表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/9

隠し事っていうのは早々にバレるものらしい

どうぞお楽しみください!!

「ごめん。今なんて?」


「いやアユムのランク見るぞって言った。」


どうやら聞き間違いではなく、今からガチでランクを見るらしい。え何?あれ最後の晩餐だったの?俺の能力ランクはE-。この値がバレた瞬間人生が終了する。

冷や汗ダラダラで打開策を考えていたところ、レグルスが口を開く。


「なぁアユム。ちょっと異能開示(オープン)って言ってみてくれないか?」


どこかで聞いたような........あ!エリシアに教わったやつだ。能力の詳細を表示するやつだったはず。てかこれどちらにせよ終わりじゃないか?

異能開示(オープン)したらバレて終わるし、しなくても測定する術はあるんだからそれされて終わるし。綺麗な八方塞がり。もう諦めるか。逃れられない運命なんだ。


異能開示(オープン)。」


俺は目をつぶって自分の最後の時間を嚙み締めていたのだが、何も反応がない。思わず目を開けて確認すると《《何もなかった》》。そこに表示されるはずのあのウィンドウみたいな何かが出ていなかったのだ。


「やっぱりか。お前、空窓(ウィンドウ)持ってねぇだろ?」


ウィンドウ?ゲームのステータスウィンドウか?だとしたら持ってるか?って質問は不自然だよな。俺が首をかしげていると、レグルスが説明してくれる。しかしその目はまるで敵を見るように鋭い。


「その様子だとその事も忘れてるっぽいな。これだよ。」


そういうと、レグルスは人差し指につけているものを俺に見せる。これがウィンドウ?デザインはシンプルな指輪のようだった。色は銀色で、台座に青い宝石っぽいのが乗っている。普通に装飾品としても受けそうなデザインだ。


「何だそれ?装飾品とかに見えるが。」


「違う。これはそういう用途の物じゃねぇ。」


俺がそれを装飾品か?と聞いた途端、雰囲気が変わる。その俺の質問に返答する声はさっきとはまるで違い、聞いたことないほど低かった。怒りというより警戒に近い声色だ。


空窓(ウィンドウ)は簡単に言うとランクとか異能(スキル)諸々を文面として表示する道具だ。お前はつけてないどころか存在すら知らなかった。記憶喪失で知らないにしてもつけてないのはおかしい。」


レグルスのその問い詰めに俺は反論すらできない。だって実際俺はつけていなかったし、知らなかったから。記憶喪失でもなんでもなくちょっと前に初めてこの世界に来たから知らないだけなんだがな。


「この道具は......全国民に装着が義務付けられている。多くの国民は5歳までの幼少期に装着される。もし10歳を過ぎてつけてなかったらその時点でこの国の国民とは認められない。老若男女関係なく即座に牢屋行きだ。最悪処刑もありえる。そんな法律が敷かれている中つけないヤツなんかいないんだよ。だからアユムはおそらくこの国の人間じゃない。」


ここ厳しくない!?何かやらかしたら処刑じゃねぇかよ。

違うと弁明したいが、ここに来た経緯が説明できない。

諦めて俺はこう返答する。


「それに関したら俺は何も言えないな。俺自身よく分かってないし。」


「それ自体はマジなんだろうな。聞いてきたのもこの国の内政とかそんなんじゃなく誰でも知っているような情報ばかりだったしな。潜入ならもっと別のこと聞いてくるはずだ。....だからこうやって空窓(ウィンドウ)の事を話したんだよ。これはこの国だけのシステムだからな。」


いつの間にか口調も雰囲気もいつものレグルスに戻っている。演技....というわけではなさそうだったが。俺は戸惑いながら言葉を口にする。


「え?それってつまり......」


「おう!俺はダチとしてお前の事を信用するってこった!」


「じゃああのくだり何だったんだよ!?こっちはめっちゃ怖かったんだぞ!!」


「悪い悪い。でも最終確認だよ。念には念をって言うだろ?」


「命の危機だったわこちとら!!ガチでそのまましょっ引かれて処刑されるかと....!!」


「それはあり得ねぇわ。ダチを売りたくねぇしな!そもそも記憶喪失が嘘の可能性は最初から俺の頭の中に無かったしな。

実はな、お前が襲われてたあの熊。デカイだけで強くも何ともないんだよ。

敵国への潜入ならある程度戦闘力がないと話にならねぇはずだ。ましてやあんな弱い熊から逃げ回るようなヤツを派遣するとは到底思えなくてな。」


うーん。実際記憶喪失は嘘なんだよな。それで得た信頼ってのはちょっと後ろめたいものがある。それに何だろう、悲しい気分だ。遠回しに弱いって言われたぞダチに。泣いていいやつか?コレ。


「ランクが分からんってことは異能(スキル)も覚えてないんだろ?それについても簡潔に説明していくぞ。

この世界の人間は生まれたときに何かしらの特殊能力を得る。それが異能(スキル)だ。鑑定する道具によって出た値がそのまま区分になる。だがこの国にEランクはほぼ存在しない。さっきも言ったように処刑対象だからな。」


俺はその話に口を出すことなく無言で聞く。ランクは測定道具に出た値で決まるって言ってたがどこにあるんだそんなもん。もしそれが衆目のある場所ならマジで逃げられないぞ。


「んじゃあ俺はこれから異能(スキル)を測定するんだよな?どっかに行くのか?」


「ここでやるからちょっとここで待ってろ。道具持ってくるからよ。」


そう言うとおもむろにレグルスは部屋を出ていった。持ってくる?測定道具をか?

一個人が持てるレベルで普及してるのか?とか考えていたら思ったより早くレグルスが戻ってきた。その手に掴まれていたのは白紙と黒い指輪だった。これが測定道具?マジで?


「これは識別紙(アセス)って言ってな。触れるだけで異能(スキル)を詳細に文字として表示するっていう代物だ。」


「便利だな。家で測定出来るくらい普及してんのもスゲェ。」


うーんでも触りたくないな。触ったら終わるし。

でも目の前にレグルスがいるし下手に動けばそれこそ危ない。観念して俺が紙に触れた瞬間、紙に黒く文字で能力の詳細が黒字で書き出される。もちろん俺があの庭園で見たのと全く変わらない内容で。

レグルスは、識別紙(アセス)の内容を見た瞬間に頭を抱える。そりゃそうなるよな。さっきまで談笑してたヤツが処刑対象だって知ったら俺もその反応をする。


「アユム......お前のランクE-じゃねぇか。」


「......みたいだな。」


俺はそう返すのがやっとだった。息がつまって声がうまく出ない。。

処刑。その二文字が俺に重くのしかかる。怖くないと言えば噓になる。

でも死を実感したからだろうか?。どこか冷めて、あぁこれで二回目の人生終わりなのかと他人事のように感じていた。

それでもやっぱり、否応なしに叩きつけられる処刑の事実が俺の身体を強張らせる。


「アユム。ランクを隠すぞ。」


「え?隠す......?」


俺は茫然とそう呟く。予想外の言葉に俺はそれしか言葉が出なかった。

レグルスがこっちを見る目は真剣そのもの。レグルスだって分かっているはずなのだ。それが、どういう行いなのかを。

それを承知の上で俺に味方してくれるという事実に胸の奥が熱くなるのを感じた。どうやらまだ生きる手段は残っているらしい。

俺は希望をもってレグルスの話に耳を傾けるのだった。

誤字脱字などあれば報告よろしくお願いします。

最後に、ここまでお読みいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ