訓練 六
訓 練 六
フツシの説明をツギルがまとめた。
「フツシ、お前の計画は、まず大砦で頭 と小頭を殺る。そのあと俺達二十四人は、ダキル砦への道で逃げ帰る三十人を待ち伏せるということだな」
「俺達だけではない、残りの十三人もだ」
「そうか、十三人は先に待っており、そこに俺達が合流するわけだな。で、グルカ砦への道ではキスキの手の者が待ち伏せ、メキト砦への道ではサタの手の者が待ち伏せる」
「そうだ。そこで全員を殺る」
「そのあとはどうする?」
「俺達はダキル砦の二十人を襲う。ここまでにかけられる時間は一時間」
「サタやキスキの手の者は、道での襲撃のあとはどうするのだ?」
「キスキの手の者は引き上げるが、サタの手の者には、メキト砦を襲ってもらう。」
「グルカ砦はどうする?」
「俺達が向かう。急いで歩けば一時間半で着く。その頃にはメキト砦の襲撃は終わっている。つまり大砦を出てから三時間で、三つの兵士砦は片付く」
「たしかに計算通りに行けば三時間だ。その頃、大砦の奴らは俺達の足跡を探して砦の周りをうろついているだろうな。しかし奴らが二時間で態勢を立て直していたら・・・」
「態勢を立て直せば兵士砦に遣いを出す。そこで奴らは道に転がった死体を見つける。その時、俺達はグルカ砦に、サタの手の者はメキト砦に向かっている。ここでの問題は、死体を見つけた遣いの者が、兵士砦に向かうか、大砦に戻るかだ。・・・どうするかな」
フツシは謎かけを楽しむように全員を見回した。
「ツギル、どう思う」
アスキがツギルの顔を覗き込んだ
「うーん、度胸のある奴なら兵士砦に向かうだろう。しかし頭達が殺られた直後だということを考えると・・・大砦に逃げ帰るな」
「俺もそう思う」
フツシが満足げに言い、続けた。
「奴らは、砦に帰ろうとした兵士達がどの様な方法で殺されたかを考えるはずだ。道で殺った連中からは矢を抜いておくから、刺されたと思うだろう。九十人もの兵士が戦わずして刺し殺されたと思い込めば、俺達の攻撃方法が分からず、不気味に感じるはずだ。そうなれば、明るくなるまで誰一人大砦から出ようとはしないだろう」
ツギルが両手を広げ、フツシの言葉を遮った。
「分かったよ、兵士砦の攻撃が予定通りに行けば、陽が昇るまで俺達の好きなように行動できると言いたいのだろう・・・まさか引き返して、暗いうちに大砦を攻撃するつもりではないだろうな」
「本当は一気に始末すべきだろうな。しかし生まれて初めて人間を殺すのだ。奴らがすぐには来ない所で休むべきだろう」