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第5話 飛べる男と飛べない私

「馬鹿なこと言って無いで、早く助けなさいよ!」


 私はおとぼけカンタの胸元を掴み、前後に振りながら助けを求める。

 明後日の方向を見ながら「何で俺が?」と言うカンタには怒りが込み上げてくるけど、今はそれよりも私の可愛い尻尾ちゃんのピンチを救わねば!


「助けてくれたら、私がイ・イ・コ・トしてあげる。だから早く助けてよ〜」


 私は胸を寄せ、カンタにお願いする。

 それに対して、目を細めて嫌そうな顔をするカンタだったが、仕方ないなと言いながら行動を始めるのであった。


 カンタは私から離れて右手を高く上げ、人差し指を空に向かって突き出す。すると晴れていた青空の中に、突如黒い雲が出現する。

 カンタは息を吸い、大声で叫びながら、指を黒い雲からサーベルボアの方に向ける。


天罰(サンダーボルト)!」

「ぎぁあああぁぁああ!?」


 黒い雲は激しい音を立てながら、サーベルボアに向けて雷を落とす。サーベルボアは鳴き声を上げると共に、力尽き、アリスの尻尾を離すのであった。


 そしてサーベルボアに噛まれていた私にもその衝撃が伝導。直接当てられた訳では無いにしても、電撃の威力は凄まじく、はしたない声を上げることになったのだ。


 プスプスと音を立てながら煙を上げる私の尻尾。尻尾の先についていた綺麗なハートの形はどこに行ってしまったのか。私は尻尾の先をフゥフゥしながら『ヒール』をかける。


「ふぅ。おーい、大丈夫か?」

「大丈夫な訳ねーだろ!」


 カンタはやってやったぞみたいな顔をしていたが、「全然上手くやれてねーよ!」とアリスはカンタに激怒する。


 サーベルボアに噛まれるより、ひどい目にあったわよ!

 助けてくれたのは分かるけど、助け方に関してはもうちょっと考えて欲しかったわ。

 ……てか、カンタの雷魔法威力やば過ぎ。サーベルボアが一撃って……えっ、凄すぎない?


 私は自分の尻尾から、倒れているサーベルボアの方に視線を変える。


 魔獣は『通常級』、『上級』、『特級』、『災害級』、そして『厄災級』の5段階で分けられている。

 その中でサーベルボアは、ギリギリではあるが『特級』に区分される。

 5段階区分の真ん中ではあるが、そもそも『災害級』ってのはドラゴンのような街を丸ごと破壊しかねないレベルの魔獣で、『厄災級』なんてのは今この世界にいるかも分からない、世界を揺るがすレベルの何かなの。


 サーベルボアはかなり強いはずなのに、カンタは指の一振りで倒してしまった。

 とぼけてはいてもカンタは魔王を討伐しに来た最強勇者ってことなのよね。私、よく生きてたわよ……?


「てかアンタ、私を起こす時もそれ使ってなかった!?」

「おお、よく気づいたな、!?」


 カンタの『天罰(サンダーボルト)』をくらったのが実は2度目であることに気づいたアリスは再びカンタの胸ぐらを掴む。

 助けたのに何をするんだと思っていたカンタはまた明後日の方向を見ながら、アリスを面倒くさい女だと思うのであった。


 カンタの使った『天罰(サンダーボルト)』は空から降る雷。それを誰かに見られていたとは、この時の2人には想像も出来なかったのである。


◆◆◆◆◆


 カンタとアリスからだいぶ離れた位置で、男は空に浮かぶ黒い雲から落ちる雷を確認する。


「……何だ、あの威力は? 自然現象……いや、魔法か?」


 男は目撃したその落雷について、色々と考察してみる。


「雷の魔法なら仲間かもと思うが……敵の可能性もあるか? 待て、そもそも俺達の敵がいるのか? この世界はいつでどういう状況だ? そもそも俺が知ってる世界なんだろうな?」


 男は今自分が置かれている状況がどうなっているのか、よく分かっていなかった。

 分かるのは自分のことだけで、何があって今自分がこの場所に立っているかも分かっていなかったのだ。


「とりあえず行って確かめてみるか。誰かいれば色々聞くことも出来るし……いや、そもそも言葉が通じるのか? それにもし誰か居たとして、居たのが『アイツら』だったらどうするんだ」


 男は落雷の落ちた場所に行くべきか、それとも行かないべきかを吟味ぎんみする。

 最悪のケースも頭に浮かび、悩みに悩んだ末、男は最終的な考えを出す。


「とりあえず見に行ってみるか。誰かと会って何か情報が手に入ればラッキーだし。もし言葉が通じなかったり、相手が『アイツら』だったら、殺せばいいんだしな」


 ここで考えているよりも、直接確認しに行く方が手っ取り早いと思い、男は羽を広げ、その場から飛び立つのであった。

 男は遠く離れた場所にいるアリスとカンタの元へと羽を激しく動かして向かうのであった。


◆◆◆◆◆


 尻尾を完全に直し終えたアリスは、カンタに目も向けず、再び森の探索に移っていた。


「なぁ、まだ怒ってるのか?」

「……」


 カンタはアリスの後ろをついていきながら、声をかける。

 しかしアリスはカンタの話を無視して、ひたすらにまっすぐ歩く。


「……なぁ、おい」

「……」

「お、おい、そっち崖だぞ!」


 えっ……あわわわわ、え、嘘!?


 カンタの呼びかけに目をつぶって、怒った素振りをしていた私。目の前に道が無いことに気づかず歩き続け、カンタが崖! と叫んだ時にはもう片足が出てしまっている状態になっていた。

 

「飛べ、アリス!」


 カンタは私に指示を出す。羽を広げて陸に戻れと言ってくるのだ。


 でもそれは無理。私の背中についた黒くて小さな可愛い2枚羽は、空を飛ぶなんてことはまだ出来ないの。

 最近やっとパタパタ動かせるようになったレベル。25歳でピチピチの私にはサキュバスのお姉様方のように自由に空を飛ぶことは不可能なのよ。



 アリスは首を振ってカンタに飛べないことをアピールしながら、陸から姿を消す。


「チッ!」


 カンタは急いで崖を飛び降り、落下するアリスを追いかける。

 崖の岩壁を足場に駆け足で下り、ジーパンからベルトを外す。


「ソレ!」


 カンタはベルトの先をアリスに向かって投げる。ベルトは落下するアリスに追いつき、腕を掴むことに成功した。


「ヨシッ」

「……で、この後どうする?」

「どうって、引き上げて……あっ」


 アリスをベルトで捕まえるまではカンタの思い描いてた通り。そこからベルトを引き上げアリスを抱き抱え、ピンチから救い出そうとするが、アリス救助作戦には1つだけ欠陥があることにカンタは気づく。


「……どうやって止まる?」

「ぎぁあぁぁぁあああー!」

 

 両手でアリスを抱えたカンタは、止まる術が無く、そのまま地上に向かって走り続ける。


 私1人で落下してた時よりも、落下の速度はどんどん増して行く。

 もう、イヤ、この人。やっぱり怖い!

 この勇者と一緒にいたらいつか死ぬと悟りながら、私とカンタは数百メートル上空から地上にダイブするのであった。

はじめましてゴシといいます。

読んでいただきありがとうございます!

この話を読んで面白そうって少しでも思ってくださる方がいてくれると嬉しいです。

まだまだ話は続いて行きます。これからも更新して行きますのでブックマークの方もよろしくお願いします!


下の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!

応援されてると思うとやる気めちゃ出てスラスラ書いちゃいます。

これからも愛読と応援のほどよろしくお願いします。

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