空の物語
――そらが みていた おはなし――
わたしは、そら。
なまえも はじまりも おわりもなく、
ずっと ずっと、ここに います。
そらは、なんでも しっています。
はじめて とんだ ちいさな パイロットの、
ぎこちない はばたきも。
こわくて とべなかった こどもたちの、
しずかな ためいきも。
あるよる、
「ぶきような パイロットたちの ぶとうかい」
が ひらかれました。
とぶのが ちょっと にがてな パイロットたちが、
そらの うえで くるり、ふわり。
まっすぐ とべないひとも、
すぐ おちそうになるひとも、
みんな いっしょうけんめい。
そらは それを みて、
とても うれしく なりました。
だって、
じょうずじゃなくても、
その「とびたい」きもちが、
そらの いちばん すきな ひかりだから。
でも、そのよる、
ぶとうかいに こなかった こどもたちも いました。
くもの したで、
そらを みあげながら、
こんなふうに おもっていたのです。
「とびたいけど……こわいな」
「へたなのを みられたら、はずかしいよ」
そらは こえを かけたかったけれど、
そらには こえが ありません。
だから、
そっと かぜを ふかせて、
「だいじょうぶだよ」
と つたえました。
つぎの あさ。
ゆうかんな、でも いちばん ぶきようだった パイロットが、
また とびに きました。
そして、
くもの したの こどもたちに いいました。
「そらは、じょうずなひとの ものじゃないよ。
とびたいひとの ものなんだ。」
そのことばを きいたとき、
そらは すこし ひろがった きがしました。
そのひ、
さんにんの こどもたちが、
そらへ ゆっくり とびだしました。
はねは ふるえていたけれど、
それでも まえへ。
そらは、
やさしい かぜで かれらを だきしめました。
ぶきような パイロットの ぶとうかいは、
じつは いちどきりでは ありません。
きょうも、
あしたも、
どこかで そっと ひらかれています。
そして そらは しっています。
ぶきような ひとが ひとり とぶたびに、
そらは すこしずつ ひかるのだと。
それが、
そらに できる
いちばん たいせつな しごとだから。




