【短編小説】悪女と補完計画 そのよんっ!
注意事項。
この物語はフィクションです。
あらゆる物理法則、常識、組織とは関係ありません。
それでは、どうぞ!
『果心が考えた補完計画』
海の家に入ったのは二人組だ。
一人は屈強な男で、頬に傷がついている。
もう一人は女性で、紺のジーンズに緑のパーカー、赤い幾何学模様がプリントされた白いシャツを着ていた。
二人組は席に座り、対峙する。
そして一人の男……Mr.トンコツは首を傾げる。
トンコツ「あれ、前回そんな服でしたっけ?
確か水着だったような……」
果心「残念な事に、
前回私の洋服の描写が無かったのよ。
だから今回は腹いせを兼ねてどっかの魔法少女らしくどこかの誰かのパロディしてみたわ。」
トンコツ「へ?」
果心「こちらの話よ忘れなさい。分かる人に分かれば良いのだから。」
果心は小声で「プリズマな魔法少女と南の島の幸運過ぎる人、なんて分からないわよね」と呟いたがそれは誰の耳にも入らなかった。
ノリ「お水をどうぞッス。
ご注文あればお呼び下さいッス。」
ノリが机にコップを置き、軽く一礼してから席を去る。
そして、その席の仕切り向こうにあるダンクとシティにもコップを置いた。
ダンク(色男)「ありがと、ノリ。」
ノリ「い、いえ……それほどでもないッス(照)」
シティ「( ̄皿 ̄」
シティはこんな↑表情のまま机の上で突っ伏していた。
シティ(なんで…………。
なんでなんでなんでなんでなんでなんで、
こいつはこんなにもてるの!?
中身はミイラじゃん!中身スッカラカンの魔法使いじゃん!
逆に私は美人の女性よ!
むしろ私がモテなきゃおかしいわ!
私、自分の体には自信あるんだから!ナンパだってフる自信あるんだから!
なのに!
なのになのになのになのに~!
なんで今私は顔隠して歯軋り鳴らさなきゃいけないわけ~~!!)
ダンク「シティ……シティ」
シティ(そうよ!
私がモテないのはダンクが悪いんだわ!
ダンクがモテすぎるから、私がモテないのよ、私が装飾品に見えるのよ!
間違いなくそうだわ!
~~~~~~~!!
私をナンパの為の交渉術に使うなんて、
なんて外道な奴なのダンクは!?
ゆ~~る~~せ~~な~~)
ダンク「シティ!」
シティ「へひっ!?」
シティは驚いて思わず起き上がる。そしてあたりをキョロキョロと見回し、すぐそばにダンクが居る事に気づく。
シティ「…………なによ………。
今はあのウェイトレスさんとお喋りしてたんじゃ」
ダンク「しっ」
ダンクはシティの前で人差し指を立てる。
シティは口を閉じて、人差し指を立てた。
ダンク「……何?」
シティ「指相撲かと思って」
ダンク「それは親指!
そうじゃない、向こうで話しが聞こえるんだよ。
それもかなり怪しい話がな。」
シティ「え?」
「……………………いやー、助かりました。
果心様が手引きしてくれたお蔭でこちらの計画もはかどりましたよ。」
「いえ、私も感謝してるわ。
貴方みたいにサポーターがいないとこちらも動けない事があるのよ。」
シティ「……こ、これは……」
ダンク「ヤバい計画の匂いがするな。
もし、本当にそうなら……分かるな?」
シティ「ええ、私達の神聖なる休日を汚されてたまるもんですか。
奴らの全て、一切合切を潰させて貰うわ。」
ダンク「うん、正解だ。」
ダンクは軽く笑みを浮かべた後、耳を壁に付ける。
シティも同様に耳を立てる。
そして、壁の端ではノリが息を殺して果心の声を聞いていた。
ノリ(まさか、張り込みして初日で犯罪の声を聞けるとは思わなかったッス。
……ハサギさんに早く知らせないと大変だ。)
そして、入口付近ではノリ同様にペンシが息を殺している。
ペンシ(なんだ、休憩しようと思ったら犯罪の気が……。
何か聞こえる、何をする気なんだ?)
果心「早く聞かせてよ、Mr.トンコツ。
時間があまりないわ。」
トンコツ「おっと、失礼。
補完計画の全貌ですよね。
……いいでしょう、お話ししますよ……」
何故か余韻たっぷりに話すトンコツ。
果心もまるで悪役のようにニヤリと笑う。
果心(補完計画……私が五十年前に『海賊』キャプテン・チャーシューと共に始めた、計画の一つ……。
もしも私の数ある計画の内一つが失敗しても、直ぐに立て直しが出来るよう作られた計画……。
そのために必要な莫大な財産と人員、施設、研究を彼等に渡した。
いわば、あらゆる大罪計画の原型になるべく作られた計画……。
これが成功すれば、私達の計画は例え失敗しても直ぐにやり直す事が出来る。)
果心の目の中で闇が深まり、それを消すように更に闇が深まる。
果心(回る……回る回る。
全ての罪が、闇が、絶望が、この計画を管としてぐるぐる回り続けていく。
怠惰も傲慢も憤怒も強欲も色欲も食欲も嫉妬も……この計画が有る限り何度でも輝き続ける。)
闇が闇を覆いその闇をまた闇が飲み込みその闇より大きな闇が隠しその闇を更に巨大な闇が塗りつぶし……あまりに闇が濃く染まりすぎて、中心の闇がまるで皆既日食の月のように光り輝いてしまっている。
果心(そして、その中心には私がいるの。 私という闇を中心に、様々な闇が作られ、消えて、また創造される!
この補完計画は、そういう計画なのよ……。)「ふっふっふっふっふっふっふっふ……」
トンコツ「あ、あの……果心様?」
果心「何でもないわ。
……続けて。」
トンコツ「ではまずこちらをご覧下さい。」
トンコツがそっと机の前に何かを置く。
それは化粧箱であった。
様々な化粧道具が綺麗に並べられており、一つ一つが丁寧に手入れされている。
果心「……ん?」
トンコツ「先ず見ていただきたいのはこのファンデーション。
くすみにくさ、配色、つけやすさ、どれをとっても素晴らしい!また、季節や行事にあった様々な色を取り揃えております。」
果心の前に、様々なファンデーションが置かれていく。
……確かに全て立派なのだが、果心の頭の中には「?」しか出ない。
果心「え、えーと、Mr.トンコツ……?
これは一体……?」
トンコツ「続いて付け爪。
こちらも様々なカラーがあり、自分でデコレーション可能ですよ。」
こちらがデコレーション・グッズ一覧ですとトンコツは何処から取り出したのか分厚いカタログを出してくる。
果心はそれにチラッと目を通し、パラパラとページを巡り、その内の一つの商品をじっと見た。
果心「…………」
トンコツ「果心様?」
果心「ハッ!
い、いやいやいや……違うわよ?
決して欲しいなとかそういう訳じゃ」
トンコツ「へ?
それ、注文して頂けるならすぐ取り寄せられますよ?」
果心「゜゜( O )」
トンコツ「だって、それが果心様が考えた『補完計画』ですよね?
果心様の美しさを永遠に保つため、様々な化粧品を作り出す……それが、我等『Porco rosso』株式会社の目標なんですから」
傷のある頬でニコリと笑うトンコツ。その笑みに悪気はない。
対して悪気が丸ごと抜け落ちて間抜けな表情をしていた果心はしばらく放心していた。
果心「(○_○)」
トンコツ「果心様?
どうかしたんですか?」
果心「……ハッ!
大丈夫、私は夢を見ていただけよ。そう、これは悪い夢なんだわ……」
トンコツ「あ、そうでした。
親父から果心様に手紙です。」
トンコツはのんびりとした表情で手紙を果心に渡す。
果心は緊張した表情でそれを受け取り、手紙を読む。
内容は以下の通りである。
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めんどくさくなったので、
けいかく、へんこうします
海賊 キャプテン・チャーシュー
果心「あんのクソバカアアアアアアアアア!!!!!!」
果心の怒りは、海の家を飛び越えて海まで響き、水平線の果てまで届いたそうな。
『その頃のススとルトー』
スス「ハッハッハッ!
ルトー!結構上手に泳ぐじゃない!」
ルトー「僕だってこの日に備えて泳ぐ練習をしてたんだからね!
いやー、やっぱり海は楽しいなあ!」
スス「そうねー、珊瑚は綺麗だし、楽しめるし、言うこと無しだわ!」
全く普通に夏の海を楽しんでいた。




