スガの森 七
スガの森 七
垣に逃げ込んだフツシ達は、外の様子を窺っていた。
「二十人は出来過ぎだったな」
アスキが、被り物を外しながら言った。
「読み以上の成果だったな。さて、どういう形で仕掛けてくるかだな。お前ならどうする?」
フツシも被り物を外しながら、ツギルを見た。
「俺が攻めるとすれば・・・三方を防げる大きな矢盾かな。五人くらいで担ぎ、じわじわと押し寄せる。他に近づく手だては無いだろう」
ツギルが人事のように言った。
「確かに、それくらいしかないな」
ムカリが同意した。
「では、それをどう始末する?」
フツシが尋ねた。
「それは、ひと寝入りしてから考えよう」
ツギルが答えると、皆も同意した。
「俺とムカリが見張りをするから、みんなは休め。少なくとも今日中は、射程内には絶対 に入っては来ない」
昼頃、オロチ衆本隊が到着した。
「あの中に籠もっているのか・・・物音ひとつ聞こえんな」
ワクリが横に立つコマキを見た。
「こちらの様子を窺っているはずです。垣は三重に造られています。それに、ここと垣の間には落とし穴があります。垣に近づくには、落とし穴の始末が必要です」
コマキは、ワクリとその周りを取り囲む組頭達に説明した。
「こちらは穴の始末をしなけりゃならんが、奴らも奇襲を仕掛けることはできん訳だな」
ミシロが言った。
「そうです。我々がここにいる限り、垣から出ることはできません。じっくり策を練ってから攻めるのが賢明かと」
コマキはミシロを見、ワクリを見た。
「そのようだな、儂らもここに陣を張ろう。陣が出来たら作戦会議だ」
「兄貴、奴らが陣の設営を始めたぞ、指揮をとっているのは例の警備組頭だ」
ムカリが、垣の下に横たわっているフツシに言った。
「あいつのことだ、絶対に矢が届かない所に造っているだろう・・・両側の斜面の木も伐
採するだろうな。あいつと、偵察の組頭を殺ってしまわないと、何かとやりにくい。あの二人はここで始末したいな」
フツシは目を閉じたまま言った。