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第1話 初めまして、魔王様

「今日から魔王様直属の四天王ね。アリス、おめでとう!」

「ありがとう、ユノ。魔王軍に入って5年、いや、子供の時から夢見てたから、ざっと20年かしら。ずっと憧れてたのよねー、魔王様と直接会えるこの日を。でも……ここまで来るの、ホント大変だったわ」


 私、アリスことアリスティーナ・ワンダーランドは、魔王軍四天王の1人、ユノ・グラントに連れられて魔王様の元に向かっていた。

 今日は私の魔王軍四天王としての初仕事、『魔王様との初顔合わせ!』なのである。


 私は20歳で魔王軍に入隊し、魔族に敵対する人間達を相手するということを5年間続けていた。

 その功績が認められ、今日から魔王軍四天王の仲間入りをする運びとなったのだ。


 長かった、いやホント長かった。

 長命な魔族の5年なんて短いと仲間内では思われるかもしれないけど、そんな魔族の私が長いと思うぐらい、この5年間は色濃かったのよ。


 バーミリオン皇国の潜入工作が1年、アスタロス帝国軍と平和協定を結ぶのに2年、そしてつい先日までやっていたヨハネ聖騎士団との全面戦争。

 スパイ、政治、軍指揮官って、どんだけ幅広く仕事してるのよ、私って!


 どれも大変だったけど、1番苦労したのはやっぱりヨハネ聖騎士団ね。

 アイツらって『異端な魔族は滅ぼすべきである!』って理念の元で動いてるから、戦闘で半身が消し飛んでも気持ちで体動かしてたわよ。見てて魔物とかより怖かったわ。

 それに騎士団長なんて、私の能力が1ミリも効かなかったし。


「ヨハネの団長とか、絶対ユノ達四天王がやるべき相手だったわよ。私サキュバス、戦いとかホント向いて無いのに」

「まぁ、そう言わないでよアリス。その強い団長さんを退しりぞけたから四天王に任命されたんでしょ」

「いや、うぅ、そうなんだけどね」


 ユノの言うことも正論だと思うと、返す言葉が見つからない。


 確かに四天王に匹敵するであろう騎士団長が率いる聖騎士軍を退しりぞけたから、今回の魔王軍四天王入りが決まったと言える。

 それでも言いたいのよ、アイツはヤバかったって。

 

 サキュバスの能力は癒しと魅了。仲間を回復させたり、敵や時には味方を洗脳して動かすのが、サキュバスである私が主に得意とするの力なの。

 それに加えて攻撃スキルを多少は持ってるけど、せいぜい雑魚兵士を一掃出来る程度かな。


 ヨハネの騎士団長やアスタロス帝国の軍団長なんて、相手するとか無理無理、向かい合っただけで足が震えたわよ。

 ヨハネ騎士団長と直接対峙した時は、魅了も攻撃も効かなくて、最終的に逃げ出してるワケだし。逃げ切れたのはホント運が良かっただけ。やられると思ったら怖くて、失禁する手前だったわよ!


 そんな私が四天王でいいのかは、今でも疑問なのよね。


「弱い私が四天王になってもいいのかしら?」


 私はユノに疑問をぶつける。

 するとユノは、即答で大丈夫だと言ってくれた。


「私はアリスが四天王に入ってくれて嬉しいわ。元々四天王って、私含めて脳筋みたいなのしかいなかったから。弱くても賢い子が1人ぐらい居て欲しいとは思ってたのよ」

「ユ、ユノ〜」


 『弱くても』と言われたのは気になるところがあるけど、ユノは私の四天王入りを認めてくれていると分かって、少し安心した。


 ユノが私を賢いと言っているのは、やっぱりヨハネ聖騎士団の魔族領侵攻を阻止したことを言っているんだと思う。


 ヨハネ聖騎士団長との直接対決から逃げ帰り、倒すのが無理だと判断した私は、騎士団長ではなく、その背後にいるヨハネ大司祭を魅了で洗脳することにしたの。それが見事に成功し、ヨハネ大司祭を操って聖騎士軍を撤退させる事が出来たのだ。

 ズルいやり方だとは思うけど、私達の国を守るためなら、私は何だってする。


「そうね、私は今日から魔王軍四天王のアリス。魔王様のためにも頑張らなくちゃね」

「ふふっ、そうね。あら、着いたわよ、アリス。開けるけど準備は良い?」

「何でも来い!」

「ヨハネ騎士団長でも?」

「それは……勘弁して欲しいです」


 魔王様のいる王の間に続く扉に到着した私とユノ。

 ユノは冗談を言いながら目の前の大きな扉を開く。


 私はここをまたぐと四天王か。

 す〜、はー……えいっ。

 一息入れて、勢いよく中に飛び込む。


「どうした? そんなに気合いを入れて」


 意気込んで中に入った瞬間、私は遠くから声をかけられる。

 下がった顔を上げて、声のする方に目を向ける。


 黒いサラサラ髪に2本の角が広がって生えている。瞳は赤く、凛とした顔立ちのお方、魔王グレイ・マーベル・シュバルツ様がそこに居られた。


「ま、ま、ま、魔王様!」

「あ、ああ、そうだ、私が魔王だぞ。よく来てくれた、アリスよ」


 魔王様は私の名前を呼んでくれた。しかもアリスティーナではなく、アリスって。

 う、嬉しすぎる!

 子供の頃からずっと魔王様に憧れていて、直接会えるこの瞬間を私はずーと夢見てたのだ。

 その一言目でアリスって呼んでくれるなんて……あぁ、ヤバい、結婚してください。


「どうした、顔が赤いぞ。それに……」

「えっ……はぁぁ、こ、これは!?」


 私の鼻から湧き出す大量の血には、魔王様でもちょっと引いていた。

 鼻血を止めるため、すぐに回復魔法『ヒール』を自分にかける。


 まさか、魔王様の前で鼻血を出すなんて、私ってダサすぎ。……って、笑うな、ユノ!


 隣で私を見ながらクスクス笑っていたユノ。怒りをぶつけてやろうとかと思ったが、ユノを怒るのは後回しにして、今は魔王様との会話に集中しようと思う。でないと、また鼻血出ちゃいそう。


「アリス、今日からお前は私の四天王に加わってもらうが良いか?」


 魔王様から直々に言われると、ホントに四天王になるんだなと実感が湧く。


「大丈夫です。私アリスティーナ・ワンダーランドは魔王グレイ・マーベル・シュバルツ様の手となり足となることを誓います!」

「そうか! そう言って貰えると助かる」

「……」

「ん? 何か言ったか?」

「い、いえ、何でもありません!」


 グレイはアリスが四天王入りを受け入れた後、何かゴニョゴニョと言っていた気がした。


 アリスはそれに対し、何でも無いと答えていたが、近くにいたユノには全て聞こえていた。


「頭の中お花畑にするのは程々にしてね」

「う、うるさい!」


『手でも足でも体でも、何でも好きにしてください!』

 アリスが先程呟いていた言葉を、ユノはグレイに聞こえない声で復唱し、またクスクスと笑いだした。


 グレイにはユノが笑い、アリスが怒っている様子だけ見てとれたが、何故そんな状態なのかは分かっていなかった。

 しかし、グレイにはその理由を聞いている暇がなかったのである。


 アリスの四天王襲名(しゅうめい)が終わったばかりではあるが、今日はゆっくりしていられない。別の場所へ急いで向かわなければならないのである。


「楽しそうにしてるとこすまない。本当はアリスの四天王就任祝いをしてやりたいが、今は時間が無くてな。また後日時間を作るから、今は許してくれ」

「あら魔王様、今日は何かあったかしら?」


 急ぎだと言うグレイに、ユノは理由を聞く。


 ユノは四天王としてグレイの予定を大体把握していたが、今日の予定はアリスの四天王襲名式だけだったはずと思う。

 それなのに急ぎの用があるということは、予定して無かった何かが起こったと察する。


「んん……あぁ、そうだな」

「えっ、何かあったんですか!?」

「いや、まぁ、その、いろいろあってだな」


 今日初めて会った私でも分かるぐらい、リノの問いかけに魔王様は困った顔をしていた。絶対何かあったんだわ。


 でも、魔王様って困った顔も美しいのね。そんな顔されたら私が癒してあげたくなっちゃうじゃない、デヘ、デヘヘヘ……っていけないわ、私たら何を考えてるのかしら!

 

 魔王様と一夜を共にすることを妄想してしまったが、今はまだ早過ぎると思い、お花畑の頭を横に振って卑猥ひわいなイメージを払い飛ばす。


「魔王様! 何かあったのなら、私達に申し付けて下さい。そのために私達はここにいるんです」

「……」

「私とリノもお手伝いします。魔王様、何があったか教えて頂けませんか?」


 そもそも私は魔王様の助けになりたくて、魔王軍に入ったのだ。

 魔王様と添い遂げるのも……まぁ、考えてはいるんだけどね。

 でも、今はその時じゃない。今は魔王様の悩みを解決するのが優先と考え、私は魔王様を真っ直ぐに見つめた。


 するとグレイは少し悩んだが、アリスの提案を飲むことにしたのだ。


「そう言ってくれるか」

「はい、何があってもお供します!」

「そうか! ならついて来てくれ。今から『勇者』のところへ向かうぞ!」

「はい! ……はい?」


 グレイの申し出に勢いで了解するアリス。しかし、勇者と言われたのに気がづくと、アリスは冷や汗が止まらなくなる。


 何でも来いとは言ったけど、勇者って、聖騎士団長よりヤバそうじゃないのーーー!


 四天王就任後初めての魔王様との共同作業は『勇者に会いに行く』ことになったのだった。

はじめましてゴシといいます。

読んでいただきありがとうございます!

この話を読んで面白そうって少しでも思ってくださる方がいてくれると嬉しいです。

まだまだ話は続いて行きます。これからも更新して行きますのでブックマークの方もよろしくお願いします!


下の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!

応援されてると思うとやる気めちゃ出てスラスラ書いちゃいます。

これからも愛読と応援のほどよろしくお願いします。

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