表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スサノヲ  作者: 荒人
82/131

谷の中 五

谷の中 五


 コマキは驚いた。

逃げると思っていた敵の物見が、駆け下りて来る。

自分について走っている補充兵と同年齢に見えた。

「向かってきたぞ、槍を構えろ」

言いながらコマキは、足場を固めた。

左右の兵士もコマキを真似た。

物見は、真っ直ぐに三人に向かってきた。

が、槍の間合いに入る寸前に体をかわし、コマキの右側の兵士の横をすり抜けた。

右後ろを振り向いたコマキの目に、首から血を吹き出して倒れる兵士の姿が飛び込んだ。

コマキは足の向きを変え、後ろに備えた。

その時、物見は既に左側の兵士に抱きつき、喉を切り裂いていた。

コマキは槍を持ちかえ、物見を刺そうとした。

周りの灌木が邪魔になり、持ちかえに手間取った。

その間に物見は、転がり落ちた仲間の方に走り登った。

その方角には、谷を走った六人が向かっていた。

「気を付けろ、敵は手強いぞ」

コマキは物見を追いかけながら、六人に向かって怒鳴った。


 ツグヒは激痛から、右足首が折れているだろうと感じた。

同時に、殺られるまでに何人殺れるかを考えた。

谷から同年代の敵が六人、槍を手に向かって来る。

左斜め下の斜面からキツナが走り登っており、少し後ろを組頭(くみがしら)らしき男が追っている。更にその後ろ五十歩位の所を、六人の敵が迫っている。

ツグヒは木を背にして、斜面の下側に両足を下ろした。

座った状態で、谷から来る敵を待った。

キツナが数歩の所まで近づき、ツグヒと目が合った。

その瞬間、キツナは左へ向きを変え、谷から迫っていた六人に向かった。

呼応するように、ツグヒは腰から滑り降りた。


 谷からの兵士は、走り登っていた敵が向きを変えたのを見て、足場を探した。

しかし足場が決まらないうちに、キツナが右端の兵士に体当たりし、心の臓をえぐった。キツナは体当たりの反動を利用して斜面を横走りし、その向こうの兵士に飛びかかった。その兵士が、槍を突き出した。

キツナは体をかわしたがわずかに遅れ、槍はキツナの左脇腹を貫いた。

槍を持つ兵士の拳に、キツナの脇腹が当たった。

その時キツナの小刀も、その兵士の心の臓に突き立てられ、二人は転がり落ちた。


 滑り降りたツグヒは、キツナに気を取られた先頭の兵士に取り付いて喉を払い、二番目に飛びかかった。

ツグヒの小刀は正確に心の臓を貫いた。

同時に、ツグヒの背中に、コマキの槍が突き刺さった。

ツグヒは、頭から斜面の下に滑り落ちた。

滑り落ちたことで背中の槍が抜けた。

痛みは感じなかったが、急に躰が重くなった。

起き上がろうとしたが、できなかった。

目の前に敵の脚が現れた。

ツグヒはとっさにその脚にしがみつき、ふくらはぎを切り裂いた。

敵の叫ぶ声が聞こえたと同時に、何本もの槍が突き立てられるのを感じた。


 斜面を転がり落ちた時に、キツナの脇腹に刺さっていた槍の柄が折れた。

その際、脇腹がちぎれ、内蔵が飛び出していたが、キツナは起きあがろうとしていた。

追い付いた兵士が、半身を起こしたキツナの胸を槍で貫いた。

目を見開いたキツナは、左手でその柄をつかみ、右手の小刀を持ち替えて兵士に投げた。

小刀は兵士の心の臓に、深々と突き刺さった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ