大砦 五
大 砦 五
頭一族の建物から運び出された夥しい量の品々が、広場の中心に集められた。
その周りを、兵士と若者達が取り囲んでいる。
「みんなよく聞いてくれ。今夜、シオツの若造に頭達が殺られた。そこでワクリと、後を誰が引き継ぐだろうかと話した。二人の答えは同じだった。組頭達だ。あの馬鹿ばかりの組頭達だ。あいつらは、度胸も能力もないくせに、頭の身内というだけで、威張りくさっていた。あんな奴らが跡目を継げば、砦も地の民も仕切ることはできん。それなら
頭のお宝を頂戴して抜け出し、どこかの山に儂らの砦を作ろうと考えた。ところが女達が騒いで、運び出す前にこうなった。ワクリとは、もし見つかっても、組頭達が条件を飲めば、手を打とうと話していた」
「どんな条件だ」
誰かが大声で尋ねた。
「頭達のお宝をみんなに分け、新しい頭は全員で話し合って決める、ということだ。
だが見ての通りで、ここの組頭はみんな死んだ。この量を見ろ、儂ら全員の何十倍も貯め込んでいる。まずこれを分けるぞ」
ミシロが、中央の建物の段上から声を張り上げた。
「分配はすんだ。次はこれからのことを話し合おう。若い者もここに集まれ」
建物の前には、三百人を超える男達が篝火に照らし出されていた。
「まず、この砦を誰が仕切るかを、決めねばならん」
「兵士砦の人はどうするんですか。ここの人達だけで決めるのはおかしい」
若者の中から声がした。
「今後のことではない、今どうするかということだ。シオツの若造達は、砦の周りで中を窺っているかもしれん。奴らの襲撃目的が分からん。警戒も必要だろうし、調査もしなければならん。これだけの者が勝手に動き回れば、混乱するだけだ」
ワクリも段上に上がった。
「ミシロの言う通りだ。兵士砦と連絡をつけなきゃならんが、誰が行く?ここはまず元の組単位に戻り、態勢を立て直すべきだと思うが、どうだ?」
そうするしかないという声があちこちから上がった
ワクリが声を張り上げた。
「では組単位に集まってくれ。人数が欠けた組があるはずだ。そこには若い連中に入ってもらおう」
兵士達は十の集団に分かれた。
どの組も組頭が欠けており、最低一人ずつ補充しなければならない。
略奪騒ぎで三人の兵士が殺されているので、十三人の若者が必要となる。
「兵士になろうという者は、進み出てくれ」
若者達に向かってワクリが叫んだ。半数以上の若者が前に進み出た。
よく見ると、大砦に住む十五歳以上である。
これを見たミシロがワクリに囁いた。
「志願する者は全員入れて、組の数も増やそう」
「そうだな・・・みんなよく志願してくれた。本来は十人構成の十組だったが、この際だから組の数と構成人数を増やそう。取り敢えず身内のいる組に入ってみてくれ」
若者達が移動し、各集団が膨らんだ。
それを見ながら、ワクリが全体に呼びかけた。
「そこの人数が多すぎる組は、二つに分かれてみてくれ。そうすると、どちらも少な過ぎるか・・・では、こちらの多めの組からあちらに入ってみてくれ。調整すればどの組の構成人数にも大きな差はなくなるな。一番少ない組は・・・十三人か。多い組は・・・十七人。総勢は・・・二百十人だ。どうだ、みんなこれでいいな」
組み込まれた若者達の間から、おう!という声が上がった。
「これから組単位で動くが、各組を仕切る組頭が必要だ。それぞれの組で決めてくれ」
言い終わると、ワクリは自分の組を階段下に集めた。
ややあって、再びワクリが段上に登った。
「組頭になった者以外はみんな座ってくれ。自分の組の組頭は分かるが、他の組は誰だか分からんでは何かとやりにくい。みんな顔を覚えろよ」
「組頭は何か目印を付けてくれ、そうすりゃ誰でも分かるぞ」
誰かが大声で言った。
「それはいい・・・何を目印にする?」
ワクリが全体を見回した。
「頭に何か巻きつければ誰でも分かるぞ」
また誰かが大声を上げた。
これを聞いたミシロが、大頭の館から持ち出した鹿の毛皮を携えて段上に登った。
「これを切って巻こう」