スガの森 十二
スガの森 十二
短時間の攻防だったが、双方の被害は大きかった。
フツシ達の犠牲者は九人。
オロチ衆は、八十一人が犠牲となった。
三の垣の中では、生き残った二五人が集まっていた。
三の垣の者以外は全身血まみれで、それが自身の傷か、返り血なのか分からない。
フツシは、怪我の状態を一人一人に確認した。
重傷者は一人もいなかった。
「敵は、態勢を建て直して攻めてくるぞ。一の垣の者は疲れているだろうがもうひと頑張りしてくれ」
「いや、奴等は来ない」
オロチ衆の陣営を見ていたツギルが言った。
「なぜ分かる?」
フツシが尋ねた。
「陣内の覇気が消えた・・・殺られた者達を連れて来て葬ろう」
ツギルは答え、入口に向かった。
一の垣の犠牲者六人は、全身が傷だらけだった。
追い詰められ、何人もの刃を受けたのだろう。
二の垣の射手は、心の臓に槍が刺さっているだけだった。
他の二人は、一の垣の者と同じだった。
「十四歳が四人、十五歳が二人、十六歳が二人、十八歳が一人・・・この攻撃で九人を失った。次も同じような戦いなら、十人の犠牲で九十人を倒す・・・残る敵は四十人程度で、こちらは十五人」
フツシは全員を前にして淡々と言った。
「それなら、五人以上が生き残れる・・・この戦い、俺達だけで勝てる」
ツギルが、居並ぶ者達を見回しながら力強く言い、フツシに視線を止めた。
フツシはツギルの視線を受け止め、生き残った者一人一人を確認しながら言った。
「ツギルの言う通りだ。この中の五人以上が生き残る。他の者は、勝つために死ぬ。戦いが終わったら、生き残った者が犠牲者を葬ろう。その時まで、死者を振り返るな」
オロチ衆の陣営では組頭が集まっていた。
「組頭七人と兵士七十四人・・・八十一人が殺られたのだな。敵は何人殺ったのだ?」
ワクリがミシロを見た。
「三の垣の外に倒れていたのは、九人だ」
ミシロの声には、力強さが無かった。
「敵は何人なのだ?」
ワクリはコマキを見た。
「尾根の者が見たのは、二の垣に十二人と一の垣に十二人の二十四人だと言っています」 コマキが答えた。
「すると、そのうちの九人を殺ったのだな・・・三の垣は見えなかったのか?」
ワクリが再びコマキを見た。
「木の茂みが邪魔になって全く見えなかったと言っています。総数が三十四人だったのなら、三の垣には十人ということになりますが、シオツの者達が合流していれば七十人以上ということになります」
コマキは答え、続けた。
「しかし、三の垣にシオツの者はいないと思います。もしいたのなら、一の垣と二の垣の人数をもっと増やしていたはずです。俺が指揮者ならそうします」
このコマキの言葉にミシロが反応した。
「どういう人員配置にする?」
「一の垣を左右十人ずつの二十人とし、二の垣を十四人とします。そうなっていれば、奴等の被害はもっと少なく、こちらの被害はもっと大きかったと思います」
コマキはミシロに向かって言った。
「コマキの言う通りだ。あの垣に籠もっていたのは三十四人だった・・・九人減ったのだから、今は二十五人だ」
ワクリが言った。