表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スサノヲ  作者: 荒人
95/131

スガの森 十

スガの森 十


 兵士達は、連ねた盾に身を隠しながら、小岩を手渡しで運び始めた。

手前の盾の兵士の動きは見えないが、声の感じから、何人かは穴の方を向いているようだ。

フツシが指示を出した。

左右二手に分かれた襲撃班が、約五十歩の距離を走った。

「敵襲」

横並びになった二台の盾から声が上がった。

直後に盾の両側に二人ずつが飛び込み、同時に残る三人ずつが盾を引き倒した。

盾の向こうが見えた。

左右から飛び込んだ四人が、短めの槍で兵士を貫いていた。

「敵襲だ」

 再度何人かの兵士が叫んだ時には、十六人の躰に矢が突き刺さっていた。

その時襲撃班は、垣のすぐ近くまで駆け戻っていた。


 指揮盾から作業を指示していたコマキは、先頭の盾から何か聞こえた気がした。

目を転じた時には盾が倒されており、左右の兵士が槍で刺し貫かれていた。

盾を倒した者と槍で襲った者達が身をひるがえ翻すと同時に、矢が兵士を襲っていた。

全てが、あっという間の出来事だった。

コマキは指揮盾を穴の手前まで進め、自らは三台目盾の陰に移った。

「これを倒された盾の前に出せ」

 前に出した盾の陰で倒れた二台を建て直し、兵士の脈を診た。

「死体は穴に放り込め」

そこに、後方で作業を見ていたスハラがやって来た。

「やはり先頭警備は、若い連中ではだめですね。俺の組でやります」

「そうだな。(かしら)は俺達を側に置いておきたいようだが、穴を埋めるまでは俺達でやろう」

奇襲で騒然となった兵士達は、スハラが警備に就き、コマキが先頭で指揮を執り始めたことにより、整然と動き始めた。

落とし穴は次々と埋められ、戦垣まで十歩に迫った。

曇り空はまだ明るかったが、コマキは引き上げを命じた。

「一人も殺られないはずでしたが、二十人も殺られました。先頭で指揮を執るべきでした」

集まったくみがしら組頭を前に、コマキが言った。

「いや、お前のせいではない。若手に警備をさせればいいと言ったのは儂だ。それにしても、奴らの動きは素早いな・・・だが、明日からは奴らに痛い目を見させてやる」

ワクリは隣のミシロを見、全員を見回した。

「頭、明日の攻撃の手順はどうなっているんで?」

 年嵩の組頭から声が上がった。

「コマキ、説明しろ」

ワクリがコマキを見た。

「垣の前に落とし穴がありますが、敵が通路を教えてくれました。我々もそこから攻め入ります。その前に、一の垣の中央と二の垣、三の垣がある奧に火矢を打ち込みます」

コマキは地面に図を描いて説明した。

「なるほど、火矢で混乱させて突入する訳だな」

ミシロが唸った。

「そうですが、こちらが混乱するのは困ります。そこで両側の尾根に兵士を登らせて、敵の動きを伝えさせます」

コマキがミシロを見た。

「攻撃を仕掛けてる最中に、どうやって伝えるのだ?」

 ミシロがコマキを見返した。

「総攻撃ではなく、一人ずつ潰して行きます。左右の通路から入り、最初に出くわした敵集団を尾根の指示で追い詰めます。ですから、尾根との連絡役が左右に一人ずつ必要です。これは俺とスハラがやります。それと攻撃組には、常に俺達の指示を見ている者が必要です。直接見えない場所に入り込んだ場合には、間に伝令を入れます」

コマキは、組頭全員を見ながら説明した。

「現在のこちらの手勢は、二百二十人です。狭い場所での戦闘に都合がいいように、十人体制二二組に再編成した方がいいと思うのですが」

コマキはワクリに向かって言った。

「儂も編成替えが必要だと考えていた。偵察と警備は、十四人体制にする。攻撃組は十人体制の十九組とし、ミシロが総指揮を執る。尾根には偵察組の者を登らせろ。それに、攻撃組の連絡役も偵察組から二人出せ。明日の攻撃は四組、その支援に八組、残りの七組と警備組は後方待機だ。細かいことは各組で話し合え」

 ワクリが断を下した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ