〜香月の決意〜
side香月
さっきまでは比塚君と千某と私で教室でふざけていたはずなのに床が光ったかと思ったらいつの間にか人に囲まれていて歴史の教科書に載っていそうな建物の中にいた。少しは戸惑ったけどすぐに理解できた。これはきっと勇者の召喚だ。最近似たような小説を読ませてもらったからわかるけど自分が召喚されることになるなんて思ってもみなかったな〜。
説明を受けたけどやっぱり魔王がいるみたいで倒さないといけないみたい。けど…たまに人のほうが明らかに悪いってゆうこともあるからなぁ。どうしよう?とりあえず行われる訓練を受けながら考えてみようかな
私達が召喚されてから2週間経った。
最近は元の世界に帰れなくて悲しい気持ちも克服できてきた。訓練にも慣れてきて私のステータスもそこそこ上がってきたんだよ!でも比塚君のステータスを見せてもらった時ステータスが所謂チートと呼ばれるものになっていたよ…私もそれなりに自信があったんだけどなぁ
だってLv9なんだよ!?私Lv5なのに!比塚君の才能、オールラウンダーって絶対チートだ!
これには私も
「そのオールラウンダーってほんとにチートだね」
と思わず言っていた。だってチートなんだもん しょうがないよね!
あ、そうそう千某の称号には脳筋と書いてあったよww
……それにしても比塚君のステータスを見せてもらう時ちょっとドキドキしたけどなんなんだろう?
そして次の日、いよいよ大迷宮に挑むことになった。
怖いけど既に1度攻略された場所って言ってたから多分大丈夫と自分を無理矢理納得させる。そうしないとずっと部屋に引きこもっちゃうし…
道中魔物が3体でてきたけど比塚君が瞬殺してた。千某が驚いてたけど私だって驚いてた。だってDランクの魔物を瞬殺するんだもん。比塚君は
「つまり俺が4人パーティーよりはるかに強いってことだろ」
と、何当たり前のこと言ってんだみたいな感じで言ってた
思わず
「そうだけどさ、どうやったの?」
と言ったら、なんでも刀を作ってもらって使ってみたら刀術っていうのが手に入ったみたい。
「いつの間に…」
驚いてもおかしくないと思う
千某は「いいな〜刀」とか言ってたけど!私だって欲しいけれども!まずは文句を言おうよ!
(なんでそんなに早く技術を手に入れられるの!!)
声に出して叫びたかったがなんとか言葉を心の中だけに押し留めた。
レールさんが「と、とりあえず大迷宮はあと数分だから急いで行くぞ‼︎」と言ったけどめちゃくちゃ動揺してた。
Dランク3体を瞬殺してたことに驚いたのか技術をすぐに手に入れたことに驚いたのかわからないけどね。もしかしてレールさんって……………弱い?
いや、いやいやいやいやいや!それはないよね!……ないよね?そういえばあんまりっていうか全くレールさんが戦うの見たことないや。剣の素振り位しか見せてもらってないしそれも私達がある程度様になってきたら見せなくなったし…もしほんとに弱かったら王様がこの人が弱いって知ってて教官にしたんだから……これは人類圧倒的に悪い説が信憑性を増してきたね…元々勇者を戦争の道具としてしか見てなかったかも知れないな〜。念のため可能性として考えておこうかな?
香月は普段ふざけたりすることが多いのであまり考えなしで行動してお馬鹿と思われがちだが実は誰よりも頭の回転が速く成績も学年では常にトップで全国では5位以内をキープしていたりする。成績は貼り出されることなどないので学校では常にトップが誰かわからないためちょっとした都市伝説になっていたりする。自慢したりすることもないためこのことを知っているのは比塚と千某ぐらいのものだ。
何を言いたいかというとつまり彼女はそこそこの計画性を持って行動するのだ。そんな彼女が王様の思惑に感ずかないわけがない。比塚はこのことを知っているためなんとなく王様がしたいことに気付いても言わなかったのだ。
大迷宮についた。
入り口以外は何処もかしこも隙間なく木が生えている。
あ、比塚君が木を切った。相変わらずよく切れるな〜………え!?い、いま木が一瞬で元に戻った!?あ、もう一回切った。うんやっぱりすぐに元に戻った。ん?いやあれって一瞬で再生してる?す、すごい…あんな再生力があるなんて…あの再生力欲しい。はあ、どうしようもないこと言っても無駄か〜。ってみんなもう中に入り始めてる!?ひ、比塚君と千某は!?ど、どこ……あ!入り口の隣で待ってくれてる!良かった〜ちゃんと待っててくれた〜。やっぱり比塚君は優しいな〜………え?千某は?って?知らないよ〜だってあいつ比塚君に押さえ込まれながら待ってたんだもん。つまり先にさっさと行こうとしたってこと!全くもって腹立たしいよ!もう!それにくらべ比塚君はちゃんと待っててくれたしね!やっぱり昔から比塚君は優しいよ〜。
あ、いつの間にか歩き出してた。待って〜
大迷宮に入ってからそこそこ魔物を倒して進んできた。
みんな思ったより遅いんだな〜私でもスローモーションって程じゃないけど結構はっきりと見える。あれなら100回でも1000回でも避けられそうだな〜
汚い笑い声が聞こえてきた。この声は堀根グループだ。あの人達は私が最も嫌いな人達だ。何度注意しても虐めをやめない人達。あんまり汚い言葉は使いたくないけどあいつらにはこの言葉が似合ってる。屑、ゴミ……他にも沢山似合う言葉がある。実際私のことを強姦しようと襲ってきたこともあった。その時は比塚君と千某に助けられたけど結構危なかった。なのにあいつらは親のコネで捕まらずに悠々過ごしている。あいつの親は警視総監なんだって。
それはさておきあいつらが何に笑っているのかはとりあえず見てみよう。
なんなんだろうあれ…結構綺麗な宝石みたいだけど…
あ、レールさんが「今すぐ手を引っ込めろ!」と叫んでいた。と、同時に比塚君が急いであいつらのところに飛び出していった、けど間に合わなかったみたい…
私の視界が白で塗り潰された………
「いてて…あれ?どうなったの?」
私はいつの間にか気を失っていたみたい…みんなはまだ気絶している…。
そうだ!比塚君!比塚君は大丈夫かな!まあ多分平気なんだろうな…………………………………え?比塚君がいない………………
「ひ、比塚君?ね、ねえ!比塚君‼︎‼︎どこ!?ねえ‼︎‼︎」
比塚君はどこにもいなかった……
「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
私は叫んだ。その声で他の人も目覚めてきたみたいだけどそんなことに構ってられない
「お、おい!?どうした香月!何があった!?……あ、あれ比塚は!?ど、どこに!?」
「うっうっぐすっひ、ひ、比塚君が!い、い、いないの!」
「な!そ、そんな!それはほんとか!?」
千某が私の肩を掴んで必死に聞いてくる
「ど、どこにも!ひくっぐすっい、いないの!」
「ま、まさか!?」
「な、なにグスッかし、しって、る、の?」
「あ、ああ。知っているって言っても光る直前にあの宝石…いや魔石を解析したときにわかった情報しかないけどな…」
「お、教えて!ちょっとでもいいから情報がほしいの!」
「わかった。まずは魔石についてだ。魔石とは魔力が蓄積され圧縮され結晶化したもので魔法を込めることが出来るんだ。そしてあの魔石にはよくわからない大陸に飛ばす転移魔法が込められていた。これぐらいしか情報がない」
「い、いいよ。でもなんでどこの大陸かもわからないの?大陸は3つしかないはずなのに…」
「よくわからんが多分知らない大陸があったんだろう。だが生きているのは確実だ。即死する魔法でもないしあいつがそう簡単に死ぬわけないしな!」
「うん…そ、そうだよね!きっとどこかで生きてるよね!じゃあさっそく……「探しにはいかないぞ」…え?な、なんで!まだ絶対生きてるのに!見捨てるの!?見損なった!友達をちゃんと大切にすると思ってたのに!」
「まて、香月。誰があいつを見捨てるって?」
「え?だ、だってさっき探しに行かないって!」
「確かに言った。「じゃあ…」け・ど!その前に今はが入る」
「?なんで?だって早くしたほうがいいじゃん!」
「じゃあ香月。お前はどこの大陸かわからないどんな魔物が住んでいるかわからない場所にいまの強さで行くつもりか?それじゃ確実に死ぬぞ」
「そ、それは…」
私は言葉に詰まった。確かにいまの私はとてつもなく弱い。冷静に考えたらわかった。こんな強さで比塚君を助けようとするのが間違いだったのかな…
「多分だけどお前の考えていることは違うぞ」
「え?」
「弱ければ強くなればいい。そしてあの馬鹿を助けに行ってやるんだよ!」
「!!確かにそうだね!わかった!私は絶対に強くなるよ!」
「はは!…だけど」
「?」
「まずはあの屑どもをどうにかしないとな」
そうだった。そもそもこうなったのはあいつら屑のせいだったんだ。途端に怒りが膨れ上がってきた。
「どうする?香月」
「殺っちゃおうかな?」
私の魔力が質量を持って刃となって屑共の肌を切り裂いた。血が噴き出るが死ぬほどじゃない。
流石にこんな屑でゴミでも殺したら犯罪になる。ここには地球の法律はないけど勇者を殺したってことになればすぐに殺されることになるんだろうな…。
「「「ひ、ひぃぃ!」」」
そう考えてる間に屑共は失禁して気絶した。
「情けない。こんな奴らの所為で比塚君が!」
「落ち着け香月。とりあえずこいつらは放置だ。レールさんは気絶したまんまだから抱えて帰ろう」
「こいつらは置いて行く?」
「もちろんだ。魔物に殺されたら自業自得だ」
「わかったよ」
待っててね比塚君…強くなって絶対に見つけるからね!
私頑張るから!
泣く表現って難しいですね……