特典EX2「食べる?」
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挨拶からしばらくの時が経ち。
俺達は無事に結婚式をあげることができた。
指輪はいくつかの防御魔法を付与した特製品。
もはや国宝クラスの代物となっていることだろう。
リンリンにも内緒だけどな。
国王様まで出席するものだから余計に緊張してしまったが、まあこれも良い思い出だろう。
そこで久しぶりに会ったリズの魔力の振り撒き具合に驚かされたものの、理由を聞いて色々納得できた。
たしかに俺やサクヤが居なかったら化け物扱いされるほどの代物だ。
加えて立場上、以前のように誘拐事件に巻き込まれたり、国同士の諍いの原因にもなりかねない。
木を隠すなら森の中ってな。
俺とサクヤという、より強力な化け物の存在により少しは隠れ蓑となれるだろう。
そして俺もようやく身体が万全に戻り、学院に復帰することになった。
当日、リンリンと共に学び舎へと向かう。
ここに来るのも久しぶりだ。
皆と出会い、楽しい時間を過ごしたのがだいぶ前に感じる。
たった1ヶ月ほど前なのにな。
「おかえりなさい、タクミ。」
「ただいま、リズ!」
笑顔で迎えてくれたリズに挨拶を返した直後、窓際に居たグレイとも目が合う。
こちらも挨拶をしようとしたところ、とんでもなく嫌そうな顔をされた。
「まるで『またシスコンに振り回される日々が戻ってきてしまったのか・・・』とでも言いたそうな顔だなグレイ。」
「ああ、一言一句合っている。
分かっているのなら身を固めたことだし、そろそろシスコンも卒業したらどうだ?」
「はあ?それは自由の侵害ですー!
そして死よりも酷い拷問を勧める王太子殿下もどうかと思いますー!」
「死よりは酷くねえわ。拷問でもねえわ。」
「ふふっ、こう言ってはいても殿下もタクミ達が居なくてずっと退屈そうにしていたんですよ。」
「グレイ・・・素直じゃない。」
「おぅっふ・・・この場に味方が誰も居ないとは思ってなかったよ。」
約1名胃に穴があきそうな顔をしているやつも居るが、そんな話で皆で笑いあい。
学院生活が戻ってきたのだった。
さて、その週の『魔力による魔法陣生成』の授業。
以前も150人ほどと参加人数はなかなかに多かった。
おかげで講師としてのお給料をいただけるようになったわけだが。
事件の真相を聞きつけて生徒数が急増し、『魔法考察』の授業と同程度の人数が集まってしまった。
ざっと300人程度だ。
『魔法考察』が同人数で成り立っているのは、イグリード先生が意見を聞く立場に居るからであって。
俺のように1人1人にアドバイスをしながら立ち回るのは不可能に近い。
ひとまず授業終わりに学院に申請をして外部からの助手を雇うこと。
そして生徒からも週に1度ずつ助手をお願いする可能性があると伝えて承諾を得た。
その日の昼休み。
いつものメンバーで集まってすぐにその話を始めた。
「ということで、本当に申し訳ないのだけど手伝いを頼めないかな?」
「わたくしでよければ、喜んで!」
「タクミの力に・・・なれるなら、もちろん。」
「将来に繋がるから、僕も構わないぞ。」
「皆まじで助かる!ありがとう!!」
こうして内部からの助けは得ることができた。
グレイとリンリンに関しては既にクリアしている課題だ。
教えることもできるだろう。
リズも理論はきちんと理解してくれているし、メモを必死にとっていたからな。
それを皆に見せて教えることができれば俺の負担も少なからず減る。
週3回の助手に関してはサクヤにお願いすれば断られることはない。
これでようやく同じ人数でも授業が継続できる形ができた。
落ち着いて愛妹弁当を食べるとしよう。
蓋を開けるといつものようにリズとリンリンが覗いてきた。
「鮭のムニエル・・・ぶり大根・・・鯛めし。」
「今日は魚だらけですね。」
『リンクさんと一緒に食べてね!』と可愛らしい文字のメモが同封されていた。
どうやら2人分らしい。
「鍋ごと渡された時は何事かと思ったが、2人分なら納得だ。」
「弁当なのに鍋を渡された時点で疑問に思わないんだな。」
「はあ?妹に疑問を持つなんてシスコンとしてありえませんー!
しかもこう見えて前より栄養バランスはめちゃくちゃ良いんですー!」
「まあ確かに以前の牛まみれや豚だらけよりはマシだろうが・・・。
リンク、嫁ぐ先を考え直すならまだ間に合うと思うぞ。」
「どんなタクミも・・・大好き・・・だから、このままでいい。」
その幸せそうな顔を見たグレイは何も言い返すことができず、頬をかいたのち無言で弁当を食べすすめるのだった。
そんな様子を見つつもリンリンの分を取り分け、食べ始めようとしたところで思い出した。
まだ言ってないじゃないか。
「グレイ、ただいま。」
グレイは俺の急な声かけに驚きつつも、最終的にはフッと笑いながら。
「ああ、おかえり。」
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放課後はリンリンとゆっくり歩きながら街を散策。
今夜サクヤに料理を教わる約束をしているらしい。
あまり料理の経験はないようだ。
だからこそ身近で俺の味覚を把握しているサクヤに頼んだのだろう。
「頑張るタクミに・・・いつかお弁当、作ってあげたいから。」
とのこと。
健気で可愛いリンリンを撫でくり回すのも日課になってきた。
ひとまず今夜使うための食材と、日用品を少し買い足して帰宅。
「おかえりなさい、お兄ちゃん!リンクさん!」
やっぱりこうして笑顔で出迎えてくれる人が居るというのは嬉しいものだ。
普段の夕飯は俺も手伝っているものの、今日はリンリンがその役目を担う。
なのでかなり手持ち無沙汰になってしまった。
リビングに腰掛けて2人の様子を見ているのだが。
なんだこの微笑ましい光景。
年下であるはずのサクヤが丁寧に教えていて。
教わるリンリンもたくさん頷き、一生懸命に覚えようとしている。
俺のためにこうして頑張ってくれているのは嬉しいものだ。
「お兄ちゃんは少しだけ薄めの味が好きだから、あんまり味をつけすぎないほうがいいかも!」
「ありがとう・・・覚えた。」
「あれ、リンクさん、指!血が出てるよ!?」
「包丁で・・・切った、かも。」
「『回復』。
指輪は外しちゃってたのか。」
「ありがとう、タクミ・・・うまくできなくて・・・ごめんね。
指輪は・・・汚したら、嫌だから。」
「俺のために頑張ってくれてるのは嬉しいぞ。
だから謝らなくて良いんだよ。」
言いながら頭を撫でると、嬉しそうに頬を赤く染めて喜んでいた。
指輪をつけていれば刃傷無効の効果で怪我をすることはなかったけれど。
まあ大事なくて良かった。
その後もサクヤ指示の元、着々と進めていき完成。
リンリンが料理を運んできてくれた。
「タクミ・・・おまたせ。」
「今日はハンバーグだよー!」
「おお・・・これがリンリンの体液の結晶・・・!」
「お兄ちゃん、血と汗って言いたいのは分かったんだけど。
努力をそこまでキモく言える人、他に居ないと思うよ。」
「・・・食べる・・・?」
「リンクさん!?ハンバーグの話だよね!?」
「もちろん、喜んでいただきます!」
「グレイさん助けてー!!アタシじゃ色々追いつかないよー!!」
目をぐるぐるさせて両手で頭を抱える可愛い妹の悩みは、これからも尽きなそうだ。
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