表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スサノヲ  作者: 荒人
22/131

展開 三

展  開 三


 久し振りに山の作業小屋に全員が揃った。

この年に一二歳となる男の子が四人加わり、総勢三十七人となった。

四人の割り振りを決めた後、フツシはこの年の計画を説明した。

「去年の調べでいろんなことが分かった。予定にはなかったが、俺とカラキ、ムカリ、アスキ、オモリの五人が嫁を持つこととなったし、シオツの娘六人が嫁いだ。これにより野辺、森、山の衆と姻戚関係ができ、俺達だけでは無理だった調べができるようになった。これまで分かったことだけでも奴らを倒せる」

「では今年実行か」

 何事にも強気のムカリが目を輝かせた。

「俺はこちらに一人の犠牲者も出したくない。誰一人怪我もなく勝てる策を持ちたい」

と言いながらフツシは小頭(こがしら)の中で一番慎重なツギルを見た。

そのツギルが

「去年もそう言っていたが、多少の犠牲は覚悟しなければならんだろう」

 と、指揮官としての決意を促した。

「最初から犠牲覚悟で向かえば、多少ではすまなくなる。一人も出さないと考えていても、誤算は生じる」

 フツシがツギルを見て言った。

「で、どうする」

 ツギルが尋ねた。

「今年一年、去年の調べを確認する。その上に、敵の(かしら)小頭(こがしら)達の性格や癖までもよく

知りたい。成すべきことがもう二つある。これは俺達のことだ。確実に相手を仕留める(わざ)を磨かなければならない。親父に奴らの武器をしのぐ鉄の武器造りを頼んでおいた。この扱いの修練も必要だ」

「あとのひとつは?」

 オモリが身を乗り出した。

「酒造りだ」

 どよめきが起こり、あちこちで会話が始まった。

「酒だと・・・新年の祝いに飲んだあれか?」

 オモリが声を大きくした。

フツシは立ち上がってどよめきを制した。

「みんなよく聞けよ。攻撃の時は、決めてある」

 静まりかけたどよめきが、前より大きなものとなった。

フツシは腕を広げ全員を制した。

「オロチ衆は、毎年秋の満月に全員が大砦に集まって盛大な宴をする。その席に酒を献上するのだ。これまでの調べでは、オロチ衆が酒を飲む習慣はない。俺達も生まれて初めて飲んだが、実に旨かった」

 あちこちから「旨かった」「またのみたい」という声が挙がったが、すぐに静まった。

(かしら)連中はもちろんだが、兵士にもたっぷり行き渡るだけの量の酒を造る。奴らが酔いつぶれた時に攻撃を開始する」

「では今年の秋の宴ということか?」

 ムカリが尋ねた。

「お前達に聞くが、この秋までに充分な武器が揃い、その扱いを身につけ、敵を確実に仕留める(わざ)を身につけられると思うか?」

「無理だな。(かしら)は決行を、次の秋と決めているのだな」

 ツギルが冷静な声で確認した。

「そうだ。決行は、来年の秋の、収穫の宴の日だ」

 どよめきは起こらず、息苦しくなるような緊張がみなぎった。

それを打ち破るようにフツシが言った。

「まだ一年半以上の時間がある。調べを進めながら、武器の扱いと必殺(わざ)の訓練をする。明日から親父達が鉄の武器の造り方を教えに来る。材料は去年集めたが充分ではない。この材料集めも今年の仕事になるぞ。オロチ衆の武器より威力があって使い易いものを、俺達で造るのだ。(やじり)以外は、各自が最も使い易い形を工夫しろ」

 緊張が解け、隣同士で武器談義が始まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ