表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/7

第3話 私じゃ勇者に敵わない

 黒い渦に吸い込まれたアリスとカンタは、宝物庫から別の場所に転送されていた。


「おい、起きろ」

「……」

「起き……」

「……へへへぇ」


 転送されてからしばらくして目が覚めたカンタは、横で寝たままのアリスを起こそうとする。しかしアリスは呑気に夢を見ていたのか、ヘラヘラしながら目をつぶったままであった。


「ふうぅ、すうぅぅ」

「えへへへ、へ……へへ」

天罰(サンダーボルト)!」

「ぴぎぁぁああああああ!?」


 カンタは息をゆっくりと吐き、大きく吸う。そして雷魔法『天罰(サンダーボルト)』をアリスに向けて発動。

 空から降る雷撃はアリスを直撃し、なんとも表現しがたい悲鳴を聞くとともに、アリスが目覚めるのをカンタは確認した。


「やっと起きたか。呑気のんきに寝やがって……って何だ急に、痛いだろ?」

「痛いのはこっちだ馬鹿人間! 起こし方ってのを知らんのか、オイ!?」


 雷撃をくらって黒焦げにされた私は完全に目が覚め、このイカレ勇者に右ストレートを思いっ切り入れてやった。

 でもずるいことに、私の拳よりも勇者のほっぺたの方が強度が上。私の可愛い右手ちゃんは真っ赤に腫れ上がっていく。

 ぐすん、そんなことってある?


 手が痛くて泣いている私に、勇者はまた話しかけてくる。


「起きて早々、怒鳴って殴ってくるわ、その上泣き出すわ。騒がしいヤツだな、お前」

「お前って。私はアリス、アリスティーナ・ワンダーランド!」

「ん、そうかアリスか。とりあえずよろしく、アリス」


 カンタは手を差し出して、アリスに握手を求めていた。


 私今怒ってるんだけど! ……手を出すってことは握手しようってことでいいのよね?

 でも、コイツは魔王様を討伐しに来たって言ってたし、仲良くする必要なんて無いと思……いや、これはチャンスね。


「確かカンタって言ったわね。まぁ、よろしく」


 私はカンタの差し出した手を握り、そして『回復させて頂きますね(エナジードレイン)』を発動する。


「ん、何だ?」


 カンタはアリスが何かしていると気づく。


 ふっ、ふっ、ふっ、気づいたわね。でももう遅いわ! 私の『回復させて頂きますね(エナジードレイン)』は触れた相手の体力を吸って、自分の物に出来ちゃうの。

 魔王様にたて突く愚か者は私がここで、仕留め、て……って、な、何よ、これ?


 私はカンタの体力を吸うつもりで技を発動させたのに、技を使えば使うほど、どんどん力が抜けて行くのに気がついた。


「アリス。もしかしてだが、俺に何かしてたりするか? 手がむずがゆいのだが」


 コイツ、私の技が効いてない!?


 私は身の危険を察知して、カンタなら手を離し、バックステップで距離を取る。


 私は今何をされた?

 技をかけていたはずなのに、逆に体力を吸われているような気がした。

 コイツ、私に何をしたのよ!?


回復させて頂きますね(エナジードレイン)』は何故か失敗に終わった。でも何かしたってのはカンタに勘づかれてしまった。


 気づかれたなら、もうやるしかない!

 魔王様に降りかかる害悪はこの私、四天王アリスが絶対に排除してみせるわ!!


 私は『私が心を射止めちゃう(キューピットアロー)』を発動し、目に見える魅了の弓矢を作り出す。

 そして、カンタ目掛けて弓を引く!


 ぺちっ!


 ……。


 そして、カンタ目掛けて弓を引きまくる!!


 ぺちぺちぺちっ!


 …………?


 そして、カンタ目掛けて弓を乱れ打つ!!!


 ぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちっ!


 ……………………


「何してくれてんのよ!?」

「いや、こっちのセリフなんだが」


 私が放った弓は触れたものを洗脳する魅了の力を持つ。

 触れただけで洗脳されるはずなのに、それをコイツは素手ではたき落としやがった。


 初めて聞いたわよ、技が弾かれた時の音で『ぺちっ』って鳴ってるの!

 普通技が弾ける音って言ったら『バーン!』とか『ドーン!』でしょうよ!

 クソうぅ、私のを虫でも叩くみたいに消してくれちゃって〜。

 四天王としての面子が立たないわよ!


 私は『私が心を射止めちゃう(キューピットアロー)』を軽々と防がれたことに腹が立っていた。

 それを見たカンタは首を傾げながら、私に苦言を呈してくる。


「何で攻撃してくるのかはよく分からんが。アリス、弓の引き方がなってないぞ」

「はぁ!?」

「まぁ、見てろ。俺が手本を見せてやる」


 弓の使い方を見せると言ってくるカンタ。

 だが、カンタの装備はタンクトップとジーパンだけ。


「何をどう見せるっていうの? 見せれるもんなら見せてみなさいよ!」


 私はカンタが何をするのかを黙って見てやることにした。


 でもコイツ、どうやって弓の引き方なんて見せるつもりかしら。私の弓は魅了の力を具現化しただけだから、貸したりなんてできないわよ?


 私は腕組みしてカンタを見守る。するとカンタは何かを探し始めた。


 何してるのかしら……落ちてる小さな木の棒を拾って……また小さな木の棒を拾った、それで……えっ、何?


「見てろ。これが弓の引き方だ!」


 カンタは左の親指と人差しで木の棒を挟み、その木の棒に別の木の棒の端をくっつける。体をねじりに捻って、その後勢いよく体を戻しながら木の棒を放つ!


「ひぃ〜えぇぇえええ!?」


 カンタの放ったその木の棒は近くに生えた1本の木を貫通し、見事に薙ぎ倒すのであった。

 勢いよく倒れて地面についた際に向かってくる風圧に、私は唇を震えさせられた。


「これが弓の威力だ。どうだ、凄いだろ?」


 カンタは鼻を膨らませ、ドヤ顔で私を見てくるが、私はビックリし過ぎて返事をしてやれなかった。


 カンタのやったことには色々とツッコみたいことがある。


 ツッコみたい点その1、それは弓じゃない。

 私はしっかりとカンタの手元を見ていたが、引くなんて動作してなかったわよね?

 体を捻って、遠心力で木の棒を押し出しただけ。

 ただの遠投じゃないの! 何が「弓の使い方はこう」だよ。ドヤってんじゃないわよ!


 ツッコミたい点その2、威力がおかしい。

 遠投にしても木の棒で何してんの!?

 大木へし折るって、は? ホントですか?

 そんな人間見たことないわよ! どんな身体してんのよ、もう!


 心の中でツッコんでいたが、口に出したところで私が負けるって未来は変わらないと思う。

 カンタとの間に力の差があるのは目に見えて分かった。

 勝てないって思ったら気が抜けてしまい、好きにしてくれと思いながら、カンタに敵意を持って攻撃したことを私は白状してしまった。


「そうか、攻撃してたんだな」

「そうよ。さぁ、好きにしなさいよ!」


 私はコイツに消されるわね。こんなどこかも分からない森の中で消されるなんて、私の人生何だったのかしら。


 とんでも勇者のカンタを目の前にして、自分の無力さに涙が出てくる。

 その様子を見ていたカンタは、私が思ってもいなかったことを言い出した。


「好きにって、何をすればいいんだ?」

「……へ?」


 カンタはきょとんとした顔でアリスに質問する。


「いや、だって私、殺すつもりで攻撃したのよ?」

「うん。でも、しょうがないだろ。いきなり現れたら誰だってビックリするしな。さっきの金ピカの部屋はお前らの家だろ? 不法侵入で訴えられても文句は言えないからな。まぁ、いきなり攻撃されたのはビックリしたが」

「えーと、あぁ、うん、そ、そうよね」


 何を勘違いしてるかよく分からないが、カンタが自分に非があると思っていることは分かった。

 つまり、私達がやったのは自己防衛ってことにカンタの中でなってるんだわ。はぁ〜、よ、よかった〜。


 魔王軍だから勇者に消されると覚悟していたところから自分が助かる道が見えた途端、私は気が抜けてしまい、ふにゃふにゃと地べたに座り込んだ。


「そうよね、アンタ怪しかったからついやっちったの。そう言って貰えると助かるわ。……でも全然怒って無いの?」

「怒る? いや、特にそんな理由無いが」

「もしかして攻撃されたと思ってないぐらい弱かったってこと?」

「ん、うん。アリスのは何してるんだろぐらいに思ってたな」

「はぁ、そうですか」


 やっぱり私の攻撃って、虫が飛んできたなってぐらいだったのか。

 私……ホントに四天王って言っていいのかしら? 自信無くなってきちゃった。


「あ、でも、もう1人の綺麗な子のムチは結構効いたな。素手で受け止めてはみたが、手がジンジンしたぞ」

「綺麗な子? あぁ、ユノのことね。綺麗ってアンタ、ユノみたいな子がタイプなの?」


 ユノを綺麗だと言うカンタに対して、私は疑問を持つ。


 ユノは確かに綺麗だと思うわ。色白でスタイルもスラッとしてるサーベルタイガー族の女の子。

 それでも私ほどじゃ無いはず!

 スラッとしてるってのは女としてどうなの?

 胸もお尻もぺったんな彼女に色気なんて要素は無い。

 それに比べて、私はボンキュッボンなお色気ムンムンのサキュバス。普通の男なら私を見て興奮するはずよね。


 私を目の前にしてユノだけ綺麗とか言うのはおかしいと思う。


「私はどうよ、綺麗? ねぇ、どうなのよ?」


 手を頭の後ろに添え、胸を突き出す。

 男はこのポーズでみんなメロメロなはず!

 さぁ、答えてみなさい、勇者カンタ!


「すまん、下品な女は好かん」

「がはぁ!?」


 攻撃どころか、自分の最大の武器だと思っていた見た目ですら、この化け物勇者には全く効かなかった。

はじめましてゴシといいます。

読んでいただきありがとうございます!

この話を読んで面白そうって少しでも思ってくださる方がいてくれると嬉しいです。

まだまだ話は続いて行きます。これからも更新して行きますのでブックマークの方もよろしくお願いします!


下の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!

応援されてると思うとやる気めちゃ出てスラスラ書いちゃいます。

これからも愛読と応援のほどよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ