【短編小説】悪女と補完計画 そのごっ!
海の家・果心林檎&Mr.トンコツの席。
壁が仕切られているものの、その隣にはシティとダンクが、
店の奥ではノリが、店の前ではペンシが話を聞いていた。
そして、その中で果心は手紙を読んでいた。
内容は、以下の通りである。
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めんどくさくなったので、
けいかく、へんこうします
海賊 キャプテン・チャーシュー
果心「あんのクソバカアアアアアアアア!!!!」
トンコツ「うわ、どうしたんですか果心様!?
あといつの間にこの店の従業員の服に着替えたんです!?
つい1秒前まで違う服だったじゃないですか!」
トンコツは目を丸くする。
果心があまりにも憤怒している事に。そして果心がいつの間にかTシャツ、ジーンズにエプロンというこの店の従業員と同じ姿をしている事に。
果心「こんな屈辱、服を着替えなきゃやってらんないわ!
トンコツ、あなた株式会社って何!?
なーに化粧品を販売してるのよ!海賊でしょあんたは!」
トンコツ「か、海賊!?
たしかに親父は海賊でしたけど、俺は化粧品を販売する仕事に興味あったから自分で会社立ち上げて作ったんですよ!
もう海賊じゃありません!」
果心「はあ!?
海賊から化粧品会社に転職!?
どんな人生送ったらそんな発送になるのよ!
ふざけないでよ私の計画はどうなるのよ!
チキショーメー!」
トンコツ「落ち着いて下さい総統閣下!」
総統閣下「誰が閣下よ!
名前変えないで!」
果心は怒りのあまりバンバン机を叩く。
トンコツは冷や汗を流しながら、なんとか怒りの矛先を交わそうと手紙を薦めた。
トンコツ「あ、手紙を見てください。
たぶんまだ続きがあるはずですから……」
果心「はあ!?手紙はあんなふざけた文章しか…あ、続きがあるわ。
どれどれ…?」
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果心様。 俺達は海賊です。
悪の手先でも正義の味方でもない。
海を愛し空を愛し自由を愛し、マストをねぐらに世界を走るのが俺達の人生の全てだ。
果心様。だから俺達はあんたの計画には参加出来ない。
世界をぐしゃぐしゃに変える計画なんぞ、どこかの誰かにやらせてやれ。
しかし
果心(『しかし果心様。貴方への忠誠を忘れた訳ではない。
その証拠として、海賊に不向きなせがれには化粧品の会社を作らせた。
もしもあんたがまだ美しさを保っているなら、そいつのお世話になってくれるとありがたい。』
…………あのバカ、私の設備や金を勝手に使うんじゃないよ。
……だけど)
果心はチラリとトンコツを見た。
筋肉隆々とした、しかし平和ボケした表情の男性だ。
果心「化粧品の質が良かったから許してやるか。
あーあ、フラれちゃったなー」
トンコツ「?
何の話です?」
果心「なんでもないなんでもない。
……ん?続きがある?」
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今せがれが作っている奴とは別に、俺がこっそり惚れ薬を作った。カカアに試したら成功したので効果は本物だ。
もしも果心様が恋をした時、是非そいつを使ってほしい。
地図はこの手紙の裏側に
グシャグシャグシャグシャ!!
果心は手紙を恨みや怒りを込めてグシャグシャに丸めた。
トンコツ「か、果心様!?」
果心「誰があんたの作った惚れ薬なんか使うかあああ!!!」
シティ&ノリ&ペンシ「惚れ薬!?」
三人は同時に反応した。ダンクは首を傾げる。
ダンク「惚れ薬……?
なんだその薬は?」
そして、三人の思考が動き出す。
ペンシ(惚れ薬だと!?
それがあれば、世の男性どもは私にメロメロではないか!
そうすれば店には客が集まり儲かる……)
ノリ(ほ、惚れ薬……?
それがあれば、きっとボクを女性として気付いてくれるッス!)
シティ(ほ・れ・ぐ・す・り・!?
何、マジであるの!?
欲しい……)
ダンク「惚れ薬って何なんだ…?」
ペンシ(金が儲かれば、ケシゴも喜んでくれるに違いない!
あの売り子にも勝てる!)
ノリ(…………本当はそれを使わなくても、気付いて貰いたいッス。
でも…………でも!)
シティ(欲しい!!
惚れ薬、絶対欲しい!!)
三人(惚れ薬は、私が手に入れる(ッス)!)
果心「…………。
やれやれ、あなたの親父は最後に惚れ薬の隠し場所を教えてくれたわ」
トンコツ「ええ!?
親父、そんなの作ってたのか!?」
果心「この手紙にはその薬の在処が書いてあるけど……。
私には不要ね。
というわけでボッシュート」
果心は適当に手紙を放り投げる。
果心「薬は『近くの無人島』にあるらしいから、後でナンパする時にでも使おうかしら。
さて、私はこの海を楽しむとしますかね。」
トンコツ「あ……」
果心は静かに立ち上がり、トンコツはそれを追う。しかし果心はそれを制した。
果心「必要ないわ。一人で楽しみたいの。
……あと、後で化粧品のカタログ頂戴ね。
欲しい化粧品がたくさんあるわ。
いい仕事してるじゃない」
トンコツ「か、果心様……!
ありがとうございます!」
こうして果心は静かに海の家を去った。
残されたトンコツも急いで海の家を出る。
話を一部始終聞いていたダンクは呟いた。
ダンク「……ふむ。
計画がなんとかとか言っていたが……結局、悪い事は起きそうにないな。
ただの杞憂で良かったな、シティ…………あれ?」
ダンクが振り替えると、シティの姿は無かった。
そして代わりに、海の家の壁に大きな穴が開いていた。
ダンク「!?!?!?」
ハサギ「おかしいな、注文した焼きそばは出来たのに誰も取りに来ない……。
ノリー?ペンシー?
どうし……あれ?」
ハサギが厨房から顔を出すと、店の中には青年一人いるだけで他には誰もいない。
ハサギは首を傾げる。
ハサギ「ノリ?」
ダンク(ま、魔法で壁は直したけど……あいつ何処へいったんだ!?)
ダンクは急いで海の家から飛び出す。
すると、悲鳴が聞こえた。
女A「きゃーーー!!
電柱よ!電柱が空を飛んでいるわー!」
男A「違うよ、あれは絶対UFOだよ!!
カメラ、カメラは何処だー!」
男B「しかも誰か乗ってたぞ!」
ダンク「……シティ?
あいつ、何をする気なんだ!?」
狼狽する客達の声をダンクは推理する。おそらくシティは電柱に乗って何処かへ飛んだのだろう。
しかし、悲鳴はまだ続く。
被害者A「ぐわあああ!」
被害者B「どうした!?
なんじゃありゃあ!?」
ダンクが振り返ると、巨大な水柱が上がっていた。
水柱は海に向かって噴出している。
その先に、ダンクの見知った女性がいた。
ペンシ「うおおおおおお!!!」
ダンク「ペンシ!?
水の上を走ってやがる…なんて脚力と根性なんだ!」
ダンクは思わずそれに見とれる。
そのため、後ろでこそこそと動くノリには気付かなかった。
その手には先程果心が投げ捨てた手紙が収まっている。
ノリ「この地図があれば、目的の場所が分かる…後は、移動手段を手に入れるだけッス!」
三人が動き出す。
楽しい海を飛び出して、楽しい休日を飛び出して、
惚れ薬をその手に納めるために。
その頃の海の家。
ハサギ「お店どうしよう…ノリー、帰ってきて…ん?
あんた誰?
なんで海の家の従業員の服を着ているの?」
果心「…。
いや、ね。
ちょっとフラれちゃって…。
海で遊ぼうかな、と思ったけど気分が乗らないの。
…ねぇ、『ハサギ』さん?
私を、雇って下さる?」




