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特典4「称号『シスコン』が『超シスコン』に変化しました」


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王都へ向けて出発してから5日が経過した。

今日中には最寄りの街に到着できそうだ。

食料の補充もしておきたかったしちょうどいい。

とはいえ子どもだけで街に入るには、やはり冒険者のライセンスカードがないとなかなかに苦労する。

その苦労は家の近くの街でも経験済みだ。

なので行商人の連れ沿いとして同行させてもらうのが一番楽なのだが、そんなうまくいくかなあ。


 ピコンッー 『気配察知』


ん、こんな街道で魔物の気配だな。

行商人を襲う野良モンスターが一番可能性が高いだろう。

距離は・・・1キロくらい先か。


「お兄ちゃん、1キロくらい先で魔物がいっぱい集まってるよ!」


『探知』魔法を覚えたサクヤも敵を見つけたようだ。

よくやったと頭を撫でて褒めてやると、それはもう嬉しそうな顔をする。

こんな嬉しそうな顔をしてくれるのだから、とことん褒めて伸ばしてあげないとな。


「「『速度強化』」」


2人とも自身のスピードをあげ、一気に近づく。

サクヤも『魔法創造』のスキルを持っているだけはある。

共に行動する今、同じことができるほうがいいということでなるべく俺と同じスキルを創造してもらったのだ。

とはいえ俺は『魔法神の寵愛』のおかげで速度上昇率がおかしいことになっている。

そこは可愛い妹に合わせるように同じ速度で移動すればいいだけの話しだ。


「お兄ちゃん、大変!助けないと!!」


到着すると案の定、行商人を襲うウルフの群れ。

雇われ冒険者っぽい2人が応戦しているが、数の多さに苦戦しているようだ。


「あのー、冒険者さん。助太刀しましょうか?」


「はあっ?!ガキは危ねえから離れてろ!!」


駆けつける前も思ってはいたが、中身はともかくこの世界では俺はまだ13歳なのだ。

それはそう言われるよ。

とはいえこれは好都合。

助ける代わりに街の中まで連れてってもらうほうが楽だろう。


「サクヤ、危なくなったら助けてあげるからやってみるか?」


「うん!アタシも実践経験つみたいと思ってたところだからやる!」


腰から小さな杖を取り出し、颯爽と怯える行商人の前に立つサクヤ。

俺は後ろから見守りつつ危なくなったときだけ手を出させてもらうとしよう。


「『風の銃弾(ウィンド・バレット)・・・15連!!』」


「無詠唱・・・だとッ・・・!?」


まあ『詠唱破棄』持ってるからなあ。

それよりも驚くべきはその数。

小っ恥ずかしい詠唱をして1発出すのが普通の魔法使いだろう。

それをいきなり初陣で15。

さすが『大魔導師』なだけはある。


サクヤが放った15発の銃弾がウルフの群れを瞬殺。

しかし1匹だけ角が生えた個体だけはあらぬ方向に前足を伸ばし、力尽きていた。

あれがこの群れのボスといったところだろう。

いやそんなことよりも。

初陣を終えたサクヤに駆け寄り、両手で身体を持ち上げる。


「凄いじゃないかサクヤ!さすが俺の自慢の妹!」


嬉しさのあまりサクヤを持ち上げてその場でくるくると回ってしまった。

恥ずかしがりながらも、とても嬉しそうな顔をする妹にさらにキュンとしてしまった。


「すっげえな、嬢ちゃん!」

「ああ、見てくれは悪いが実力は本物だ。」


「おい今なんつった?跡形もなく消すぞ。」

「やめてお兄ちゃん!自分がブサイクなのは分かってるから!!」


思わず相手の首に向けて杖を突きつけてしまった。

こんなにもかわいい妹への暴言、許せん。

が、サクヤが許すのであれば仕方なし。

命拾いしたな。


「助けていただき、ありがとうございます。

おかげで大事な荷物を失わずに済みました。

何かお礼をさせていただきたいのですが・・・。」


長い袖に手を突っ込みながらお辞儀する長いあごヒゲを生やした行商人。

話が早くて助かるわ。


「それじゃあ、最寄りの街に入る手助けをお願いしたいです。

見てのとおりアタシたちだけでは街に入るのも一苦労なので。」


サクヤが交渉すると、行商人はにっこりとした笑顔で頷いた。

冒険者たちがウルフの素材をとっている間、先程の疑問を解消しておくとしよう。



群れのボスらしき個体が最期に気にしていた方向に歩いてゆくと。

住処らしき場所があった。

その中で藁が敷き詰められた区画から小さな鳴き声がする。

近づいてみると、生まれたばかりで立つこともままならない小さなウルフが居た。


なるほど。

この子を守るために自分たちの縄張りに近づいてきた人間を排除しようとしたわけだ。

なんか悪いことをした気分になるな。


「お兄ちゃん、こんなところに居た。

そろそろ出発の準備が・・・えっ、かわいいいいいい!!!!」


お前のほうがかわいいぞ、妹よ。

サクヤはすべてを察したような顔で少し悩み始めた。


「アタシが仲間を倒しちゃったんだよね。

この子、このままだと野垂れ死んじゃうよね・・・?」


まあそうなるだろうな。

とはいえ街中にモンスターなど連れていけるはずもない。

が、契約あたりならできるのではないだろうか。


「『魔法創造』ー契約。」


 ピコンッー 契約 スキルを獲得しました。


「お、やっぱりか。

サクヤ、これなら連れていけると思うぞ。」


途端に嬉しそうな顔をしながら飛び込んでくる妹。


「ありがとう、お兄ちゃん!大好き!!」


!?


・・・あれ、レビス様。

相変わらずお美しい。

頬を赤らめ視線を逸らして恥ずかしながら手を振る姿に胸を打たれた。

そんな俺を見て、フッと優しく笑い離れていくレビス様。


待ってください!

弟子として俺はあなたと一緒にー

一緒にー

にー


・・・・・・・・・・・・ハッ!!

あやうく昇天しかけた。

なんと恐るべきパワーワード。


そんな俺の様子も露知らず、サクヤは無事に赤ちゃんウルフとの契約を済ませたようだ。

これで呼び出さない限りは見えることはない。

こうして計らずも旅の仲間が増えたのだった。



-----


「んー!久しぶりの街だねぇ!」


行商人御一行にお礼と別れを告げ、伸びをしながら気分良さそうに先行する妹。

あれだけの魔法を放ち、直後に『契約』魔法まで使用したというのに元気いっぱいだ。

やはりこの子のMPもなかなかに人並みを外れているのだろう。

まあ、その40倍近くの魔力を有している俺が抱く感想ではないか。


ひとまず兄妹仲良く食料含めた必要品の買い足しだ。

見てくれは子どもなので家のおつかいの手伝いと勘違いをされたことを良いことに、だいぶ安く調達できたのはありがたい。

そのすべてで素晴らしい小芝居をうったうちの妹には小悪魔の素質があるのかもしれない。

お兄ちゃん、妹の将来が心配だ。


小悪魔調べによると、ここはリーベという街なのだそうだ。

日本で言うと京都付近といったところだろう。

王都まではまだまだ遠い道のりだが、正直苦になりそうなのはアールス山脈だけだな。

だがそれを超えないことには王都にはたどり着けない。


ぶっちゃけ『飛行』魔法を創造して飛んでいけば楽そうなものだが、かわいい妹との旅なんて今後どれくらいできるか分からないからな。

サクヤからもそれを言わないのは同じことを思っているのだろう。

なんだかんだで頭のいい子だ。

気づいていても今を楽しむことを優先していると思う。



そんな頭の良さが、まさか自分に向くとは思わなかったけどな。


「ねえお兄ちゃん、アタシに何か隠し事してない・・・?」


買い出しを終えて宿屋で落ち着いたとき、上目遣いでこんなことを言われた。

ステータス以外では何も隠していることはないと思うが。


「なんかね、うまく言えるかは分からないんだけど・・・。

たまーに本当に1歳しか違わないのかなって思ったり・・・うーん。

そもそもアタシと一緒であんまり家の外に出なかったのに知識量がすごいなあと思ったり。

気づくことが大人の人みたいだなって・・・。

あとはたぶんステータスも。

いつも見てる地属性魔法だけど、お兄ちゃんの加護はレベル2なのにそんな次元じゃないなって。」


やべえ。

もちろん自分もそうだけど、かわいい妹を快適に過ごさせるために力を制御せず使用していた。

それがこんな形でバレるとは思わなかった。

というか1度しかステータス見せてないのに随分記憶力が良いな。


「はあ・・・分かった。

サクヤにはすべてを話すよ。

その代わり、絶対に他の人に漏らすなよ?」


「・・・うん、分かった。」


「『ステータス隠蔽』解除。ステータス・オープン。」


俺のステータスを見て、目を見開いて固まってしまった。

それもそうだ。

軒並み人として持っていてはいけないステータスなのだから。


「・・・・・・い。」


「ん?」


「お兄ちゃん、凄い。なんかもう色々と。

こんなことになってたら隠したくもなるね。

というか隠さないとダメだね。」


無言で頷く。

サクヤはずっと俺のステータスを見ながら目を輝かせている。

いろんなスキルの情報を見ては驚きの声をあげていた。


「それで、俺はこの世界のタクミ・イスタルとして生まれ変わったってわけだ。」


転生のことも話しておくか迷った挙げ句、すべてを話すことにした。

受け入れてくれるかどうかは分からないが、ステータスを見せた以上話しておかなければなるまい。

すべてを話し終えたあと、サクヤは両手を頭に当てながら煙をあげていた。


「情報が盛り沢山すぎてわけわからなくなってきたよぉ・・・。

でも・・・うん。」


頭から自身の前に腕をもってきたと思えば、何かを決意したような。

まるで誰かを頑張れと応援するかのような動き。


「なんか、色々すごかったけど・・・。

お兄ちゃんがお兄ちゃんであることに変わりはないし!

それに、かっこよくて優しい大好きなお兄ちゃんが世界最強ってむしろ・・・なんか嬉しいっ!」


笑顔で抱きつかれた。


はあ・・・。


ティティー様。


人生ハードモードなんて言ってしまったし。

最強スキルを授けてくれたことも本当に感謝すべきことなんだけど。


こんなにも可愛くて、俺のことも理解してくれる最高の妹が居る家族に転生させてくれて。


心から、ありがとうございます。



「あと・・・。」


もの凄い真面目な顔で俺に向き直りサムズアップをしてくるサクヤ。

今度はなんだ。


「『シスコン』の称号が、実は1番めちゃくちゃ嬉しい。」


「それは見なかったことにしてくれる・・・?」


「ダーメ。もう覚えちゃったもーん。」


そう言いながら笑い抱きついてくる妹を、全力で守ってやろう。

俺のステータスのすべてを使ってでもだ。


そう決意した夜だった。



 ピコンッー 称号『シスコン』 が 『超シスコン』 に変化しました。


 ピコンッー 称号『ブラコン』 が 『禁断の兄弟愛』 に変化しました。



ブックマーク登録ありがとうございます!

やっぱり嬉しいものですねえ。

嬉しくて楽しくなって執筆活動も本当に捗ります。


読んでくださった方々が少しでも僕と同じく楽しんでいただけますように。

少しでも楽しんでいただけたらブックマーク登録や★評価などしていただけたら嬉しいです!

今後ともよろしくお願い致します。

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