも情けなく見えて、
「・・。
テロリストがいつ来るか分からないからそろそろ酒を飲むのを止めなさい。」
「えーーっ!これかららってのにーーー!」
べろんべろんの状態でシティが叫ぶ。
ススは頭を抱えた。
「全くだ。
そんな調子で何とかなるとでも思ってるのか?」
不意に、誰かに呼びかけられる。
振り向くとそこにいたのはケシゴがいた。
白髪頭に給仕服の男性だ。
シティはぽけ〜っとした表情でケシゴを見つめる。
「あ〜ら、誰かと思えば私の初めて(の敗北)を奪ったケシゴちゃんじゃな〜い[i:80]
似合ってるわよ、その衣装。」
「変な言い方をするな。
貴様等のリーダーが今回のテロリストの情報を詳しく知っているというから協力してやっているのだ。
本来だったらこんな事は許されないんだぞ
そこらへんをしっかりと」
(うわあ、凄い嫌みな奴〜)
(良かった…この人常識がありそうで)
ケラケラと笑うシティを一瞥したケシゴは面白く無さそうに話す。
ススはケシゴの闘い方をあまり知らないが、
シティはよく覚えている。
サングラスの下にある瞳は見た人を恐怖の魔眼で竦ませ、動物を操って戦うドSにはあまり関わりたくないなぁと思う。
思うけど…
シティはゲラゲラ笑いながら、
「こんな豪華なパーティーに酒の一つも飲まないとやっていけないわよ〜。
どう?飲む?」
と、酒瓶をケシゴに差し出す。
「いらん。」
しかし、ケシゴはきっぱりと断る。
「んもう、いけずぅ。」
(いけず!?)
完全にべろんべろんだ。酔っ払いだ。
絡み酒なんてした日にゃ何されるか分からない。
それを分かっているのか、ケシゴはしっかりと断る。
・・常識を持ってる人だ、とススは思った。
「それより仕事の方を聞きたい。
今日貴様羅が狙ってる『バッドエンド・サンタクロース』の事だが、何か知らないか?」
「あ、それなら私が答えます。」
ススが話しに参加した。
シティに任せると何をいいだすかわかったもんじゃない。
「あるぇ〜、それをきくの〜〜?
ほかにも色々聞きたい事が」「ない」
シティの話しをケシゴが一蹴する。
ススはとりあえず話しを続ける事にした。
「え、え〜と、今回の敵は『バッドエンド・サンタクロース』と言います。
蛮バングと蛮キンコがメンバーのテロリストで、様々な武器を駆使して戦うようです。」
「ふむ、なるほど・・それで、いつ現れるか分かるか?」
「い、いやそれが・・」
「なんだ?」
「実はさ〜、もう時間なのにきてないのよ、そいつ。
ほんっと、馬鹿よね〜〜!」
あひゃひゃとシティは笑う。
その後ろから、男性の声が聞こえた。
「いや、来てるよ君。
だから起きたまえ」
今回はなし。