表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スサノヲ  作者: 荒人
36/131

密造 一

密  造 一


 あぶら蝉の声が梢を埋め尽くす暑い午後、サタの小屋にヨシダから来た男が座っていた。

「サタよ、頼まれたものが揃ったぞ。言われた通りの大きさにして、百包じゃ」

「おおそうか、予定より早かったな・・・いつでも出せるな」

「川沿いの薮に隠してあるから、すぐ積み込める。日取りが決まれば、それに合わせて筏を組む」

「五日先が次の新月じゃ。その日が良かろう」

「勝手に決めていいのか?」

「向こうは待っておる。・・・ひと筏にいくつ乗せられるかの?」

「筏を大きくすれば乗せられる数も多くなるが、流れの幅を考えると小さめがいい。ひと筏に十包なら無難じゃ」

「ということは十筏、乗り手は二十人じゃな」



 渓谷の大きな淵に、筏が固まっていた。

淵を出ると、流れは高い崖に沿って西へ大きく曲がっている。

曲がり終えると当分真っ直ぐになるが、その東には流れを見下ろすようにトルチ砦の(やぐら)がそびえている。

陽は既に落ちており、見張りの交代も終わっているはずだ。

「もういい頃だ、流れに出るぞ。いいか、流れは徐々に西に向かい大きく東に曲がる。曲がりきるまで、何があっても声を出すな」

 フツシはそう言い残すと竿を押し、筏をぐいっと流れに乗せた。

間もなく筏は崖に沿って曲がり、見えなくなった。

それを見て次の筏が流れに出た。

月のない夜であったが、夜目の効く彼等にとってさほど難儀な仕事ではなかった。

幸いにも、トルチ砦の西の流れは直線で幅も充分にあったので、何事もなく通過することができた。


 東に大きく曲がった流れは、小さな蛇行を何度か繰り返しながら東からの別な流れと合流する。

そのあとすぐに、急激に西へ曲がり、再度急激に東に曲がる。

ここが最初の難関であった。

流れの幅は狭くはなかったが、合流点から速度は増している。

砂鉄を積み重くなった筏の惰性は、竿を操る者の力をしのいでいた。

東に曲がるところで、先頭を行く筏が流れの西の岩に乗り上げた。

竿を使って流れへ押し出そうとしているところに、ムカリの二番筏がぶつかり止まった。しかしすぐに、二番筏は、流れに押されて回転を始めた。

その回転を利用し、二台の筏の四人がかりで流れに乗せた。

二番筏は前後を逆にして下り始めた。

そこへ今度は、三番筏が突っ込んできた。

二番筏同様に、回転を利用して流れに乗せた。

四番、五番筏と続き、押し出し役のフツシと相方のアカリはふらふらになり始めていた。


 そこへアスキの乗る六番筏が突っ込んできて、アカリが流れに放り出された。

咄嗟にアスキは、相方のツグヒに怒鳴った。

「ツグヒ、アカリを助けろ」

 ツグヒは、流れに飛び込んだ。

フツシは筏が回転を始める間に、アスキに状況を説明した。

「分かった。俺が残るからこちらに乗り移れ、二人を拾って最初の淵で待っててくれ」

 言いながら、アスキが一番筏に乗り移って来た。

フツシは、流れに出かかった六番筏に飛び乗った。

緩やかになった流れに目を凝らしながら、フツシは二人の名を呼んだ。

程なくツグヒの声が返ってきた。

「ツグヒ、どこだ。俺が見えるか」

「こっちだ。流れの東、アカリもいる」

 声の方に筏を寄せると、小さな淵の崖下の岩にしがみついている二人が見えた。

「見えたぞ。そこに寄せるから岩の向こうに回れ」

 アカリは放り出されたあと岩に足を挟まれ、すねを骨折していた。

ツグヒが淵に誘導していなければ、今頃どうなっていたか分からない。

二人を筏に引き上げたところに、乗り手が一人の筏が寄ってきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ