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TS異世界転生姫プレイ  作者: farm太郎
第四章 悪夢の町

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第95話:シャーロットとこれからの

 少しだけ気まずい雰囲気が漂って、少しした後に俺たちは解散となった。 

 レイナードは事情は呑み込んだうえで、これは公言できないと仲間には秘密にすることを決めたようだ。ダンジョンの秘密、いわば最深部にたどり着いたご褒美を知ってしまったんだもんな。


 いいや、最深部にはたどり着けないのか。たどり着けないように、連盟が調整しているから。

 ダンジョンに入るには連盟の許可が必要。つまり、積みだ。

 本当に聞いてはいけない話を聞いてしまった気分になる。


「いやー、大変なことを聞いちゃいましたね」

「……ああ、そうだな」


 帰り道、いつも通りリヴェンに野良猫亭まで送っていってもらう。

 その道中、何となく雑談をしたくなって話しかけた。


「町に行くにあたって、案内人が必要だからってことで、トリシェルが話を通してくれるらしいですけれど。大丈夫ですかね?」

「……ああ、そうだな」


 ……この調子だ。


「リヴェンさん? 聞いてますかー?」

「……ああ、そうだな」

「駄目だこりゃ」


 帰り道に入って、何かをずっと考えているらしい。返事が適当というか、反射で行われている。返答に思考が介在していない。

 考え事をしているのなら、下手に触れない方がいいかもしれないけれども、ここは往来のど真ん中だ。この調子で放置するのは危ないだろう。

 しょうがないなぁ。


「ほらほら、リヴェンさん。まだ道の途中ですよ。考え事なら、帰ってからやりましょうね~」


 そっと手を触れて、揺するように背中を叩く。

 あっ、こっち見た。寝ぼけてるような眼が唐突に見開かれる。


「何をするっ!」

「えっ!?」


 何を考えていたのか。リヴェンはそのまま俺から距離を取る。

 道の真ん中で向き合う事になった。周囲の視線がこちらに集中する。

 少しの間見合うと、リヴェンも状況を理解したのか、気まずそうに視線を下げた。


「……すまない。熱中しすぎていた」

「い、いえ。いいんですけれど」


 今の顔、凄い怖かった。

 何を考えていたんだろう。聞いても、いい奴だろうか?


「何を考えていたんですか?」


 答えはすぐには返ってこない。

 そんなに考える必要がある。いいや、言いにくいことなのか。

 こんな往来で考えるだなんて、さっきの話に関係していることだろうか?


「もし、リヴェンが私の命を狙ってた話なら、もう気にしてませんよ。怖かったですけれど、その、信頼してますので」

「いや、それは……。そうか」


 ありゃ、違うのか。それを気にしてるもんだと思ったのに。


「言いづらいことですか?」

「……すまん」


 ふうん。そっか。


「じゃあ、言わなくてもいいですよ」

「いいのか?」

「ええ。でも、その代わりちゃんと歩いてくださいね。人とぶつかってもめ事なんて、私は嫌ですよ」


 こう言っておけば、流石に帰り道の間はマシになるだろう。

 一体何に悩んでるんだろうな。俺に共有できないことと言うと、それこそ俺がらみだろうか。

 改めて知らされたのは、俺という存在の異常さ。

 まさか人間ですらないとは思わなんだ。


 でも考えてみたら、それを知ったからといって何かが変わるかと言われると変わらない気がする。

 レイナードも言ってくれたじゃないか。俺は俺だって。

 そうだ。俺は俺だ。白の一族だとか、黒の一族だとか、姫だとかなんとか関係ない。

 これまで通りに生きていこう。


「なあ」

「はい、何でしょう」

「お前は――いや、なんでもない。すまない、忘れてくれ」

「はい」


 やっぱり、俺関係で悩んでいるらしい。

 んー、悩ましい。こういう時、無理やり聞き出すのも良くなさそうだし。

 話してくれるまで待つか。


「話しにくいなら、無理に話さなくてもいいですよ」

「だが」

「いいんですって。私は私。そうでしょう?」


 自分で口にしてみると、なんとも気分のいい言葉だ。

 鼻歌すら歌いたくなる。


 リヴェンはまだ何か言いたげにしているが、ご機嫌な調子の俺を見て、僅かにはにかんで首を横に振った。


「……すまないな」

「いいんですよ。なんだかんだ、一緒にやってきたじゃないですか」


 色々と苦難を一緒に乗り越えた仲だ。少しの隠し事ぐらい、寛容になるさ。

 ああ、懐かしいな。隠し事、か。あの時も、隠し事をしておけばよかったのかな。

 緋色の剣の時を思い出すだなんて。本当に、俺は今が楽しいんだろうな。この関係が好ましいんだな。


「まま、何事もトリシェルが話をつけてきてからです。時間はたっぷりあるんですから」

「そうか。そうだな。それまでには――俺も答えを出すさ」

「ええ、そうしてください」


 本当に出さなければならない話なのか、なんて無粋なことは言わない。

 俺よりも頭がいいこいつがそう思うならそうなんだろうさ。

 程よく肯定して、いつか結論を聞かせてもらおう。それでいい。


「そういえば、白の町に行くことにはなりましたが、リヴェンはいいんですか?」

「何がだ?」

「ほら、黒の一族は白の一族と敵対してるだとか……」


 ああ、と短く相槌を打たれる。


「それに関しては、俺に考えがある。ひとまず、お前が思っているようなことにはならないさ」

「ふうん。なら、いいんですけれど」


 色々と交渉しに行くのに、物騒なことになったら困るからな。

 考えがあるならいいや。


「結局行くことになっちゃいましたねぇ。セイラムには悪いことしたかもしれません」

「――今からでも逃げるか?」


 ふと、聞かれた。

 リヴェンの方を見ると、少しだけ真剣なおもむきをしている。

 だから、鼻で笑ってやった。


「冗談。逃げて何になるんですか」

「……だな」


 珍しい冗談だったな。

 何かを不安に思っている? だとしたら、何を。

 わからない。教えてもくれないだろう。


 何となく、嫌な予感がする。

 白の町に行く前に、俺たちの間で何かが起こりそうな。そんな予感が。


 そして、その予感は的中する。

 過去に置いてきたはずの事件が、再度俺に牙を剥くことによって。

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