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スサノヲ  作者: 荒人
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スガの森 十一

スガの森 十一

 

雲ひとつ無い空から降り注ぐ秋の日射しの下を、横並びの大盾が前進を始めた。

戦垣の手前十五歩程度まで進むと、全体が止まった。

間もなく左右の一台が前進を始め、二台目がそれに続いた。

やや置いて、左右から声が発せられた。

それを合図に、中央の六台から水平に火矢が放たれた。

次には角度を付けて放たれた。

その次には再度水平に放たれた。

火矢の数は百本を超えた。

戦垣のあちこちで火の手が上がり始めた時、左右の兵士が突入した。

最初に入った兵士は、垣に潜んでいた短槍の餌食になった。

それを見た次の兵士が、陰からの攻撃を警戒しながら飛び込んだ。

それを正面の槍が貫いたが、刺された兵士は柄を握りしめた。

そこへ三人目四人目が突入し、槍を抜こうとしている戦士に襲いかかった。

右の入り口はオモリとアスキの組、左の入り口はヤツミとムカリの組が引き受けていた。

倒れた兵士を乗り越えて突入するオロチ衆の勢いは、守備勢の手に余った。

侵入した兵士達の攻撃は、狙いを付けた一人に集中した。

徹底した追跡を受け、力尽きた戦士が一人、また一人と動かなくなった。

狙いの対象にされていない戦士が俊敏に動き回り、仲間を追跡する兵士に襲いかかる。

しかし、続々と攻め入る兵士が割り込み、引き離されてしまう。

この攻撃に手を焼いた守備勢は、二の垣の入り口に向かい始めた。

丁度その頃、一の垣中央の火の手が大きくなり、垣が崩れ始めた。

それを見たオロチ衆の支援組が大盾で落し穴を塞ぎ、炎の間を縫って突入した。


 三の垣から戦況を見ていたフツシは、後退の銅鑼を叩かせた。

守備勢は一斉に二の垣の入り口に走ったが、二人が逃げ遅れた。

入り口は、射場の下四ヶ所に作ってあった。

追って来た兵士達に、入口の上から矢が浴びせられた。

二の垣に逃げ込めたのは、小頭(こがしら)四人の他は二人だけだった。

二の垣にも火の手が上がっていた。

オロチ衆は火の手が大きくなっていた所を破壊し、二の垣にも侵入し始めた。

そこへ、逃げ込んだ一の垣の生き残りが襲いかかった。

尾根からの指示で、攻撃兵が、垣の上の射場に向けて槍を投げ始めた。

射手が槍を受け、背中から垣の中に落ちた。

フツシは三の垣への撤退を決意した。

再度銅鑼が叩かれた。

三の垣の入り口は、一ヶ所しか作られていない。

入り口に最も遠い戦士が走った。

それを追う兵士を、三の垣の射手が狙う。

この時、オロチ衆の方でも銅鑼が鳴った。


 火矢は三の垣にも飛来したが、燃え上がる前に消し止め、無傷状態だった。

「何人殺られた?負傷者は?」

 小頭を集め、フツシが尋ねた。

「殺られたのは一の垣六人・・・体力の無い者から殺られた。二の垣三人、これは射場で一人と守備で二人・・・全部で九人だ。三の垣にいた者以外は、全員負傷者だ」

ツギルが答えた。

「怪我の程度は?」

 フツシは血まみれのムカリを見ながら尋ねた。

「まだ戦える」

 ムカリは、顔にこびりついた血糊を拭いながら答えた。


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